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フリーアドレスとは?メリット・デメリットと失敗しない導入方法を解説

フリーアドレス

フリーアドレスの導入に興味がある一方、自社に適しているか不安を抱いている方も多いかもしれません。フリーアドレスは部署の垣根を越えたコミュニケーションが活発になる一方、誰がどこにいるかわからない、集中して作業がしづらいといったデメリットがあることも事実です。

そこで、今回の記事では失敗せずにフリーアドレスを導入するためのコツや手順についてご紹介します。

フリーアドレスとは

フリーアドレスとは従業員が自分の固有デスクを持たず、業務内容に応じて柔軟に就労場所を変えられる形式のことです。1987年に清水建設の技術研究所で試験的に導入されたことがきっかけで誕生しました。当時はペーパーレスやモバイル化が進んでおらず、思うように世間に浸透しなかったものの、近年では技術の進歩と共に導入する企業が増えつつあります。

また、当時はコスト削減を主目的として推奨されたフリーアドレスですが、昨今ではコスト削減のみならず「社員間コミュニケーションの促進」を期待して導入するケースも増えています。

フリーアドレスのメリット

フリーアドレスのオフィスで仕事をする人たちの画像

フリーアドレスの主なメリットは以下の4つです。

メリット
●     社内コミュニケーションの活性化
●     スペースの有効活用とコストの削減
●     情報漏えいリスクの低減
●     社内美化の促進

ひとつずつご紹介します。

社内コミュニケーションの活性化

フリーアドレスを導入すると、普段あまり話す機会がない人と関わる機会が自然と増えることが期待できます。研修や社内でのイベントも部署やチームを横断した交流の機会ではあるものの、そう頻繁に行われるものではなく、会話のほとんどがその場限りで終わってしまいがちです。

フリーアドレスであれば、業務上接点の少ない社員と近い距離で仕事ができるほか、部署や部門による垣根を越えたコミュニケーションが生まれます。

また、単なる交流だけに留まらず、お互いの担当業務についてアドバイスをしあう、アイディアを出し合うといった関係性に発展することもあるでしょう。各部署が持つ知識や情報の共有が容易であり、新しいアイディアが生まれやすいほか、生産性の向上も期待できます。

スペースの有効活用とコストの削減

リモートワークを導入している企業がフリーアドレスを利用する場合、必ずしも社員全員の固定席を必要としないためスペースの有効活用が可能です。また、人事異動の際に座席レイアウトを変更する手間を減らせるほか、中長期的に見てコストの削減にも繋がります。

省スペースを実現できるのに加え、空いたスペースを有効に活用するのもひとつの手です。例えばコミュニケーションエリアなどに活用することによって、部署内での活発な意見交換が期待できるのはもちろん、新たなアイディアも生まれやすくなります。

情報漏えいリスクの低減

フリーアドレスの導入によって社内美化が促進されることに伴い、情報漏えいリスクを減らせます。例えば、自分のデスクに書類を保管する形式では書類管理が各人に委ねられるため、どうしても紛失や破損といったリスクが高くなりがちです。

フリーアドレスの導入によって電子化が促進され、紛失・盗難を防ぐことが期待できます。

社内美化の促進

不特定多数の人でデスクを共有して使用すると、自席に書類や私物を保管しておくことができません。よって、社内美化の促進に繋がります。

また、片付けの手間を減らすために書類の電子化に取り組む人も増えるでしょう。その結果、文書量の削減はもちろん保管スペースや保管するための備品(ファイルやキャビネットなど)も少なくなり、コスト削減も期待できます。

フリーアドレスのデメリット

コワーキングスペースの画像

フリーアドレスではさまざまなメリットが見込める一方で、次のようなデメリットもあります。

デメリット

●     誰がどこにいるのか把握しづらい
●     導入コストが生じる
●     集中して作業がしづらくなる恐れがある
●     座席が固定化してしまうケースがある
●     帰属意識や愛着心が希薄化する

誰がどこにいるのか把握しづらい

フリーアドレスでは対象の人物に直接会って話がしたい場合、探し歩く手間が生じます。席が固定されていれば、座席表をもとに本人を訪ねられますがフリーアドレスでは難しいでしょう。

着席のルール決めを社内で検討し、利用している座席を可視化する方法が必要になります。加えて、席を自由に移動しても業務に対応できる仕組み作りを進めることが大切です。また、状況に応じてツールやシステムの整備も進めましょう。

