日本人が12年連続受賞! 奇抜すぎる研究で科学のおもしろさを伝える、イグ・ノーベル賞とは?
秋が深まる頃、ニュースになるのがノーベル賞です。物理学・化学・生理学・医学・文学・平和・経済学の6つの分野で優れた功績を残した人物に贈られ、毎年、日本人の受賞に期待が寄せられています。また、最近話題になっているのが、ノーベル賞のパロディー版ともいわれる「イグ・ノーベル賞」です。今回は、このユニークなイグ・ノーベル賞についてご紹介します。
「人々を笑わせ、そして考えさせる研究」に贈られる「イグ・ノーベル賞」
イグ・ノーベル賞の名前の由来は、「ignoble(イグノーブル/不名誉な)」と「ノーベル」をもじったもの。アメリカのユーモア科学誌「Annals of Improbable Research(風変わりな研究年報)」の編集長マーク・エイブラハムズ氏が、「人々を笑わせ、そして考えさせる研究」に対して与える賞として、1991年に創設しました。授賞式は毎年9月頃開催され、日本でも話題となっています。
ユニークなのは授賞式のオープニングから。舞台に立った人めがけて観衆が一斉に紙飛行機を投げつけます。さらに授賞式に出席するための旅費や滞在費は自己負担。スピーチでは笑いを取らなくてはならず、受賞者は高い笑いのスキルが求められます。本家ノーベル賞の受賞者やハーバード大の教授たちも、表彰をサポートしているのだとか。
日本はイグ・ノーベル賞の常連国って知ってる?
イグ・ノーベル賞の27年の歴史の中で、日本は1995年から12年連続で受賞。アメリカ、イギリスに次ぐ多くのイグ・ノーベル賞受賞者を輩出しています。イグ・ノーベル賞創設者のマーク・エイブラハムズ氏は、「日本とイギリスは、奇人変人であることを誇りとする国だから、受賞者が多い」と分析しています。
日本人で一番はじめにイグ・ノーベル賞を受賞したのは、創設翌年の1992年。資生堂の研究員が「足の匂いの原因となる化学物質を特定」し、医学賞を受賞しました。その後も、2007年にはウシの排泄物からバニラの香り成分「バニリン」を抽出したことにより化学賞を受賞する等、まさにユニークな研究ばかり。また2005年にはあのドクター中松氏が34年間、自分の食事を写真に撮り、食べたものが脳の働きや体調に与える影響を分析した研究で栄養学賞を受賞しています。
2018年のイグ・ノーベル賞受賞者は?
2018年のイグ・ノーベル賞授賞式は、日本時間9月14日にアメリカのハーバード大学サンダースシアターで行われました。受賞研究は「座った状態で大腸内視鏡検査を自分1人でやる」というもの。大腸内視鏡検査は、専用機械を大腸に挿入するため、寝そべって行われるのが一般的ですが、新しい方法として、小児患者に対して座ったまま行える方法を開発したというのが今回の論文の要旨です。
受賞スピーチの制限時間は全員たったの60秒。制限時間をすぎると、8歳の女の子、ミス・スウィーティー・プーが現れ、「もうやめて!飽きちゃったわ!」と連呼します。これはお決まりの演出で、受賞者たちは女の子にキャンディを渡すなどの工作をして、スピーチを続けます。今年も堀内先生のスピーチの途中でミス・スウィーティー・プーが現れたのをニュースで見た方も多いのではないでしょうか。
イグ・ノーベル賞は新たな発想の源
イグ・ノーベル賞を受賞するには、誰も思いつかないようなおもしろい研究でありながら、きちんと考えさせることが必要です。イグ・ノーベル賞は、科学とは何かを考えるきっかけを、ユーモアと共に私たちに与えてくれます。研究者たちのユニークなアイデアを前にすると、ビジネスの発想も柔軟に生まれてくるのではないでしょうか。少し考えが凝り固まったり、行きづまった時に、イグ・ノーベル賞の研究に触れてみるのもいいかもしれません。
<公式サイト>Improbable Research1(Ig Nobel Prize winners)