リース契約とは? レンタルとの違いやメリット・デメリット、解約についての注意点を解説
リース契約は、ビジネスに必要な設備や備品を調達する場合において頻繁に利用される取引形態です。
リースを活用することで、購入する場合に比べてまとまった支出を避けることができるため、資金繰りが安定しやすくなるなど、数多くのメリットがあります。
本記事では、リース契約の仕組みや種類、メリット・デメリットに加え、レンタルや割賦販売との違いなどについても解説します。
リース契約とは? 仕組みを解説
リース契約とは、ユーザーが事務用品や機械設備を購入するのではなく、リース会社がそれらを購入し、ユーザーからリース会社へ毎月利用料を支払うことで、一定期間にわたって必要な物件を借りる仕組みのことです。
具体的には、リース会社はメーカーなどの販売会社から売買契約によって対象物件を購入し、ユーザーはリース会社とリース契約を締結するという3者間での取引形態となります。
なお、リース契約の対象物件としては、複合機や電話機などのOA機器や、パソコンやサーバーなどのIT機器、車両や工場用の機械設備など多岐にわたっています。
リース契約を利用している企業の割合と理由
リース事業協会が公開している「リース需要動向調査(2020年)」(*1)によると、リースを利用している企業の割合は87.6%にも上り、その理由の多くは「設備導入時に多額の資金が不要である(75.1%)」「コストを容易に把握できる(54.4%)」「事務管理の省力化が図れる(52.5%)」などでした。
利用設備で多かったのは「情報通信機器(80%)」と「自動車(57.5%)」「ソフトウェア(50.4%)」で、他を大きく引き離し、トップ3にランクインしています。
参照:(*1)公益社団法人リース事業協会|リース需要動向調査報告書
リース契約とレンタル契約の違い
リース契約と似たものにレンタルがありますが、レンタルの契約期間が「日」「週」「月」単位であるのに対し、リースは6カ月〜数年以上と長期になる場合がほとんどです。
その他にも、契約期間が長くなる分、リースの利用料金はレンタルよりも割安に設定されているなどの違いもあります。また、レンタルと言えば一般的に車やDVD、最近ではレンタルスペースがよく知られていますが、エアコンや冷蔵庫といった業務用の設備機器のレンタルもあります。
レンタルの場合は、レンタル会社があらかじめ購入したものをユーザーが利用しますが、リース契約はユーザーが希望する機械設備などをリース会社が代わりに購入し、それをユーザーに貸し出すという違いがあります。
リース | レンタル | |
契約期間 | 中~長期 | 短期 |
対象物件 | ユーザーが希望する物件をリース会社が購入して賃借 | レンタル会社の在庫から選択 |
中途解約 | 原則不可 | 可能 |
物件の所有権 | リース会社 | レンタル会社 |
保守・修繕義務 | ユーザー | レンタル会社 |
料金体系 | 物件価格×リース料率 | 一定の料金設定 |
契約満了後の取扱い | 返却または再リース | 返却または契約延長 |
リースと割賦販売の違い
割賦販売とは、物品や設備などの購入代金を分割払いすることであり、リース契約のような「借りる」という取引形態とは異なります。
割賦販売については、車両や機械設備などの金額の大きな資産に用いられることが多く、一定期間にわたって支払いを分割できるという点ではリース契約と同様です。割賦販売における取引の流れとしては、まず信販会社等がユーザーに代わって購入代金を支払い、ユーザーは信販会社等に対して債務を分割返済します。
なお、所有権については返済が完了するまでは信販会社等に留保され、債務を完済することでユーザー側へ移転するケースが一般的です。
リース契約の種類は2つ
リース契約は大きく下記の2種類に分けられます。
- ファイナンスリース
- オペレーティングリース
それぞれの違いも確認しておきましょう。
①ファイナンスリース
ユーザーが希望するものをリース会社が代わりに購入し、賃借する形態のこと。
ファイナンスリースの主な特徴としては、以下2点があげられます。
- ノンキャンセラブル
- フルペイアウト
