その言葉づかい間違っていない?ビジネスシーンで間違いやすい敬語
※2015年04月06日に公開された記事を再編集したものです。
服装、身だしなみと並んで、あなたの印象を左右する「言葉づかい」。その中でも厄介なのが、敬語表現でしょう。ビジネスシーンにおいて、敬語が正しく使えないとそれだけでお客様や上司に不快な思いをさせたり、信用を失うこともあります。特に困るのが、人に違和感を与えながらも、自分では正しい敬語だと思い込んで使っていること。間違えやすい敬語を例に、初心にかえって見直してみましょう。
間違った敬語に注意!年配の人ほど違和感を持つ可能性も
帰り際などに「お疲れさまでした」と上司にひと声かけて退社する人も多いと思います。文化審議会の「敬語の指針」(2007年)でも、お疲れさまは労いの言葉ではあるが「『お疲れさまでございました』などのていねいな言い方であれば,だれに対しても使える表現である」と見解を示しています。
ところが、NHK放送文化研究所、専任研究員塩田雄大氏が2012年に行ったアンケート調査によると、年配の人ほどお疲れさまという挨拶について、違和感を持っているのだそうです。50歳以上では、その日最初に会った際の会話の冒頭で使うのは「おかしい」と感じている人が7割以上、メールの冒頭に使うのは「おかしい」と感じている人が8割以上にも達しています。目上の人、上司、お客様に対し正しい敬語表現を使うことは大切ですが、一方で、年代の差からくる「言葉づかい」の感覚のズレにも配慮する必要がありそうです。
シーン別! 間違いやすい敬語とは?
それでは実際に、ビジネスシーンにおいて間違いやすい敬語を見ていきます。意外にも、つい使ってしまいがちな表現が多く、口癖になっている場合も。使い方が間違っている敬語表現があった場合は、何度か声に出して使ってみるのも有効ですよ。
シーン1:「定型の挨拶」で間違いやすい敬語
×ご苦労さまです
「ご苦労さま」は、目上の人物から目下の人物に対してかける、労いの言葉の一つ。一方で「お疲れさま」も年配の方には、目下の人が使うことに違和感を持つ人もいるので、「お先に失礼します」など、他の言い方をしましょう。
×いつもお世話さまです
「お世話さまです」は、「ご苦労さまです」とほぼ同じような使い方であり、決して敬意を表す言い方とは言えません。「いつもお世話になっております」が、正しい敬語表現です。
×しばらくぶりです
かなりくだけた関係の人に使う言葉で、目上の方に使うのは失礼です。目上の方には「ご無沙汰しております」を使いましょう。
×つまらないものですが
以前は、「たいへんお世話になっているあなたに、この程度のもので感謝の気持ちは伝えきれない」という意味で使われていましたが、近年では失礼な印象を与えかねない言葉として捉えられています。「ほんの気持ちではありますが」など言い換える方が無難です。
×ご一緒します
ご一緒は、対等な関係で使われる言葉。目上の人から「一緒にいくか?」と誘われた場合は、「お供させていただきます」が正しい返答です。
シーン2:「納得・理解を伝える時」に間違いやすい敬語
×了解しました
メールなどではよく使われる表現ですが、これはフランクな言い方で、敬意を示しているとは言えません。一般的には「承知いたしました」が正しい表現。
×たいへん参考になりました
問題は、「参考にする」という言い方です。「参考にする」には、他人の意見や資料などを自分の考えや意見をまとめる際の足しにする、という意味合いがあります。ですから、「たいへん参考になりました」は丁寧な言い方ではありますが、意味的には”上から目線”になってしまうのです。「たいへん勉強になりました」が、望ましい言い回しです。
×なるほどです
なるほどは、相手に同意・納得する意味合いで、対等の立場や目下の人に使う言葉。目上の方に使うと見下したような失礼なニュアンスを含んでしまいます。「おっしゃる通りです」と言い換えることで知的な印象を与えます。
×査収しました
査収は、書類や金品を調べて受け取ること。自分に対してではなく、相手に書類やメールの添付ファイルなどを確認してもらいたい時に使います。そのため、自分が書類などを受け取った場合は、「確認いたしました」が、正しい使い方です。
シーン3:「お礼、もしくは謝罪の時」に間違いやすい敬語
×すみませんでした
謝罪の気持ちを表す言葉ですが、ビジネスシーンには若干くだけた印象を与えます。この場合は、「申し訳ございません」か、さらに丁寧に「恐れ入ります」を使います。
×とんでもございません
とんでもないは「意外である」という意味を表します。そのため、「ない」の部分を「ございません」と置き換えることはできません。正しい表現は、「とんでもないことです」。
シーン4:「相手にお願いしたい時」に間違いやすい敬語
×〇〇してください
ご確認してください、ご利用してくださいなどを丁寧な言い方として使う人もいますが、この表現は間違い。正しくは、「ご確認ください」、「ご利用ください」です。癖になっている場合も多いので、「して」を抜くように意識しましょう。
×お名前をちょうだいできますか
「ちょうだいする」は「もらう」「受け取る」の謙譲語です。ところが、名前はもらうものではないため間違い。「お名前をお聞かせいただけますか?」「お名前をうかがってもよろしいですか?」が正しい言い方です。
×どういたしますか
「いたす」は「する」の謙譲語なので、お客様や目上の方には使いません。正しくは尊敬語「なさる」を使った「どうなさいますか」「いかがなさいますか」です。
×ご持参ください
「持参」は「持って参る」という謙譲語で、自分がへりくだって言う時に使います。相手に持って来るように頼む時は、尊敬語を使い「お持ちください」「お持ちいただけますか」が適切です。
2017
シーン5:「丁寧に伝えたい時」に間違いやすい敬語
×~させていただいております
この表現はよく使われますが、場合によってはおかしな表現になるため、特に注意が必要です。例えば、もし自分が「値上げさせていただいております」という言い方をされたら、思わずムッとしないでしょうか。「~させていただく」とは、本来、「相手の許可が必要な時」や「相手にいい影響を及ぼす場合」に使う、自分を一段下げる謙遜の表現です。謙遜するのが適切ではない場面においては、「~しております」でよいのです。
×とんでもございません
この言い回しはかなり定着していますが、厳密に言えば、これも誤った敬語表現です。実は、「とんでもない」で一つの単語であり、単語の一部分だけを敬語表現にするのは間違いです。正しくは、「いいえ、とんでもないことです」となります(ただし、「とんでもございません」は、慣用的な表現として容認してもよいとする国語学者もいます。)
×拝見いたしました、させていただきます
「拝見」は「見る」の謙譲語。「いたす」「いただく」も謙譲語なので、二重敬語になってしまいます。この場合は「拝見します」「拝見しました」でよいでしょう。
×~になります
「~になります」というのは、基本的に、物が変化していく様子を表す言い方で、敬語ではありません。「~に成る」という場合以外は、使わない方がいいでしょう。
×◯◯は本日お休みをいただいております
ついつい使ってしまいがちな表現ですが、休みは会社からもらうものなので、「お休みをいただく」だと自分の会社に対して敬意を払うことになってしまいます。お客様に向けて言う場合は「〇〇は本日休みを取っております」「休暇を取っております」の方が適切です。
目上の方やお客様に使う敬語は、いつもの言葉づかいがとっさに出てしまうこともあります。わからない敬語や、間違っているかもしれない敬語がある場合は、しっかりと調べて知識を増やすとともに、シーンを想定しながら練習して慣れていきましょう。