公式HP サーブコープブログ知識・ノウハウGoogleが社員研修に導入する「マインドフルネス」とは?専門家がビジネスに効果的な理由を解説!

Googleが社員研修に導入する「マインドフルネス」とは?専門家がビジネスに効果的な理由を解説!

 

NTTデータや丸井グループ、クラウド名刺管理サービスのSansanなど、日本企業でも導入事例が増えてきている「マインドフルネス」。GoogleやYahooといった名だたるグローバル企業が、社員のストレスマネジメントとして取り入れたことで、広く知られるようになりました。

なぜ、ビジネスにマインドフルネスが有効なのか。その理由を東京マインドフルネスセンター長の長谷川洋介さんにお聞きしました。前編では「マインドフルネスとは何か」をひも解き、後編ではビジネスパーソンでも簡単に取り入れられる実践法や便利な瞑想アプリを紹介します。

マインドフルネスとは?「今」に意識を向けるトレーニング

ーーまず、「マインドフルネス」の基本を教えてください。

マインドフルネスの本質は「気づくこと」にあります。人は、“過去に対する後悔”と“未来への不安”に頭も心も支配されがちですが、マインドフルネスは「今」この瞬間に起きている現実を意識しましょうという実践。簡単にいうと「意識をどこに向けておくのか」のトレーニングです。

瞑想の一種だと思われがちですが、正確にいうと「マインドフルネスストレス低減法」といい、瞑想やヨガ、ボディスキャンといった方法を用いた、心理学的治療の一つです。

ーー「今」に意識を向けるようになると、何が変わっていくのでしょうか。

今に意識を向けるということは、自分の心や体の状態がどうなっているのかに気づいてあげるということ。「あ、イライラしている」「怒っている」「呼吸が速い」「体がこわばっているな」といったように、まず、自分が今どういう状態にあるのかに気づくこと。そして、大切なのはその気づきに判断を加えないことです。

良い、悪いの判断を加えず、優しく受け止めることが「解放」の鍵

ーー気づきに「判断を加えない」とはどういうことですか。
分かりやすい例を挙げてみましょう。仕事でミスをしてクライアントに厳しく注意された人が、ドキドキ、ハラハラと心が落ち着かない状態にいるとします。自分を客観視できていれば、「今、心がドキドキしているな。呼吸も浅いし、頭の中もごちゃごちゃだ」ということに気づく。そこに「自分はダメだ」「私は悪くない」といった判断を加えずに、ただ「分かった分かった。よしよし」と、まるで母親が子どもを抱っこするように、自分を優しく受け止めてあげるのです。

こうしたトレーニングを続けていくと「間合い(※)」が生まれ、不思議と自分の感情を手放すことができるようになります。さきほどの例でいうと、心が平穏になればトイレなどでいったんブレイクを挟むことができるかもしれませんし、ミスをした原因や対処法を考える余裕も生まれます。

でも、自分の状態に気づかなければ、心が動揺したまま、仕事にも集中できず、頭の中ではクライアントを責めたり、自分を正当化したりするかもしれません。自分を客観視しないままの状態で仕事を続けるのと、その状態に気づき、何かしら対処をしたうえで仕事を続けるのでは、まったく違いますよね。気づいているか気づいていないかで、次に取る行動が大きく変わってくるのです。

自分の今の状態に意識を集中させる。たったこれだけ?と思うかもしれませんが、人の脳は雑念に気を取られやすいため、今に意識を向け続けることは実は難しいのです。会社でもできる実践法は後編でお伝えします。

(※)間合い・・・距離感、ころあい

マインドフルネスがビジネスに有効な3つのポイント

ーー長谷川さんは企業からの依頼で、マインドフルネスの研修や講演を行っているそうですが、ビジネスに有効な点は何だと思いますか。

一つ目は、ストレスを減らして鬱や燃え尽き症候群などの予防に役立てることができる点。二つ目は集中力を高めることで、業績アップにつながる点。三つ目は、クリエイティビティを育てることができる点。ビジネスに特化していうと、この3つが主な軸になります。最近は自衛隊や警察、学校でもお話しする機会が増えていて、マインドフルネスは業種や年齢に関係なく、幅広い層に取り入れられているのを実感しています。

ーー日本のビジネスパーソンの間でもマインドフルネスや瞑想を取り入れている人が増えているように感じますが、Googleなどのグローバル企業が導入したことも、急速に周知されてきた理由ですか。

もちろん、その影響も一因だと思いますが、マインドフルネスはもともと、米国マサチューセッツ大学のジョン・カバット・ジン博士が、ストレス低減プログラムとして医療に取り入れたことが始まりです。Googleが独自のマインドフルネス・プログラム(Search Inside Yourself)を開発するに至ったのも、マインドフルネスの効果が科学的に立証されてきたからです。

グローバル企業がマインドフルネスを導入する理由は「科学的立証」

ーーどんな効果があると科学的に認められているのでしょう。
大きく分けると5つあって、「ストレスの軽減」「脳の活性化」「痛みの緩和」「老化防止」「うつ病や不安症の改善」などです。脳は体重の2%しかないにも関わらず、体全体が必要とするエネルギーの20%を消費しています。それだけ活動量が多いので、疲弊しやすい。カーネギーメロン大学のデイビッド・クレスウェル准教授の実験により、マインドフルネスは前頭葉の一部である背外側前頭前野を活性化することが分かっていて、それが脳の休息に効果的であることが立証されています。

また、ハーバード大学は被験者を使った8週間の実験を行い、マインドフルネスが海馬や小脳、脳幹などの体積を増加させることを発見しました。記憶の形成や想起に大切な海馬が活性化することで、記憶力が高まり、柔軟な思考ができるようになるといわれています。

さらにジン博士は、うつ状態や不安症、パニック障害の人がマインドフルネスを行うと、不安が減少し、精神が安定するという治療効果を1992年に研究結果として発表しています。

「スマホ依存」で疲弊した脳を休ませましょう

米国では約1800万人が実践しているといわれているマインドフルネス。その背景には、インターネットやスマートフォンによって人々の暮らしが急激に変化したことも影響していると長谷川さんはいいます。

「スマートフォンという道具が表れて、これまでよりもさらに早く情報を探せるようになりました。決断を求められるスピードは飛躍的に速くなり、絶えずフル回転している状態の脳は、私たちが思うよりずっと疲弊しています」。マインドフルネスは脳をいたわる一つの方法でもあります。後編では、ビジネスパーソンが日常に取り入れやすいマインドフルネスの実践法や、すき間時間に利用できる便利な瞑想アプリをご紹介します。


参照『マインドフルネス瞑想の基本 DVD ブック』長谷川洋介監修


取材協力・長谷川洋介
東京マインドフルネスセンター長。法政大学経済学部卒。医学系学術雑誌の制作会社にて制作および管理職を経験した後、退社。マインドフルネスストレス低減法クオリファイドティチャー。鍼灸マッサージ師。ジョン・カバットジン博士「MBSRワークショップ」修了。

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