公式HP サーブコープブログ知識・ノウハウイノベーションズアイ コラム第5回 「世界の女性の労働環境」

イノベーションズアイ コラム第5回 「世界の女性の労働環境」

    先日より当ブログでも記事を掲載していますが、サーブコープは現在、イノベーションズアイのウェブサイトにて、コラム「ビジネスで知っておきたい世界の文化の違い」を寄稿させていただいています。

    この度、第5回の記事が公開されました!今回のテーマは、「世界の女性の労働環境」。サーブコープは、従業員の95%という非常に珍しい企業。女性にとって働きやすい企業としても知られています。今回も、そんな世界中のサーブコープスタッフに、女性の視点から話を聞いてみました。ぜひお読みください!

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    第5回

    世界の女性の労働環境

    近年、世界中で女性の社会進出が進むにつれて、家庭で経済的役割を担う女性が増えてきています。女性が家庭に経済的に貢献するようになったとはいえ、妊娠・出産という役割を担うのは、やはり女性です。そのため女性にとっては、家庭と仕事のバランスを取ることが求められています。日本でも、雇用の機会が均等になり多くの女性が活躍してきている一方で、出産・育児後の、女性たちの再就職の難しさや、仕事復帰後の育児との両立の困難さが、課題となっている現状があります。

    そこで今回は、世界中のサーブコープスタッフに、各地域での女性の働き方やキャリアについて聞いてみました。サーブコープは、実は全社員の95%が女性、ほとんどの管理職も女性が担当しているという、とても珍しい企業です。世界中で各個人が受けられる待遇は、それぞれの企業の福利厚生制度や、現地企業なのか外国企業なのかによって変わってきますが、今回は一般的な企業の様子について教えてもらいました。

    ■オセアニア

    1 - Australia_smallオーストラリアやニュージーランドは、国家全体として平等主義の意識が高く、女性でも男性と平等の雇用機会が与えられ、職場でも男女平等な対応をすることが重視されています。しかしながら、男女間の収入格差は依然として大きいのが現状です。2012年3月のオーストラリアでの調査では、男性の高所得者数が女性の高所得者数の約4倍にもなるというデータがあります。これは、主に企業側が男性の労働者に対してより高い賃金を払う傾向にあるためと考えられています。現在もこの問題の解消に向けて、組合や政府が対策として企業や一般市民に対しての啓蒙活動を行っているそうです。

    また、オーストラリアは出産・育児休暇制度に関しても比較的後進的でしたが、2011年には、出産・育児をする女性に対して有給育児休暇を認めることが、企業に対して義務づけられました。財源は政府として、期間中は企業を通して最低賃金額(週543ドル、約42,000円)が労働者へ支払われます。これはフルタイム・パートタイム社員に限らず、臨時従業員にも適応されます。また、産休後職場復帰する際は、従業員は産休前と同じポジション、またはそれと同等レベルのポジションに復帰する権利が認められており、雇用主が復帰を断ることは法律で禁止されています。また、フルタイムの正社員だった女性が産休後に育児との両立のためパートタイムでの就労を希望した場合も、雇用主が断るには、そのポジションがフルタイムである必要性を政府に証明しなくてはならないそうで、結果的に受け入れるケースが多いようです。サーブコープのシドニー本社でも、そのような形でパートタイムとして復帰し活躍している女性管理職もいます。このようにオーストラリアでは、女性の労働環境をサポートするため、ポジティブな方向に向かっているようです。

    ■ヨーロッパ

    第3回のワーク・ライフバランスのトピックでも触れましたが、ヨーロッパは労働者の権利に対する意識が高く、労働環境全体に関して先進地域といえます。またヨーロッパでは「クオータ制」という制度(政界などで議員の男女比に偏りが出ないように、人数を管理する制度)が広く採用されており、社会全体の男女平等化に努めています。出産・育児休暇も法的に認められており、国を財源として、休暇中も賃金の一部が支給されます。ヨーロッパでも特に福祉の充実した北欧は、女性が最も働きやすい環境の整った地域として知られており、北欧諸国は世界的にも男女格差の小さい国として上位を占めています。

    2- Europe_smallフランスのスタッフによれば、フランスでは出産休暇に加えて、その後1年間程度の育児休暇をとるのも一般的だそうです。しかもこれは有給が保証されています。さらに、完全に休みでなくても、産後はパートタイムで働くことも可能です。育児休暇は女性だけはなく男性にも適用されるほか、子供が2人以上いる家庭には、人数に応じて毎月家族手当が支給されたりと、金銭的なサポートが非常に充実しているのが特徴です。このような環境なら、子供を産むことの負担も比較的少なく、出産を躊躇することも少なくなりそうです。実際に2012年のフランスの出生率は女性一人当たり2.0であり(日本は1.4)、理想に近い値をキープしています。

    ベルギーについても、日本で働くベルギー人のスタッフに聞いてみました。日本の状況と比較しても、ヨーロッパは全体的に女性が働きやすい地域だそうです。女性に対するキャリア上の評価もフェアに行われ、より高レベルの業務をこなす女性がたくさんいます。育児休暇に関しては、子供が5歳になるまでは休暇やパートタイムが認められており、長いスパンで子育てと仕事を両立させることができるようになっています。また、父親も10日の育児休暇が認められています。日本では出産や育児を機に退職した女性の再就職が困難になる問題がありますが、ベルギー人のスタッフは、本国でそうした問題をあまり耳にしたことがないそうです。ベルギーでは上記のような制度が充実しているため、仕事を続けたい人はバランスを維持しながらやりくりするので、そもそも退職する必要がないようです。東京と同様にベルギーでも都市部では保育所の供給が追いつかず、中には妊娠に気づいたその日から保育所を探す人もいるそうですが、こうした周囲のサポートがあると、多少困難な状況に直面しても、ワーク・ライフバランス上の満足度が断然高まりそうです。

