弁護士が独立開業に失敗しないための6つのポイントは? オフィスの選び方も解説
弁護士になったからには、いつか独立開業したいと考える人がほとんどでしょう。独立に失敗しないために、注意したいポイントは? 本記事では弁護士が独立するメリットをはじめ、失敗しないための注意点や開業の手順、重要なオフィス選びについて解説します。
弁護士が独立するメリット3つ
弁護士が独立すると、どんなメリットがあるのでしょうか。大きく3つのポイントにまとめました。
① 自由な働き方ができる
法律事務所に勤務するアソシエイト弁護士の場合、経営者弁護士の方針に沿った働き方をするため、労働時間が固定される場合がほとんど。当然、時間的な拘束は発生します。その点、独立すると自分の裁量で時間を使えるため、自由な働き方を実現できるメリットが。ただし、管理業務の負担が増えるといったデメリットもあります。
② 扱う事件を選びやすい
勤務弁護士の場合、扱う事件を自由で選ぶことはできません。経営者弁護士が選んだ事件をこなす必要があり、長期に亘るケースの場合は精神的なストレスも溜まります。独立すれば負う責任は増しますが、自分が得意とする事件を選びやすくなる分、無理な案件を受ける必要がなくなります。
③ 年収がアップする
日本弁護士連合会が会員2,864人を対象に行った2018年の調査(※1)では、平均年収は2,143万円。経験年数で見ていくと、「5年未満」が735万円で「5年以上10年未満」ではおよそ倍の1,550万円になっていることが分かります。
実は、経営者弁護士(独立弁護士)の割合が一気に増えるのもこのタイミング。キャリアが「5年未満」の場合、勤務弁護士の割合は66%で、経営者弁護士は14%。「5年以上〜10年未満」になると、経営者弁護士の割合が一気に51%を占め、勤務弁護士は28%に減少しています。
独立した弁護士の年収が分かる公的データはありませんが、日弁連の調査からも、独立すると年収が上がると考えるのが一般的でしょう。
弁護士の独立でよくある失敗とは
開業する場合のメリットを3つ紹介しましたが、もちろん独立にはリスクが伴います。独立した弁護士が経営に失敗するケースには主にどんな要因があるのでしょうか。
開業費用が高すぎる
1つ目は、開業費用が高すぎる問題です。独立後の経営を圧迫するのは主に、オフィス物件の保証金や敷金やオフィス家具、内装の費用など。また、OA機器や通信環境を整備するのにもお金がかかります。十分な資金が準備できていれば別ですが、スタートから数百万円の借金を抱えるケースも少なくありません。
独立直後はすぐに事件が入ってこず、資金繰りが苦しくなりがちです。開業費用を抑えられるよう、物件の選定は注意深く検討しましょう。
経費がかかりすぎる
月々のランニングコストにも注意が必要です。賃料やOA機器のリース料、通信料、保険料など、毎月の固定費は事前にしっかりと把握し、経営を圧迫しない計画性が重要です。
独立後の経費は小さく抑える方が安心です。特に物件の賃料は膨らみがちなので注意してください。
安定した集客ができない
弁護士の独立で失敗するパターンとして、集客できないケースが非常に多くなっています。
勤務弁護士の時は担当した事件を的確にこなし、評価が高かった弁護士ほど「独立してもうまくいくだろう」と考えるものです。しかし事件をこなすスキルと集客スキルは別物です。弁護士としての能力が高くても営業できなければ事務所経営はうまくいきません。独立するなら「集客チャンネル」の確保が必須といえるでしょう。
弁護士が独立に失敗しないための6つのポイント
では、弁護士の開業で失敗しないためにはどうすればいいのでしょうか。6つのポイントにまとめました。
① 独立に最適なタイミングを見計らう
一般企業の新卒社員と異なり、弁護士は「弁護士になれる年齢」が人によってさまざまです。よって独立する年齢も一律にはいえません。例えば20代で弁護士になった人と40代で弁護士になった人を同じように論じるのは困難です。
先に引用した調査にあったように、弁護士になって5年以降に独立する人が多いようです。早めの独立を考えている場合は、最初の5年を目安に、できるだけ多くの件数を担当し経験を積むのはもちろん、幅の広い弁護士ネットワークを築くといいでしょう。
② 弁護士としての明確なビジョンを持つ
独立の際、「どんな弁護士になりたいか」という明確なビジョンを持っている人は成功しやすいといえます。