「ノンキャンセラブル」とは、ファイナンスリースが中途解約できない契約であることを意味します。
リース会社はユーザー側の希望に基づいてメーカーから物件を購入するため、中途解約は原則不可とされています。万が一中途解約する場合には、違約金として未経過リース料相当額を負担しなければならないなどの制約が設けられるため、リース契約を締結する際には契約期間にも注意しましょう。
「フルペイアウト」とは、購入代金だけでなく、諸費用についてもユーザー側が負担することを意味します。
ファイナンスリースの場合、本来ユーザーが購入代金を一括で支払うべきものをリース会社が一旦立て替えたうえで賃貸するという性質から、リース料には購入費用に加え、利息や損害保険料、固定資産税相当額などが含まれるケースが多いです。
なおファイナンスリースには契約満了時に所有権がユーザーに渡る「所有権移転ファイナンスリース」と、所有権が移らない「所有権移転外ファイナンスリース」があります。
国内におけるリース契約のほとんどが、この「所有権移転外ファイナンシャルリース」に該当します。
所有権移転ファイナンスリース
「所有権移転ファイナンスリース」とは、リース期間が満了した際に、対象物件の所有権がリース会社からユーザーへ移転する契約をいいます。
したがって、リース期間経過後もユーザーは自らの資産として、引き続き対象物件を利用し続けることが可能です。
所有権移転外ファイナンスリース
「所有権移転外ファイナンスリース」とは、リース期間が満了した場合に、対象物件の所有権がリース会社からユーザーへ移転しない契約をいいます。
したがって、リース期間経過後においては、ユーザーは対象物件を返却するか、再リース料を支払う必要があります。
②オペレーティングリース
一方、オペレーティングリースは、中古市場で公正市場価格が見込まれる機器や設備の将来の価値をリース会社が負担することで、ユーザーに安い金額で貸し出せるリースの仕組み。
契約期間を自由に設定できたり、リース満了後には買い取りを選択することも可能だったりと、ユーザーにとって契約のハードルが低いのも特徴です。
リース契約の5つのメリット
次にリース契約を利用する5つの代表的なメリットを紹介します。
- 初期費用が抑えられる
- 資金計画が立てやすい
- 最新の機器・設備が利用できる
- 管理事務手続きがの簡略化できる
- 費用を経費として処理できる
※以降、リース契約の中でも取り引きの多数を占める「所有権移転外ファイナンシャルリース」を基に解説します。
①初期費用が抑えられる
業務用の機器や設備はいずれも高額なものが多く、数が必要な場合は特に財務面を圧迫します。
その点リース契約なら、一度に多額の資金を失うことなく、月々のリース料金で必要な設備を導入することができます。
②資金計画が立てやすい
月々のリース料金や契約期間は契約締結時に決まります。
5年、10年といった中長期の資金計画を立てられるため、キャッシュフローが安定し、損益分岐点の把握もしやすくなります。
③最新の機器・設備が利用できる
機器や設備が古くなると業務効率にも影響が及ぶ他、競争力が低下する可能性も。リース契約なら、契約期間さえ終われば、常に最新のモデルや設備をリースすることができます。
したがって、契約時は法定耐用年数より短い期間内で契約することをおすすめします。
④管理事務手続きが簡略化できる
機器や車などを購入すると固定資産税の申告納税手続きはもちろん、保険の付保、廃棄する際の処理手続きなどが発生します。
一方でリースの場合は、こうした事務処理はリース会社が行うため、事務手続きの負担が減ります。
⑤費用を経費として処理できる
ユーザーが支払うリース料については経費処理が可能であり、毎月の経費計上額が均一化することで収入とのバランスも確保しやすくなります。
なお、「所有権移転ファイナンスリース」や「所有権移転外ファイナンスリース」「オペレーティングリース」によって会計処理の取扱いが異なるため、契約締結の際には会計処理についても事前に確認しましょう。
リース契約の4つのデメリット
メリットも多いリース契約ですが、知っておいた方がいい注意点も。リース契約のデメリットをあらかじめ確認し、リスクを回避しましょう。
