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ビジネス市場の“今”と“未来がわかる”ビジネス書トレンド分析

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トマ・ピケティの『21世紀の資本』が、経済書としては異例のヒットとなっています。

経済アナリストの森永卓郎氏、労働経済学の橘木俊詔氏(京都女子大学客員教授)、作家・元外務省主任分析官の佐藤優氏など、『21世紀の資本論』を高く評価する人が多くいる一方で、「一時のブームだ」と捉えている人もいます。

ライブドアの元社長、堀江貴文氏は、ある雑誌上で「米国の電子決済サービス・ペイパルの共同創業者で投資家であるピーター・ティールの著作の方がずっと役に立つ」と言っています。

ピケティ氏の言うところの「r>g」が正しいかどうかは別にして、少なくとも、「必然的に格差を生む資本主義に対する疑義」が広く受け入れられるような世の中になっている(しかも、世界的に!)ことは、確かなようです。

『週刊ダイヤモンド』2014/12/27・2015/01/03合併号は、「経済学者・経営学者・エコノミスト109人が選んだ2014年『ベスト経済書』」という特集を組んでいます。2014年のベスト経済書には、第1位に選ばれた水野和夫著『資本主義の終焉と歴史の危機』をはじめ、ダニ・ロドリック著『グローバリゼーション・パラドクス』(第6位)、平川克美著『グローバリズムという病』(第18位)、橘木俊詔・広井良典著『脱「成長」戦略』(第22位)、西川潤著『新・世界経済入門』(第23位)など、これまでは当然とされてきた「経済成長」や「グローバル化」自体に疑問を投げかける経済書が数多く〝ランクイン〟したところに大きな特色があります。

短期的には、景気回復に向かっているかにみえる日本経済ですが、長期的あるいは構造的には、現在の資本主義システムが大きな壁にぶつかっているのかもしれません。元米国財務長官のローレンス・サマーズ氏の「長期停滞論」に代表されるように、「先進諸国の経済は、成長しにくい段階に入っている」という議論もあります。

こうした時代認識のもと、私たちが指針を求めるとすれば、それは何なのでしょうか。ことに、この時代の中で新しくビジネスを起こそうとする人たちにとって、参考となる書はどういったものなのでしょうか。

ビジネス書の「カリスマ書評家」として知られ、人気メルマガ『ビジネスブックマラソン』を発行する土井英司氏は、『ビジネスパーソンのための「最強の教養書」100』(日本経済新聞出版社)の中で次のように語っています。

「既存のシステムに行き詰まりが生じている〈why〉のフェーズにおいては、本質を考えようとして、教養を問う本、哲学的な本がよく読まれる。次に、新たなビジョンが見えてくると〈what〉のフェーズに移行し、戦略を練るために、ビジネスモデルを書いている本が売れる。さらに、何をなすべきかが決まると〈how〉のフェーズになる。そこでは、成功者の物語がよく売れる」

土井氏の言う〈why・what・how〉の3つのフェーズのどの段階にあるかは、一人ひとり違うと思います。ただ、時代的な全体状況を見る限り、成長軌道に乗り切れない先進資本主義各国は、既存のシステムに行き詰まりが生じている〈why〉のフェーズにあるという認識なのかもしれません。であるからこそピケティが売れている、とも解釈できます。

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もし、あなたが今の状況に行き詰まりを感じ、何に取り組むべきなのかを見失っているようであれば、実践的というより学究的な本や、教養書を読むほうがよいのでしょう。ものごとの本質を捉える力、ものごとを深く掘り下げて考える力を養うという意味では、ビジネスを離れ、歴史やサイエンス、哲学などの良書に親しむのもよいかもしれません。

今、あなたがビジョンを持って事業に取り組もうとしているのであれば、戦略を教えてくれる本を選びましょう。そして、戦略が描けているのであれば、より詳細な〈how〉を教えてくれる本を選びましょう。

ごく当たり前のことですが、タイトルだけで本を選んだり、売れている本だからといってつられて買ったりしてはいけません。大事なことは、今のあなたに必要な情報は何なのかを把握し、それを補ってくれる本を探すことなのです。

※参照元:朝日新聞社(Astand)
https://astand.asahi.com/webshinsho/diamond/weeklydiamond/product/2015011300002.html

 

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