導入コストが生じる

フリーアドレスの導入にあたっては、次のようなコストが生じる可能性があります。

  • ネットワークLANの無線化
  • オフィスのレイアウト変更に伴う工事費
  • 書類や備品を管理するためのロッカー・キャビネットなどの導入費
  • 勤怠管理ツールの整備・導入
  • 携帯やパソコンをはじめとした電子機器の整備

フリーアドレスを導入する前にどの程度の規模で行うのか、それに付随してどういった整備が必要なのか、費用対効果は見合っているのかなど、コストを踏まえた上で比較検討することが欠かせません。

集中して作業がしづらくなる恐れがある

フリーアドレスはその性質上、隣に座る人はもちろん周辺メンバーも日々、異なります。そのため、中には気が散ってしまい作業に集中しづらいと感じてしまう人がいても不思議はありません。特に従来のやり方に慣れている人ほど、環境の変化に対応できない恐れがあります。

フリーアドレスの導入が業務効率低下の一因とならないよう、オフィスレイアウトを工夫することはもちろん、オープンスペースとプライベートスペースのすみ分けをするなどの対策を講じるようにしましょう。

座席が固定化してしまうケースがある

フリーアドレスを導入したからといって、席が固定化しないわけではありません。中には「気の合う社員同士で近くに座りたい」「プリンターに近い席が良い」といった理由で、一部社員の席が固定化してしまうケースがあります。

フリーアドレスは部署によって向き・不向きがあることに加え、ただ導入するだけでは思っているように浸透しないケースがほとんどです。まずは試験的に一部のスペースで導入してみる、社員の意見も聞きながら自社に合うように運用ルールを見直すといった対策が必要です。

帰属意識や愛着心が希薄化する

フリーアドレスを導入することで部門や部署を超えたコミュニケーションが活発になる一方、帰属意識や愛着心が薄れる恐れがあります。その理由として部署単位、チーム単位での結束力を感じにくく、コミュニケーションも不足しがちになることが挙げられるでしょう。

週に一度は部署やチームで近くの座席に座るようにする、定期的にチームミーティング・部署内ミーティングを行うといった仕組み作りを心がけましょう。チームとしての現状や目標を共有し合う場を設けることを意識し、全体の士気が低下しないように工夫を凝らすことが大切です。

フリーアドレス導入に失敗する企業、部門の特徴

フリーアドレスの導入に失敗する企業や部門、職種の特徴として、以下のような例が挙げられます。

  • 紙ベースでのやりとりが多い
  • 部署と従業員が固定されており、人事異動が少ない
  • アナログな考え方が根強く、固定席での業務を基本としている
  • 公共性の高いデータや機密性の高いデータを多く扱っている
  • 社員数が多い、在席率が高い
  • エンジニアやクリエイターなど、使い慣れているアプリやツールが必要
  • 居場所がわからないと不便を感じる(総務部、経理部などの管理部門)

フリーアドレスが失敗する要因として、「ペーパーレス化が進んでいない」「固定電話をメインで使っている」といったことが考えられます。また、社内外から問い合わせを受ける部署や高いセキュリティが求められる重要データを取り扱う部署も、どちらかといえば固定席での仕事が適しているでしょう。

フリーアドレス導入の失敗例

失敗する企業の特徴について理解したところで、フリーアドレス導入の失敗例についていくつか取り上げてみました。

・フリーアドレスを導入した意図が社員に伝わりきらなかった

行き当たりばったりの思いつきでフリーアドレスを導入しただけでは、思うように社内に浸透しないでしょう。フリーアドレスを導入した意図や目的、導入後の運用方法などを社員に周知することが大切です。また、社内でもフリーアドレスの導入によってどういった社内環境を整えたいのか、具体的なイメージを導入前にすりあわせておきましょう。

・OJTなど新人の指導がしにくく、業務に支障が出た

フリーアドレス環境下では従来と異なり、同じ部署やチームの人が常に側に座っているわけではありません。そのためOJTをはじめとした新人の指導やフォローがしにくく、結果として業務効率が低下するケースも多く見受けられます。

そのため、上司が部下の仕事の進捗を確認するための社内フローを整備するほか、状況に応じてフリーアドレスとは別の作業スペースを設けるといった対策を講じるようにしましょう。

・雑談が目立つようになった

自分が好きな場所を選んで仕事ができるとはいえ、次第にいつも同じメンバーが近くに固まってしまいがちなのもフリーアドレスでよく挙がる悩みのひとつです。座席が固定化してしまっては、フリーアドレスを導入した意味がありません。