    ■アメリカ

    3 - America_smallこうしてオセアニアやヨーロッパの状況を見てくると、同じ西洋文化圏ということでアメリカも似た状況だと考えてしまいそうですが、意外と出産・育児休暇の対応に関しては、アメリカは後進国であるといえます。出産・育児休暇に関しては特別に法的な制度があるわけではなく、代わりに、家族休暇という制度があります。これは、家族関連の事情や本人の療養の場合に適用される、12週間の休暇です。もちろん出産・育児休暇を希望する人は、休暇をとることが可能ですが、基本的にこの休暇はすべて無給です。そのため、経済的な影響を考慮して、ほとんど育児休暇をとらないという人もいます。中には、出産日直前まで勤務して、出産後は一週間~10日程度で復職する女性もいるそうです。日本の状況と比べても、かなりハードな印象です。

    ■インド

    4 - India_smallインドではカースト制の歴史もありますが、男女格差も、特に農村部では、依然として強く残っているそうです。女性は家事に従事するのが当然として、あまり外で働くことが一般的でない地域もあります。一方、インド人スタッフによると、そうした農村部の例は少数派であり、ムンバイ、コルカタ、ハイデラバード、ニューデリーなど、”メトロシティー”と呼ばれる都市部では、そのような傾向はなく、企業に勤務する女性も大勢いるといいます。しかしそんな働く女性たちの中でも既婚女性の約半数が、出産や育児に関連する経済的・肉体的な負担を懸念し、出産を先送りにしているというデータがあります。前回のトピックでも少し触れたように、インド人女性は、フルタイムで働きながらも家族の料理をせっせと作るように、家族の営みと両立させたいという人は多いようです。「家族の世話を十分にできていない」と感じて退職する女性もいる一方で、「仕事をやめて主婦になったけれど、経済的に苦しい」と感じる女性もおり、インド人女性のワーク・ライフバランスの問題は、まだまだ課題となっているようです。

    さらに依然として女性の業務内容はのレベルは男性のものよりも低い傾向が強く、業種により、女性の管理職の割合はまだまだまばらだと言います。(サーブコープは社員のほとんどが女性のため、管理職も女性が担当しています。実際にこの情報を提供してくれたサーブコープスタッフは男性でしたが、インドのサーブコープ社員の中で男性は彼一人だそうです。)一方、インドで特に発展しているIT業界では、企業の90パーセントはフレックスタイムを導入、59パーセントは在宅勤務を許可するなど、女性の働きやすい、非常にフレキシブルなワークスタイルを受け入れているというデータもあります。今後はこの業界を中心に女性による労働力が有効活用できるほか、管理職クラスの女性も増えていくのではないかと期待されています。

    ■中東

    以前のトピックでもご紹介したとおり、中東では各地域の文化や政策よって、状況が段階的に異なっています。比較的リベラルな文化を持つレバノンやアラブ首長国連邦(UAE)では、イスラム教国でありながらも女性のキャリアが重視されており、雇用機会も平等に与えられています。しかしながら、育児休暇の制度はあまり充実しているとは言えません。UAEでは産後数年間はベビーシッターを雇い、その後は保育所を利用する人も多いそうです。しかしここでも、保育所の数が十分ではないので、育児と仕事の両立が困難になり、中には産後1、2年は完全に仕事を離れる女性もいるそうです。

    5 - Middle East_small文化的・政策的に保守的なサウジアラビアでは、女性が働くことはほぼ認められておらず、教師や医師など、特定の職業にしか就業することができません。さらにサウジアラビアには「サウジ人化政策」というものがあり、政府から民間企業へ、外国人よりもサウジアラビア人を優先して雇用するように指示を出しています(これに反する企業は、政府からの援助を受けられません)。ですから、サウジ人の女性に比べ、外国人女性が職を得ることはさらに困難だそうです。出産・育児休暇に関しては、4週間の出産休暇、6週間の産後休暇が認められていますが、こちらも育児に十分な期間とは言えません。なお、出産後の6週間は働いてはならない、という独特の規則もあります。

    今回は、世界の女性の労働環境をご紹介してみました。いかがでしたか?女性は出産や育児に時間を割き、仕事を休んだり、キャリアを中断しなければいけない場合がある中で、人口の半数を占める存在であることも事実です。女性が働くことで、経済活性化につながることは無視できません。その一方で、キャリアのリスクや経済的な理由から、女性が子供を生むことを躊躇してしまう現状があるとしたら、それもまた少子化という別のリスクを呼んでしまいます。やはり大切なのは両立であり、それを可能にする環境や、周囲のサポートが重要であるということがわかります。企業としても個人としても、この女性の労働環境を長期的な視点で考えながら、最善の解決策を見出していけると良いですね。

    次回は、世界の法的規制についてご紹介します。お楽しみに!

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    気になることなどあれば、現地スタッフにさらに詳しく質問してみますので、ぜひお気軽にフェイスブックやツイッターにてお声かけくださいね!(ライター:平井)

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