例えば「得意分野、注力分野がある」「宅建の資格を持っていて不動産案件に強い」「社労士資格や司法書士資格を持っていて多様な営業ができる」「休日対応、夜間対応できる」など、他の弁護士とは違う付加サービスをアピールできた方が集客にもつながります。
③ 顧客を獲得できる見込みがあるか
勤務弁護士としていくら優秀でも、独立後に安定した集客ができなければ経営に失敗してしまいます。必ず顧客を獲得できる算段がついてから独立しましょう。また、独立したら基本的にすべての案件と業務を自分でこなしていかねばなりません。一通りの業務をこなせる経験を積み、しっかりとしたスキルと体力を身に付けておきましょう。
④ 資金の準備
独立に必要な資金は、基本的に事務所開設にかかる費用と月々の固定費です。オフィスの立地や規模、形態によって初期費用の額は大きく異なります。
東京弁護士会が公開している、独立した弁護士15人のケース(※2)でも、33〜625万円と大きな開きが見られます。事務所の形態によって、開業に必要な資金も大きく変わるため、計画性が重要です。
⑤ 開業場所の選定を済ませておく
④に関連して、どこで弁護士事務所を開業するかは、独立にとって非常に重要なポイントになります。
・どこの都道府県で開業するか
まず、東京で開業するのか、地方出身者であれば出身地に戻って開業するのか、自身のライフプランに合わせて決定しましょう。
・どこのエリアで開業するか
例えば東京の場合、同じ23区内であっても弁護士事務所の数や弁護士の数はさまざまです。弁護士が少ない地域を狙い、開業場する方法ももちろんあります。
逆に、企業をクライアントに経営を展開したい場合は、企業数が多いビジネス街に弁護士事務所を構えるのが有効でしょう。裁判所や弁護士会と距離が近いこともメリットになりますが、立地の良さは賃料の高さに比例する点は考慮する必要があります。
・どのような物件を借りるか
1人で開業する場合は小さめのオフィスを賃貸し、扱う件数やスタッフの数が増えるにしたがって、広い事務所に引っ越しするパターンが王道です。
弁護士にとってかかせない顧客からの「信用」。事務所が入居する建物の雰囲気やオフィスの内装など、好印象を与えられるかどうかは重要なポイントです。古くて汚い、管理の行き届いてない物件では第一印象からマイナスです。できるだけ内見をして、「ここならお客様が気持ちよく相談できるだろう」と感じられる物件を選びましょう。
また、交通の利便性が高い方が集客にはプラスです。駅からオフィスまで実際に歩いてみることもおすすめします。
・自宅・レンタルオフィス・賃貸オフィス
賃貸かレンタルオフィスかで、独立後の環境やランニングコストが大きく変わってきます。
前述した東京弁護士会の資料を見ると、初期費用が抑えられているのは自宅開業とレンタルオフィスでの開業。33~74万円の規模で開業しているのが分かります。他方、400〜600万以上の初期費用がかかっているのは、永田町や虎ノ門といった官庁街で賃貸オフィスを借りているケースのようです。
⑥ 勤務している弁護士事務所から了承を得る
独立する際は、所属する弁護士事務所から了承を得る必要があります。なるべく繁忙期は避ける、引き継ぐべき事件が少ない時に伝える、難しい案件が終わってから伝えるなど、適切なタイミングを見計らい、了承を得ましょう。
独立後も応援してもらえるような関係性を築いておけるとベストです。
弁護士開業後、仕事の取り方のコツ
開業後、仕事を得る方法として代表的なものは、以下の6ケースです。
1. 法律相談
弁護士会や市町村役場などに来た法律相談を受ける方法です。集客方法としては小規模で、大きな集客チャンネルにはなりにくいかもしれません。
2. 国選弁護
国選弁護人名簿に登録していれば、年に数回、国選弁護の案件が回ってきます。報酬額は高くありませんが、独立当初は貴重な事件獲得の機会となるでしょう。
3. 法テラス
法テラスに登録していると、法律相談が回ってきたり依頼者の紹介を受けられたりします。こちらも独立当初の弁護士にとっては貴重な事件獲得手段となるでしょう。
4. ホームページ
現代の弁護士集客チャンネルとして事務所のホームページを作成し、公開することは非常に重要です。集客に成功すると、法律相談が回らないくらい問い合わせが来るケースも少なくありません。独立したばかりでも、老舗の事務所に劣らないほどの案件数を受けられる可能性があります。
5. 異業種交流への参加
日本青年会議所、商工会議所の活動や異業種交流会に参加し、企業経営者とネットワークを持つことで、顧問弁護士としての仕事を獲得する方法もあります。
