上に立つ者なら知らなきゃマズい! 人を動かすための10原則
4月にこのコーナーで、『人を動かす2』(D・カーネギー協会編、創元社、2012年)を紹介したところ、「もっと詳しく教えて欲しい」などの反響をたくさんいただきました。そこで、今回は、この本に書かれている「信頼を築く10原則」について、もう少し詳しくお話ししたいと思います。
『人を動かす2』は、デール・カーネギーが1936年に書いた世界的名著『人を動かす』の21世紀版で、デジタルメディア全盛の時代に、何をどう伝え、人間関係をどう築くべきかを、カーネギーが提唱した原則に基づいて考察した本です。
この本は、「コミュニケーションがただ上手だというだけでは、人を動かすことはできない。結局のところ、人を動かせるのは演出や操作ではなく、深い敬意や思いやりや好意を表わすことのできる本物の習慣だけだ」と訴えます。そして、その本物の習慣を身に付ける具体的方策のひとつとして、「信頼を築く10原則」を挙げているのです。
■信頼を築く10原則
では、その「10原則」を、ひとつずつ見ていきましょう。
〈1〉議論しない
「人と議論をしていても、得るものはほとんどない」と、この本は述べています。そして、「自分を曲げないことよりも相手を尊重して交渉するほうが、長い目で見ればずっと効果的」であることを認識すべきだと、説いています。
〈2〉「あなたは間違っている」と決して言わない
「人の間違いを指摘するのは、敵をつくるだけ」だというのが、カーネギーの考え方です。
「Eメールやツィッターで舌足らずな議論をするのはやめて、もっと敬意と融和の精神をもって会話のできる環境をつくること」が必要であり、「そうした謙虚な姿勢が、思いがけない人間関係と、思いがけない協力と、そして思いがけない成果につながる」のだと言うのです。
〈3〉間違いを潔く認める
「謝罪が人に何を伝えるのかを私たちが忘れがち」になっており、間違いを認めることを難しくしています。「自分の過ちを潔く認めると、相手はたいてい寛大になり、気前がよくなる。相手の頭のなかで、その過ちがたちまち目減りする」ことを、肝に命じておくべきです。
〈4〉親しみをこめて話しかける
「友達をつくることは、友達のように話しかけることからはじまる」。では、「友達のように話しかける」とは、どのようなことかというと、「携帯メールやチャットなどの短文のコミュニケーションでは、あまり役立ちそうにない。せめてもう少し時空の共有をゆるすメディアを使って、親愛の情を伝えることである」だと言います。それは、「創造性と少しばかりの時間が必要になるが、決してできないことではない」のです。
〈5〉共感を得る
この本は、「デジタル時代には、初対面のうちから、いいね! 友達、フォローする、シェアするなど、一種の共感のあることがざらにある。けれども、しばしば相手が何を求めているかを無視し、一方的な売り込みで攻め立てることがある」と、警告を鳴らします。
そして、イエスを維持するには、「コミュニケーションを通して相手が求めるものを提供していかなければならない」と、教えています。
〈6〉手柄をゆずる
「手柄をゆずることは、相手と相手がしてくれたことをありがたいと思って、その人との間にあなたが選んだ生き方だ。それは相手の成功や幸福を優先することにほかならない。同時に自分という人間と、互恵の力の両方を信じているということだ」
〈7〉人の身になる
「人は自然に他人を思いやれるような生き物ではない」からこそ、その人の立場をできるだけ理解することに時間を使うべきだと、説いています。
〈8〉気高い精神に訴える
この本は、現代において「人間関係をたんなる取引の道具に」していることが多いのではないかと、問題提起しています。人と真につながるには、人が生来持っている「秀でた立派な人間になることにあこがれる」気高い気持ちをたたえ、その気持ちを思い起こす必要があると呼びかけているのです。
〈9〉物語を共有する
「このデジタル時代には、あなたがどんな人なのかや、あなたの会社がどう奮闘しているのかをありのままにみせて、他の人々と共感でつながり、より親密な友情を結べるようなチャンスがいくらでもある」のだから、自分の物語を話そうと、呼びかけています。「そうすれば他の人々も物語を喜んで話してくれるだろう。それらが結びついて、新しい、もっと大きな物語が生まれ、それだけ大きいことが彼らと一緒に達成できる」はずだと言うのです。
〈10〉対抗意識を刺激する
10原則の最後に、この本は次のように語りかけています。
「張り合うことがきれいな仕事だと言った人は一人もいない。相手のために汚れようではないか。そうすれば、相手も、あなたのために汚れてくれる」