「スモールビジネスだからこそ役に立った」。一人の起業家がコーチングから得た成果とは
ひと昔前の「トップダウン型」マネジメントとは違い、相手の主体的な行動をうながすことによって目標達成を目指す「コーチング」。10年のコーチ歴がある株式会社コーチ・エィの酒井春奈さんにお話をうかがった前回。後編では、実際に1年半のプログラムを受けた、株式会社スポコンの石渡圭輔さんを取材しました。
これまでのマネジメントにコーチングを取り入れたことで、どんな成果を得たのか。スモールビジネスやベンチャーにこそコーチングがおすすめの理由もお聞きしました。
経営者やリーダーにおすすめの「コーチング」とは? なぜ、ビジネスに有効なのか
コーチングを学ぶ前に抱えていた課題
―― 早速、石渡さんがコーチングを学ぶ前に抱えていた課題は何だったのかを教えてください。
私たちの会社は、子どもたちの可能性を伸ばすことを目的にしたスポーツプログラムを提供しています。3年ほど前、事業の業績が伸びず、生徒の退会が続いたり、保護者からクレームが来たりして、停滞した空気が蔓延した時期がありました。ビジネスの成果を上げるには、まず退会者が出ないようにする必要がありました。そのためには、コーチも生徒も、もっと楽しくスポーツに取り組める状態を作らないといけない。でも何をどうすればいいのか分からず、行き詰っていたんです。
その時に教えてもらったのが、コーチングでした。早速プログラムに申し込み、2017年2月から2018年6月まで、コーチングの基本から実践を学びました。
コーチングを受講して何が変わった?
―― コーチングを学んで変わったことは何ですか。
コーチングの目的は、社員の主体的な行動をうながすことで、社員個人が自分の頭で考えるようにすることです。一人ひとりが自ら行動するようになれば組織が活性化し、それまで以上の成果を出すことができるという考え方です。
主体的な行動をうながすには、「あなたはどうしたいのか」「どこに向かいたいのか」といった目標設定やビジョンを社員や部下に問いますが、他人にそれを聞く前に、まず、自分自身がしっかり答えられなければいけません。
コーチングのプログラムでは、まず私自身がなぜこの仕事をやっているのか、仕事を通して何を成し遂げたいのか、ということにしっかりと向き合いました。つまり、コーチングを学び始めてまず変わったのは私自身ですね。目標やビジョンがはっきりしないまま、「何となく」仕事をしていたというのが正直なところだったので、自分の仕事に自覚的になれたことは大きかったです。
―― では、スポコンで働くコーチたちはどう変わっていきましたか。
コーチたちに対して、「なぜあなたはこの仕事をしているのか」「何を目指しているのか」「何に興味があるのか」「何を楽しいと感じるのか」という本質的な問いをし続けたことで、彼ら自身の目標設定やビジョンが明確になりました。
そもそも目標やビジョンがはっきりしていなければ、どこに向かって、どれくらい努力すればいいかが分かりません。今やっていることが成果に結びついているのか、成長につながっているのかさえ分からない。
今では私の指示をいちいち受けなくても、コーチたちは主体的に考え、行動できるまでに成長しています。
ビジネス面で得られた成果とは
―― ビジネスの面ではどんな成果がありましたか。
スポーツプログラムから退会する生徒の数が減りました。保護者からのクレームもです。それは大きな成果でした。
コーチングを取り入れたマネジメントが私自身やコーチたちに有効だったのはもちろん、スポーツ指導をする子どもたちとのコミュニケーションにも大いに役立ちました。退会する生徒たちが減ったのは、生徒へのコミュニケーションが変わったからだと思っています。
それまでは、「あぁしなさい、こうしなさい」と命令に近い指導をしていましたが、「どんなプレーをしたいのか」「どんな選手になりたいのか」を生徒一人ひとりに聞いていきました。目標設定やビジョンをはっきりさせるというコーチング型マネジメントのメソッドですね。自分自身に関心が向いていることを生徒たちが実感したことで、私を含めたコーチ陣と生徒の関係が以前とは全く違うものになりました。
―― 命令的な指導ではなくなったことで信頼関係が築けたということですか?
そうですね。自分がどうなりたいかを問われて初めて、やりたいことや自分の理想がおぼろげながらも、生徒の口から出てくるようになったんです。そうすると、そこに近づくために今の自分に何が足りないのかを生徒が自覚するようになります。今までは“やらされていた”感が強かったのに、自分で目指したゴールに向かって、チャレンジしたい気持ちが湧いてくる。練習も主体的に考え、行動できるようになり、楽しさや充実感が何倍も大きくなったようです。
スモールビジネスだからこそコーチングがおすすめ
―― 石渡さんは起業家の一人ですが、小さいビジネスだからこそコーチングがおすすめだと思う点はありますか。
コーチングをマネジメントに取り入れることの強みについてお話してきましたが、社員を雇用する前の段階でもコーチングは有効です。
スモールビジネスやベンチャーは大きな企業と違って、自分自身で目標設定をし、成果を出さなければいけません。起業したての頃は特に、一人で抱えるタスクや責任の範囲が広いためプレッシャーが大きく、また、自分の視野だけでは限りがあるため、乗り越え方が分からない問題も発生します。
一人だからこそ、いかに自分の視点を変えていけるかは重要です。コーチングでは自分の視点を変えるセッションを何度も重ねるので、新しい方法で問題解決に取り組めるようにもなります。
少人数で成果を出さないといけないスモールビジネスやベンチャーこそ、コーチングが助けになると私は思います。
いかがでしたか。前編では株式会社コーチ・エィの酒井コーチに「コーチング」の概念と目的についてお話しいただき、後編ではコーチングプログラムを受講した石渡さんに、スモールビジネスだからこそコーチングを取り入れるといい理由や、ビジネス成果についておうかがいしました。
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取材協力・石渡圭輔(いしわたけいすけ)
株式会社スポコン 代表取締役。商社勤務・広告代理店勤務を経て、2003年に同社の立ち上げに参画し、2007年から代表取締役就任。子ども・学生・社会人にとってのスポーツを通じた可能性の開拓をMissionに活動中。一般社団法人スポーツコーチングJapan理事。