公式HP サーブコープブログ知識・ノウハウ個人事業主の節税対策! 経費として計上できる項目とメリット、5つの注意点を元東京国税局職員が解説

個人事業主の節税対策! 経費として計上できる項目とメリット、5つの注意点を元東京国税局職員が解説

事業に使った必要経費をきちんと計上すると、所得税や住民税の節税につながります。とくに金額の大きな必要経費は計上漏れのないようにしたいものですが、法律で必要経費に認められない費用を誤って計上しないことも大切です。今回は、元東京国税局職員でフリーライターとして独立した小林さんが、必要経費の基本的なルールや、代表的な必要経費の項目、注意点について解説します。

経費を計上するとは? 意味とメリットを解説

必要経費とは、確定申告で税金を計算する際に、収入から差し引くことが認められている費用を指します。たとえば、個人事業主として年間500万円の売り上げがあり、必要経費を200万円計上した場合、差し引いた300万円をベースに税金の計算がなされます。必要経費を計上する最大のメリットは、この「節税効果」に尽きます。

なお、一般に言われている「これは経費になるか?」という言葉は、複数の意味があることに注意が必要です。会社員の場合、「経費になる」というのは、「経費として会社で精算できる」ということを意味します。しかし、個人事業主であれば、「税法のルールで認められるか」という判断基準になります。

税法のルールによると、必要経費は次のとおり定義されています。

  1. 売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
  2. その年の生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

この2点をごく簡単に表現すると、「売り上げを得るために直接かかった費用」または「業務を行う上で必要な費用」ということになります。たとえば商品の仕入れ代や広告宣伝費、消耗品費などが考えられますが、事業の内容によって必要経費は変わってきます。

経費計上できるものは? 節税効果の大きい経費TOP5

先ほど説明した必要経費の基準に照らすと、計上できるものは事業に関係するものに限られます。たとえ事業用の銀行口座などから支払っていたとしても、事業にまったく関係のない費用であれば必要経費として認められません。知人との単なる飲み会の費用や、プライベートで使う物品の購入費などを必要経費として確定申告をすると、後から税務調査で指摘される可能性があります。

それでは、ここからは一般的に必要経費として認められる代表的なものをピックアップします。節税効果は、金額が大きいほどに高くなるため、消耗品費などの細かいものよりも先に、毎月かかる固定費から見ていきましょう。

1位 地代家賃

仕事用に貸事務所やレンタルオフィスなどを借りている人が支払っている家賃は、必要経費に該当します。入居時に支払う礼金も必要経費になります。ただし、敷金には注意が必要です。敷金は退去時に返還されるものですから、必要経費として計上することはできず、「資産」として計上します。その後、退去時に敷金から原状回復費用などが差し引かれたときに、その差引額のみを必要経費として計上することになります

また、自宅で仕事をしているのであれば、事業に使っている割合をもとに家賃の一部を経費にすることが可能です。

2位 通信費

今は仕事をするときにインターネットや電話は不可欠な存在です。ここにかかった費用も確実に計上しておきましょう。ただし、通信費の内訳に事業に使っているものとプライベート用のものが混在している場合は、使用時間などによって按分計算する必要があります。

3位 広告宣伝費

事業を知ってもらうために、チラシ、ホームページなどを作ったなら、広告宣伝費として計上します。ただしPR用動画の制作費や看板など、10万円以上の費用がかかった場合は必要経費ではなく、固定資産として計上します。固定資産に関するルールは、次の項で詳しく説明します。

4位 新聞図書費

個人事業主は、業務に関連する書籍や資料を読むことが少なくないでしょう。ここにかかる費用はすべて新聞図書費として計上できます。ただし、書籍などであればすべて認められるわけではなく、業務と関係のあることが前提条件です。たとえば楽しむために買ったマンガ本の費用は通常認められませんが、「マンガのレビュー記事を書く業務のため」といった理由があれば、必要経費として計上して差し支えありません。

5位 交際費

仕入れ先や事業に関係のある人に対して、接待や贈答などを行った場合、交際費として計上します。交際費については細かいルールが設けられており、とくにポイントになるのが、「事業内容や事業規模からして、妥当な金額や回数か」という点です。「いつ、何を、誰に対して、何のために支払ったのか」ということを明らかにしておく必要があります。

経費計上の際に注意したい5つのポイント

次に、必要経費として計上する前にチェックしておきたいポイントを説明します。計上できるものと、計上できないものをしっかり分けられるように、以下の点に注意してください。

①プライベートと事業経費をしっかり分ける

税務調査などで問題視されやすいのが、プライベートと事業が混在しているケースです。たとえば自宅で仕事をしているのであれば、家賃や電気代などの全額を必要経費にすることはできません。

こういった場合は、「事業に使っている割合」を加味して必要経費を計上する必要があります。たとえば、「家賃は仕事に使っている床面積を基準にする」「電話代は使用時間の割合を基準にする」といったように、事業に利用している実態に合わせてください。