①中途解約ができない
リース期間中に解約することはできません。これは税法上の取り決めで禁止されています。
例外的に中途解約が認められても違約金が発生し、残りのリース期間に支払うはずだった料金の総額を支払うことになります。
②リース料金が高額になる
リース料金には手数料や動産総合保険、税金などが加味されているため、自社で購入するより総額が割高になるケースが多く、いざ払い終えてみたら「購入した方が良かった」と後悔するケースもあります。そうならないように、損益分岐点を確認したうえで契約期間を決めるといいでしょう。
③所有権がない
リース取り引きの主流である「所有権移転外ファイナンシャルリース」の場合、どれだけ長く使用しても、所有権がユーザーに渡ることはありません。
車や医療機器など、将来的に自社の資産になり得るものは、所有権移転ファイナンスリースや割賦契約の活用も検討しましょう。
④故障や破損などの責任を負う
リース期間中に対象となる機器や設備が故障、あるいは破損した場合、修繕やメンテナンス費用はユーザーが負うことになります。
そのため、せっかくコストを抑えるために利用したにもかかわらず余計な支出が発生する場合も。トラブルの起きやすいリスクとして頭に入れておきましょう。
実際には、ユーザーが前述した動産総合保険とは別に保守料を支払い、点検や整備、故障の修理などをしてもらうケースが多いようです。(*2)
レンタルのメリット・デメリット
レンタルの場合にもメリットやデメリットがあります。リース契約の場合と比較し、どちらが適しているか検討しましょう。
レンタルのメリット
レンタルの場合のメリットについては、主に以下の3点があげられます。
①中途解約ができる
リース契約とは異なり、レンタルでは中途解約が可能な場合が一般的です。ただし、その場合でも違約金が発生するケースもあるため、契約内容には注意しましょう。
②短期で利用できる
レンタルの場合、リース契約よりも短期間での契約が可能です。また、契約期間満了後は返却するため、保管場所の確保も不要であり、気軽に利用できます。
③保守・保全が不要
レンタルでは、保守・保全義務はレンタル会社側にあります。したがって、レンタル物件に不具合が生じた場合には、一般的に無償で修理などを受けることが可能です。
レンタルのデメリット
レンタルを検討する場合には、以下のようなデメリットについても正しく理解しましょう。
①選択肢が限られる
リース契約では、ユーザーが求める物件をリース会社が購入しますが、レンタルの場合には、元々レンタル会社が保有する在庫の中から物件を選ぶため、必ずしも希望するものが見つかるとは限りません。
②短期ゆえに割高になることがある
レンタルの場合、短期間であれば割安になるケースが多いですが、リース契約のように中・長期にわたって賃借する場合には、リース契約よりも割高になる可能性があります。
リース契約の基本的な流れ
リース契約をスムーズにするため、利用時の基本的な流れをここでまとめておきます。実際にはリース会社によって多少違いがありますが、参考としてご覧ください。
① 機器・設備などの決定
リース契約で利用したい設備や物件などを選びます。
② リース会社の決定
リース契約を締結したい会社を選びます。リース会社によって取り扱っているものや費用に違いがあるので十分に調べましょう。まずは複数社に見積もりを依頼し、それらを比較して決定するといいでしょう。
③ リースを申し込む
契約したいリース会社が見つかったら、リースを申し込みましょう。インターネット上から申し込めるリース会社もたくさんあります。
なお、リース会社にもよりますが、申込時には財務諸表や税務申告書の写しなどの書類提出が求められます。
④ リース契約を締結
リースの申し込み後は審査が行われ、通過すればリース契約を締結できます。リース会社から審査通過の連絡を受けたら、所定の手続きにしたがってリース契約を結んでください。
なお、多くの場合、契約時には登記簿謄本や印鑑証明書といった書類の提出が必要です。
⑤ リース物件の売買契約の締結
リース会社が物件をメーカーなどの販売会社へ発注し、その販売会社と売買契約を締結します。
⑥ リース開始