定期的に社員の意見を取り入れ、必要に応じてフリーアドレスの運用ルールを見直すことが大切です。

・書類の管理が煩雑になった

フリーアドレスでは社員が各自のデスクで書類を管理できず、書類の保管場所に困ってしまうケースが散見されます。紙ベースでのやりとりが多い部署であれば、席を移動する度に書類を持ち運ぶ手間が生じるでしょう。

書類の管理が曖昧になってしまうと、書類の紛失や書類漏れのリスクが上がってしまいます。事前に書類の電子化を進めておく、作業途中の書類や私物を管理するためのキャビネット等を手配するといった対策を講じることをおすすめします。

・セキュリティ対策が十分に講じられなかった

フリーアドレスでは社員の座席が毎日変わるため、あまり面識のない他部署の人と仕事を共にする機会が必然的に増えても不思議はありません。目が行き届く中小規模のオフィスであればそれほど問題はありませんが、規模が大きい会社の場合、オフィスにいる人が社内の人なのか否かを判断しづらくなる恐れがあります。

そのため、会社全体のセキュリティ対策を今一度見直すことが大切です。具体的には入退出社の管理システムを設けるほか、常に社員証を携帯してもらうといった策も有効でしょう。

失敗しないフリーアドレスの導入方法

導入のステップ

ここまでフリーアドレスの導入に失敗しやすい企業の特徴や失敗例について解説しました。それらを踏まえた上で、ここでは失敗しないフリーアドレスの導入方法についてお伝えします。

フリーアドレス導入の手順

  1. 在席率の調査など導入可否を判断する
  2. 導入イメージやゴールを具体化する
  3. 社員に周知し、フリーアドレスへの理解を得る
  4. 試験的に導入する
  5. 運用ルールを決め、導入の本格化に向け動く

STEP.1 在席率の調査など導入可否を判断する

まずは自社にフリーアドレスの導入が適しているのかどうか、しっかりと検討して判断することが大切です。

その際、「在席率」をもとに考えてみるとよいでしょう。在席率が高い場合、フリーアドレスを導入してもそこまで大幅な改善は見込めません。そのため、部署ごとに在席率を把握するほか、いざ試験導入をすることになった時には在席率をもとに必要な席数についても目安を出しておくことをおすすめします。

STEP.2 導入イメージやゴールを具体化する

次に、フリーアドレスを導入してどういった働き方を目指すのか、どの範囲に適用するのかを明確にしましょう。この際、できる限り具体的にイメージに落とし込むことで失敗するリスクを減らせます。

STEP.3 社員に周知し、フリーアドレスへの理解を得る

このタイミングでフリーアドレスの導入を考えていることを社員にも周知しましょう。現場社員と意識のすりあわせを行うことはもちろん、メリットとデメリットを提示して理解を得ることも大切です。

STEP.4 試験的に導入する

ある程度イメージがまとまったら、トライアルといった形でフリーアドレスを導入してみましょう。あらかじめいくつかの仮説を立てておき、実証しながら進めていくことで頓挫してしまうリスクを減らせます。

また、いきなり大規模なトライアルを実施してしまうと万が一の際に業務に支障が出ることも考えられるため、まずは小規模なものから試していくとよいでしょう。

STEP.5 運用ルールを決め、導入の本格化に向け動く

ここまできたらオフィスのレイアウト設計や、運用ルールの制定を進めましょう。全フロアにフリーアドレスを導入するのか、一部に導入するのかによってレイアウトはもちろん細かなルールも変わってきます。社員の意見も織り交ぜながら、フリーアドレス導入後の運用法について定めていきましょう。また、制定した運用ルールは必要に応じて社員が見返せる場所に保管しておくことが大切です。

導入した後も都度見直しを行い、自社にあったフリーアドレスに整えていくことを心がけましょう。

働き方の変化に伴い、オフィスの活用方法も変化している

働き方改革やコロナ禍での緊急事態宣言など、既存の働き方を見直す機会が多かった昨今。働き方の変化に伴い、オフィスの活用方法が変わってきています。

フリーアドレスの導入によって多様な働き方ができるほか、既存オフィスの業務効率化が見込めます。一方で導入にあたっては向き・不向きがあるほか、デメリットを理解した上で対策を講じていくことが大切です。

新しい働き方にあわせたオフィス活用を考える

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