②10万円以上の支出は「固定資産」に

業務に使うパソコンや車など、10万円を超えるものを買うときは、原則として一括で必要経費にすることができません。こうした物品は固定資産として計上し、数年にわたって分割して必要経費にすることになります。たとえば12万円で買ったパソコンは、4年間に3万円ずつ必要経費に計上するという形です。

ただし、青色申告の承認を受けている場合は、特例として固定資産でも30万円未満(年間300万円まで)のものは一括で必要経費にすることが認められています。

③領収書がなくとも、実際に支払った必要経費は計上する

領収書をもらうのを忘れたり、紛失したりしても、事実として必要経費を支払ったのであれば、計上して差し支えありません。ただし、後で税務署から確認を求められる可能性があるので、少なくともレシートは保管しておいたほうがいいでしょう。

領収書もレシートもない場合も、日付や支払金額、支払い理由などを出金伝票に残しておくという方法があります。重要なのは、その必要経費を支払ったときの情報をできる限り正確に残しておくことです。

④交際費は相手方の情報をメモしておく

商品の仕入れなどであれば、領収書などを見れば、「事業のために支出したもの」ということが明確に分かります。しかし、交際費の場合は、居酒屋の領収書や、贈答品のレシートなどが根拠になりますから、「本当に事業のために払ったものなのか?」という疑問が残ります。

繰り返しになりますが、交際費として認められるには、「仕入れ先や事業に関係のある人に対して、接待や贈答などを行った場合」という条件があります。居酒屋で取引先の接待を行ったのであれば、居酒屋からもらった領収書に、誰が同席していたのかを記載しておくと、税務署に対して説明しやすくなります。

⑤ありがちなミス!「期ズレ」に注意

税務調査でとくに目をつけられやすいのが、「期ズレ」というものです。たとえば2022年分の必要経費であるにもかかわらず、2021年分として計上すると、申告誤りになります。

必要経費を計上する日は、原則として、商品やサービスの提供を受けた日です。2021年末に事業用の備品を注文したとしても、2022年に備品が届くのであれば、その費用は2021年分として計上することはできません。

元国税局職員がおすすめ!「これをやっておくと楽」な経費計上のコツ

節税の基本は、必要経費となるものをきちんと計上することです。間違いなく、しかも手間なく必要経費を計上するために、私が実践している方法をお伝えします。

①会計ソフトと口座を紐づける

帳簿作成に役立つ様々な会計ソフトが販売されています。まずはこうしたソフトを利用することで、手作業よりも簡単かつスピーディーに必要経費を計上することができます。

とくに、銀行口座やクレジットカード口座などと紐づけることができる機能を備えた会計ソフトを使うと、自動的に金額や取引先の名称などの情報を取り込んでくれるため、必要経費を計上する際に便利です。

②プライベートと事業用で口座を分ける

生活用の銀行口座やクレジットカードで事業関連の入出金をしてしまうと、後から、ひとつひとつのお金の動きを確認し、「事業関連か、プライベート関連か」と区分けする必要があるため、非常に大変です。また、本来は必要経費にできないプライベートの出金を誤って必要経費として確定申告をするおそれもあります。

そこで事業用の銀行口座や、その口座に紐付いた事業用クレジットカードを作っておくと、必要経費の計上が楽になります。事業に関連する支払いは、その口座やクレジットカードを使うことを徹底しましょう。

③現金取引は避け、クレジットカードを使用する

現金で必要経費を払った場合、その情報を会計ソフトに手入力することになります。この作業を忘れてしまうと、必要経費の計上漏れにより、税金を多く支払うことになってしまいます。会計ソフトに情報を自動的に取り込むためにも、普段の必要経費の支払いは事業用クレジットカードにまとめ、明細を見れば何に支払ったのかが分かるようにしておくことをおすすめします。

④10万円以上のものを買うときは、「固定資産」を意識する

前述のとおり、10万円以上のものを購入するときは、原則として固定資産として計上することになります。このとき、固定資産の取得年月日や金額などを、固定資産台帳というものに記録しておく必要があります。

会計ソフトを使う場合、固定資産台帳にきちんと登録しておけば、複数年に分けて必要費用とする計算を自動的に行ってくれますので、最初に支出した段階で、忘れずに固定資産台帳に記録しておくようにしましょう。

必要経費をきちんと計上して、節税につなげる

今回は、節税に役立つ必要経費をテーマに解説しました。オフィスの家賃や交際費など事業に使った費用があれば、必要経費として計上することを忘れないようにしましょう。また、正確かつ効率的に必要経費を計上するためには、会計ソフトを利用するなどの方法が有効です。個人事業主は今後の参考にしてください。

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    文・小林義崇(こばやしよしたか)
    元東京国税局職員。都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事する。2017年7月、東京国税局を退職しライターとして開業。実用書や雑誌・WEBメディア記事を多数執筆。

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