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2019年の住まいトレンド「デュアラー」とは?SUUMO編集長に聞いた二拠点生活のススメ

総務省は1月下旬、2018年における東京圏の転入者が転出者を約14万人上回る「転入超過」になったと発表。都心の一極集中拡大の実態が報告されました。しかし、この都心回帰の影で、田舎と都心の二拠点生活を始める新しい動きもあるとか。

リクルート住まいカンパニーは昨年末、「2019年トレンド予測 住まい領域」において、聞きなれない「デュアラー」というキーワードを発表。「デュアラー」とはいったい何なのか、言葉を通してみえる新たな兆しをひも解きます。

東京一極集中に不満!?都心と田舎、両方とも楽しみたいのが本音

「デュアラー」とは英語のデュアル(二重)を崩した和製英語で、「都心と田舎の2つの生活を楽しむ人」を意味する造語。リクルート住まいカンパニーの実態調査によれば、すでにデュアルライフを実施している人は、調査全体の1.3%にとどまったものの、「二拠点目を探している」「今後、二拠点生活をしたいと考えている」「興味がある」など、前向きな姿勢を示した人の割合は14%、推計で1100万人に。年代は20~30代で5割を超え、世帯収入は800万円未満が約半数と報告されています。

なぜ、都心と田舎のデュアルライフを求める人が増加しているのか。背景には現状の暮らしに不満を持つ、都心生活者の本音があるようです。全国の不動産ポータルサイトSUUMOの池本洋一編集長にお話をうかがいました。

低コストで二拠点目を持てる、またとないチャンス到来中!

――二拠点生活を送る「デュアラー」が今年は増えると予測されていますが、どんな現状が背景にあるのでしょうか。

一昔前は、郊外に庭付き一戸建てを持つ暮らしが理想のライフスタイルとされていましたが、今は共働き夫婦が当たり前になり、都心の駅チカに住む世帯が増えました。それで満足できる人もいますが、中には都心一極集中の生活にストレスを感じている人も。子どもたちにもっと自然に触れてほしいなと願う親心もありますね。

――二拠点生活を送るとコストがかかりますよね。それでもデュアラーが増えているのはなぜですか。

実は都心の物件は高騰する一方、郊外にある物件は価格が下がるという「二極化」が起きています。空き家については社会問題にもなっていますよね。つまり、保有コストが安く、かつ田舎で自分らしい生活を求めている消費者側の論理と、安くてもいいから空き家を誰かに使ってもらいたい田舎側の論理がマッチングしている状態が今。二拠点目を持つまたとないチャンスが到来しているんです。

車の渋滞ストレスからの解放!月2.5万円で千葉・房総に一軒家

――実際に、どのくらいの値段で手に入るのでしょう。

実際の例でいうと、月約2.5万円で千葉の房総に1500坪の物件を借りている人がいます。彼は30代でIT系企業の営業マン。毎週金曜から日曜の朝まで千葉で過ごし、平日は東京で仕事。7歳と5歳の子どもたちも月1回のペースで千葉に通い、自然の中で過ごしています。他にも、一軒を複数の世帯でシェアしているケースも。

安く購入できなくても、去年の6月施行された民泊新法も二拠点生活を後押ししてくれると思います。ある一定の条件をクリアすれば、簡易宿泊所の免許を取ることが可能になりました。使っていない時に人に家を貸せば、副収入を得ることも可能です。

――自然を求めて田舎に旅行に行くのと、二拠点目を保有するのは何が違うのでしょうか。

「デュアルライフ」は、田舎に旅をするのとはちょっと違います。まず、自分の家なのでいちいちパッキングする必要がない。「今週末の天気は千葉の方がいいな」と思えば、手ぶらでも出発することができるし、何よりも渋滞のストレスから解放される点は大きいですね。

宿泊の場合はチェックイン/アウトの時間にあわせて移動しますが、二拠点生活の場合は渋滞を回避する金曜の夜に出発することができます。帰りは、他の人が動き出す時間帯よりも前に帰路につけば移動もスムーズですよ。

デュアルライフに興味を持ったら、まずお気に入りの場所を探す

――「デュアルライフ」は特に子育て世帯によさそうですね。

小学や中学受験で塾通いしている子どもは都心には多いですが、自分の子ども時代と比べると自然に触れる時間が圧倒的に少ない。「子育てはこれでいいのだろうか」と悩んでいる親は少なくないと思います。

田舎で時間を過ごすと、都会の自分とは違う自分を発見することがあります。それは子どもも同じ。二拠点目の暮らしで新しいコミュニティを持てば、東京の人づき合いとは違う関係が生まれ、それが自分の人間性を広げてくれるきっかけにもなる。

どこでどんな暮らしをしたいのか。「住まい」は仕事と同じくらい時間を過ごす場所です。どんな街でどんな付き合いができるのか。本当に暮らしたい場所を探すという行為は、実は人生の豊かさを追求するには必要なことだと思います。

――デュアルライフに興味を持った人は、何から始めればいいでしょうか。

まず、自分の好きな場所を探すことをおすすめします。好きな場所がなければ、いろいろな場所に出掛けてみる。二拠点生活を続けるには、片道1.5時間もしくは2時間未満が理想です。もし東京から新幹線を使えるなら2時間圏内という条件に「軽井沢」も入ってきますね。二拠点目の見当がついたら「空き家・地名」で物件を検索するといいでしょう。

家族からも賛同を得やすい出費で、理想の暮らしを手に入れる

いかがでしたか。2019年のトレンド予測として生まれた「デュアラー」という暮らし方。「働き方改革」でより柔軟な働き方を求める動きが、住まいやライフスタイル全体を見直す後押しをしているのかもしれません。月数万円で二拠点生活を実現できるなら家族からも賛同が得やすいはず。池本編集長の「二拠点目を持つには、またとないチャンスが到来している」という言葉が印象的でした。デュアルライフに興味を持った方はぜひ、自宅から片道2時間圏内で空き家などの格安物件を探すことから始めてみてはいかがでしょう。

 


 

住宅・不動産サイト『SUUMO』編集長
池本 洋一(いけもと よういち)

1995年リクルート入社。住宅領域にて編集、営業を経験。2007年に『住宅情報都心に住む』編集長、2008年に『住宅情報タウンズ』編集長を経て、2011年1月より現職。2018年7月より住まい研究所所長も兼務。内閣官房日本版CCRC構想有識者会議委員、経済産業省ZEH(ゼロエネルギーハウス)ロードマップフォローアップ委員、国土交通省良質住宅ストック形成のための市場環境整備促進事業評価委員、環境省賃貸住宅における省CO2促進モデル事業評価委員などを歴任。

 

参考URL:住民基本台帳人口移動報告 平成30年(2018年)結果

 

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