6. 個人ネットワーク
件数が大きく増えることはあまり期待できませんが、知り合いから紹介を受ける方法は地道ですが確実です。
弁護士事務所のオフィス選び。4つの方法とメリット
前述した通り、弁護士が開業する時に必要な初期費用の中で多くを占めるのは、オフィス賃貸に関連するもの。それだけ、オフィス選びは重要なポイントになります。賃貸オフィスを借りる以外にも開業の方法はいろいろあります。ここでは4つの選択肢とそれぞれのメリットや注意点を説明します。
1. 賃貸物件を借りる
賃貸物件を借りるのはもっともオーソドックスな手法です。
・メリット
自分だけのオフィスを持てる点。場所や広さ、アクセスを考慮して好きな物件を選ぶことができ、また家具や内装も自由に選び、レイアウトできます。
・注意点
敷金や保証金、オフィス家具やOA機器といった環境を整えるための初期費用が高額になります。立地の良い場所は賃料が高くなり、ランニングコストも押しあげてしまいます。
独立当初はなるべく初期投資や月々の経費を抑えることが望ましいので、賃貸オフィスを借りる際のデメリットをよく吟味しましょう。
2. 自宅開業
手っ取り早く開業できるという点で、自宅で開業する弁護士は少なくありません。
・メリット
自宅開業なら、費用や手間がほとんどかかりません。必要な事件記録を自宅に運ぶだけで完了。自宅を事務所にする場合、家賃や水道・光熱費の一部を経費に計上できるのもメリットです。
・注意点
ただ事務所の住所は公開されるため、プライバシーが大きく害される可能性があります。トラブルに巻き込まれないともいい切れません。また、自宅兼弁護士事務所では顧客からの信頼はあまり得られないと考えていいでしょう。
3. レンタルオフィスを利用する
レンタルオフィスを活用するケースもあります。レンタルオフィスとは、オフィス家具やインターネット環境が揃っているオフィススペースを借りるサービスのこと。
・メリット
賃貸物件と違い、オフィス家具やOA機器などを自分で揃える必要がありません。水道光熱費も含まれているうえ、賃貸物件のような敷金や礼金は不要で、保証金を求められる場合でも低額なため、初期費用を大幅に抑えることが可能です。
・注意点
事務所の備品や内装は始めから用意されていますが、事業者によっては自分の好きなように内装を変更したり、レイアウトすることができない場合があります。収容人数についても、10名程度までの小規模オフィスが多く、20〜50名などの大規模な事務所経営に適する物件は数が限られてしまいます。また、レンタルオフィスは他企業と共有するスペースもあるため、安心・安全を優先したい場合は、セキュリティを徹底したレンタルオフィスを選ぶといいでしょう。
4. 友人の事務所を間借りする
弁護士として独立した友人がいる場合、間借りさせてもらえるケースもあります。
・メリット
友人のオフィスであれば、無料や低額な賃料で使わせてもらえるでしょう。初期投資やランニングコストを抑えられるメリットがあります。
・注意点
他人の事務所を使わせてもらうと、肩身は狭いものです。せっかく独立したのに、人に遠慮する環境ではあまり意味がありません。間借り期間は短期とし、いずれは賃貸オフィスやレンタルオフィスを借りて本当の意味での独立を果たしましょう。
独立弁護士が利用するサーブコープのレンタルオフィス
いかがでしたか。弁護士が独立開業するメリットや失敗しがちなケース、失敗しないためのポイントをお伝えしました。弁護士が独立する際、初期費用として大きな負担になるのがオフィス選び。賃貸オフィス、自宅、レンタルオフィスどれを選ぶかで、それぞれメリットも注意点もありました。
国内5都市に26拠点を展開するサーブコープは、多くの独立弁護士にご利用いただいています。すべての拠点はビジネス一等地にあり、ビルもハイグレード。トレーニングを受けた秘書が受付や電話対応をするため、顧客から得られる信頼性も高く、弁護士としても好印象につながると好評をいただいています。サーブコープのレンタルオフィスにご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。
(※1) 日本弁護士連合会|近年の弁護士の実勢について
(※2) 東京弁護士会|東京 独立開業する。〜独立開業マニュアル東弁版〜第2版
監修・福谷陽子
元弁護士のライター。専門的な法律知識を活かしながらビジネス法務や不動産関係、個人の法律問題などについて執筆・監修。多数のサイトに記事を提供し、幅広く活躍している。