52.6%の中小企業が「廃業」を予定!? 事業承継マッチング支援がスタート
日本経済をリードしているのはトヨタやホンダといった大企業だと考えられがちですが、国内の事業者数をみると、実は全体の99.7%は中小企業。日本の地域産業と雇用を担い、1万社の大企業を下支えしているのは350万社を超える中小企業の存在なのです。
日本政策金融公庫(省略:日本公庫)は2019年10月、中小企業経営者の高齢化にともない懸念される事業継承の現状を把握するため、全国の中小企業(従業者数299人以下の企業、有効回答数4759件)にアンケートを実施。調査結果によると、すでに後継者が決まっている企業はわずか12.5%で、廃業を予定している企業は実に52.6%と、半数以上が廃業を見込んでいることがわかりました。本記事では中小企業の後継者問題の背景と、2020年4月から日本公庫が対策として打ち出す「事業継承マッチング支援」について紹介します。
廃業予定は2社に1社、後継者が決まっているのはわずか12%
では早速、アンケート調査の結果を詳しくみていきましょう。前述したとおり、後継者が決まっている中小企業は全体のわずか12.5%と極めて少数派。87.5%におよぶ企業は後継者が決まっておらず、うち52.6%が「自分の代で事業をやめるつもり」とすでに廃業を予定していると回答しました。
後継者が決まっていない理由として次に多かったのが、事業継承の意向はあるものの「本人が承諾していない」「後継者本人がまだ若い」「現在候補者を探している」などで22.0%。残る12.9%はアンケートに回答した経営者自身がまだ若いため、「今はまだ決める必要がない」と答えています。
なかには「後継者の候補が複数おり、誰を選ぶかまだ決めかねている」という恵まれた企業もありますが、経営者が決まっていないと回答した企業のほとんどが後継者不足に悩まされているのが現状です。
他人には担えない? 自分の代で廃業を決めた理由
アンケート調査の結果で目に留まるのは、実に52.6%の中小企業がすでに廃業を予定している点です。この傾向を350万社にあてはめると、175万社が将来的に廃業することになり、中小企業の廃業問題をこのまま放置すれば、2025年までに650万人の雇用と22兆円の売り上げが喪失するという試算もあります。
廃業を予定していると回答した企業のなかで最も多かったのが、「そもそも誰かに継いでもらいたいと思っていない」(43.2%)というもの。なぜ継いでもらいたいと思っていないかを詳しくみていくと、「経営者個人の感性・個性が欠かせない事業だから」(27.2%)、「自分の趣味で始めた事業だから」(20.6%)、「高度な技術・技能が求められる事業だから」(17.7%)などが上位にランクイン。経営者本人の資質や能力によって企業を運営し、さらにそうした能力や技術を継承してこなかったことがうかがえます。
また、廃業理由としてはほかにも、「子どもがいない」「子どもに継ぐ意志がない」「適当な後継者が見つからない」など、少子高齢化や人材不足が背景にあるとみられる廃業も29.0%にのぼりました。
なお、廃業予定の時期は、「5年以内」が43.6%、「6~10年後」が29.0%で、7割超が2030年までに廃業を予定していると回答しています。
家督文化は健在? 後継者の約45%が長男
では、すでに後継者が決まっていると回答した12.5%の企業は、どのように見つけたのでしょうか。
自身の子どもに事業を受け継ぎたいと考えている経営者は多く、 後継者候補を「長男」とした企業が45.2%にものぼりました。日本のビジネスシーンは今もなお、長男へすべて相続させる家督文化が根強く残っているようです。一方で、長男ではなく「役員・従業員(親族以外)」に継承したいと考えている企業は16.3%、「長男以外の男の実子」は10.1%、「その他の親族」は8.8%でした。
しかし、後継者が決定しているからと言ってひと安心というわけにもいきません。
「事業承継の際に問題になりそうなこと」という問いに対し、後継者が決まっていると回答した企業でも、「後継者の経営能力」や「相続税・贈与税の問題」、「取引先との関係の維持」「技術・ノウハウの承継」など、事業継承においてさまざまな懸念点を挙げています。
子どもや親族以外への事業継承が増加するにつけ、こうした懸念点も比例して増していく可能性もあるでしょう。
日本公庫がスタートさせる「事業承継マッチング支援」
「そもそも誰かに継いでもらいたいと思っていない」、もしくは「今は決める必要がない」と答えた企業を除き、ほとんどの経営者が後継者を見つけられれば「事業を受け継ぎたい」と望んでいるようです。こうした状況を支援しようと、日本公庫の国民生活事業は2020年4月より、全国で「事業承継マッチング支援」をスタート。
「事業承継マッチング支援」は、後継者が見つからない中小企業と「事業を譲り受けたい」と考える経営者をマッチングさせるサービスで、国民生活事業が関わる全国約90万の顧客基盤(事業資金の融資先数)をいかし、双方の希望条件に合ったケースを探し、両者を引き合わせようとする取り組みです。
この制度はすでに東京都で実験的にスタートしていて、日本公庫は「一定のニーズが確認された」と評価。2019年4月から2019年12月の11カ月間で、25件の事業継承が実現しています(譲渡希望60件、譲受希望194件)。日本公庫はこの結果を受けて、2020年春から後継者問題がより深刻な地方へサービスを拡大。マッチング支援を全国規模で展開できれば、地域活性化にもつながると期待されています。
ゼロから新たに起業するよりも起業時のコストが削減でき、経営資源も引き継げるといったメリットがあることから、事業継承を希望する人は少なくありません。東京都で実施したマッチング支援の実績をみると、譲受希望者は譲渡希望者の3倍にのぼることがわかります。もし後継者不在で廃業も視野に入れている場合は、一度、支援制度の活用を検討してもよいでしょう。
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