ビジネスを制したいなら確率に強くなれ!ビジネスセンスが磨かれる確率の話
30人のクラスに同じ誕生日の人がいる確率は、どれくらいだと思いますか?直感的には、それほど高い確率ではないように思いませんか?
ところが、正解は70%なのです。
■直観と確率にはズレがある
なぜ、正解は70%なのか。どのように導き出したのか解説します。
2月29日を除外して、1年を365日として考えてみます。すると、30人のクラスで同じ誕生日の人がいる確率を求める式は、下記となります。
(1組でも誕生日が一致している組み合わせ数)÷(30人の誕生日のすべての組み合わせ数)
このとき、分子である(1組でも誕生日が一致している組み合わせ数)を求めることは、実はかなりやっかいなのです。
そこで、(1組でも誕生日が一致している組み合わせ数)を1−(30人の誕生日がすべて異なる確率)と考えます。
つまり、下記のように計算できます。
1−(30人の誕生日がすべて異なる組み合わせ数)÷(30人の誕生日のすべての組み合わせ数)
(30人の誕生日がすべて異なる組み合わせ数)は、小学校の算数で習った「順列・組み合わせ」の考え方を使えば、式を立てることができます。
1人目の誕生日:何月何日でもよいので、365通り
2人目の誕生日:1人目の誕生日と重なってはいけないので、(365−1)通り
3人目の誕生日:1人目と2人目の誕生日と重なってはいけないので、(365−2)通り
このように考えていき、30人目は(365−29)通りになります。この30個の数値を掛け合わせればいいわけです。
次に、(30人の誕生日のすべての組み合わせ数)を考えてみましょう。これも「順列・組み合わせ」の考え方を使えば、式は簡単に立てることができます。
1人目の誕生日:365通り
2人目の誕生日:365通り
3人目の誕生日:365通り
このように、(30人の誕生日のすべての組み合わせ数)は、365を30回掛け合わせれば(もしくは、365を50乗すれば)求められるのです。
そして、先程の式に当てはめて計算すると、答えは約0.7。同じ誕生日の人がいる確率は70%になるのです。
この問題の解き方は、『Newton別冊 確率に強くなる』(2010年、ニュートンプレス)に紹介されていたものです。その解説によると、「誕生日一致の確率」は、クラスの人数が23人を超えると50%を超え、50人のクラスでは約97%に達するそうです。
このように、直感と実際の確率にはズレが生じることを理解していただけたのではないでしょうか?
■注目されつつある統計学
今、西内啓氏が著者である『統計学が最強の学問である』(2013年、ダイヤモンド社)をきっかけにして、統計学に注目が集まっています。その背景には、ICTの進化によりビッグデータが経営資源として活用されるようになり、統計学の有為性が再認識されるようになったことがあります。
統計学のビジネスへの応用が進むにつれ、確率に対するセンスも求められる場面が増えてきます。それは、「一定の条件下で、◯◯が起こる確率が◯%」といったデータ処理が、統計学には付きものだからです。そのとき、確率を直感的に認識してしまうことがいかに危険なことか、「誕生日一致の確率」の問題でおわかりいただけたのではないでしょうか。統計学に強くなろうとするならば、確率にも強くなることが大切です。
■確率は論理的思考が重要
ここで、確率の問題をもう1問。
【問題】
ある家族には、子供が2人います。そのうち少なくとも1人は男の子であることがわかっています。このとき、もう1人も男の子である確率を求めなさい。
正解は「1/2」と思う方が多いかもしれませんが、そうではありません。
まず、この家族の子供のうち1人が男の子であるという情報がないときを考えてみましょう。そうすると、子供の性別のパターンは、生まれた順に、〔男・男〕〔男・女〕〔女・男〕〔女・女〕の4通りの可能性があります。
しかし、「そのうち1人は男の子である」という情報が加わることで、上記の4通りの可能性のうち〔女・女〕が除外されることになります。そうなると、この家族の2人の子供の性別の組み合わせの可能性は、〔男・男〕〔男・女〕〔女・男〕の3通りとなります。
そして、この3通りのうち「1人が男の子で、もう1人も男の子である」のは、〔男・男〕の組み合わせのときだけです。3通りのうちの1通りなので、この問題の正解は、1/3となるのです。
いかがでしたか?この問題では、「確率を求めるには論理的思考が欠かせない」ということを感じていただけたのではないでしょうか。
確率を考えることは、数学的・論理的思考を磨きます。直感にたよらない、数学的・論理的理解のもとに統計データを読み込んでいく力を付けるためにも、確率に強くなることはお勧めです。堅苦しく感じるかもしれませんが、確立に強くなることで、同時に「確率」の面白さも感じることが出来るのではないでしょうか?
※参照元
『Newton別冊 確率に強くなる』(2009年、ニュートンプレス)
『統計学が最強の学問である』(2013年、ダイヤモンド社)