指定先へリース物件が届けられます。物件に不備や誤りなどがないか確認したら、借受証を発行してリース会社へ提出してください。これによって、リースが開始されます。なお、契約内容によっては、リース開始前に一部支払いを求められることもありますので、契約内容の細部まできちんと確認しましょう。
リース開始後は、所定のリース料金を毎月支払います。
レンタルオフィスでも得られる「リース」のメリット
オフィス家具やOA機器、ITインフラが完備しているレンタルオフィスも、リース契約と同様、一度に多額の資金を設備費用として使わずに、月々の利用料金で必要なオフィス設備を手に入れることができます。
最後に、レンタルオフィスを利用するメリットは下記があげられます。
- オフィス開設のコストが抑えられる
- オフィス家具やITインフラが整っている
- 月々の賃料を節約できる
オフィス開設のコストが抑えられる
賃貸オフィスの場合、入居時に支払う敷金や礼金、保証金などの負担が非常に大きいです。
一般的に賃料6~12カ月分の賃料を保証金として支払う場合が多く、それだけで数百万円単位の支出になります。
その点、レンタルオフィスは入居時に保証金を求められることがあっても賃料1~3カ月分程度なので、ベースとなる賃料自体が低いことから初期コストをかなり抑えることができます。
オフィス家具やITインフラが整っている
レンタルオフィスには、デスクやチェア、収納など、オフィスに必要な環境を完備しています。
ITインフラも自社で導入する必要がなく、Wi-Fiやプリンターなどを入居後すぐに利用することが可能。
申し込みや工事の立ち会いといった手間もかかりません。
月々の賃料を節約できる
例えば、ビジネス一等地として知られる東京・丸の内エリアでオフィスを賃貸すると、月々の賃料が坪単価4万円を超えることも珍しくありません。
そのエリアにオフィスを持つこと自体がハードルの高い選択になるでしょう。その点、丸の内にあるレンタルオフィスを選べば、月々の賃料を抑えながら、ビジネス一等地にオフィスを構えることが可能です。
他にも、受付や電話秘書代行サービス、庶務や経理などを任せられる秘書のいるレンタルオフィスを選べば、人件費の削減にもつながります。
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この記事ではリース契約について解説しました。
月々の利用料金のみで必要な機器や設備を使用できる点は、リース契約やレンタル契約の大きなメリットです。
一度に大きな資金が必要となる起業初期に、特に役立つサービスになるでしょう。
しかし、リース契約の場合は中途解約ができない、購入するより割高といった留意点があり、レンタル契約の場合は短期契約が可能な反面、利用料が割高になるというデメリットもあるのでそれぞれの強みを天秤にかけながら、よく検討しましょう。
オフィスの開設にも多額の初期費用がかかるため、オフィス家具やオフィス機器、ITインフラが完備したレンタルオフィスを月額料金で利用するというのも一つの方法です。
レンタルオフィスなら、サーブコープのサービスを検討されてはいかがでしょうか。
サーブコープのレンタルオフィスはエグゼクティブグレードの家具やシスコ製のIP電話機があらかじめ備え付けられています。ビジネスをスタートするのに必要な設備が入居したその日から利用可能です。その上、高速Wi-FiやITサポート、秘書サービス、会議室の利用や郵便・宅配物の管理、法人登記も可能と、ビジネスを進めるために必要なさまざまなサービスを用意しています。
参照:
(*1)公益社団法人リース事業協会|リース需要動向調査報告書
(*2)相談事例その3:リース物件の保守・修繕について
執筆・服部 大
服部大税理士事務所/ 合同会社ゆとりびと 代表社員。税理士、中小企業診断士。2020年2月、30歳の時に名古屋市内にて税理士事務所を開業。平均年齢が60歳を超える税理士業界の若手税理士として、税務顧問だけでなく、スポット税務相談やクラウド会計導入支援など、経営者を幅広く支援できるように奮闘中。執筆や監修業務も力を入れており、「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。