音楽フェスの「音楽以外の魅力」とは?地域活性から夏フェスを検証
CDが売れない、音楽雑誌の売れ行きは低迷と厳しい局面に立たされる音楽業界ですが、一方で「音楽フェス」は人気を着実に伸ばし、盛り上がりを見せています。季節によって夏フェス、秋フェスなどとも呼ばれ、ライブ音楽に触れることや、一緒に参加した人、あるいはその場で知り合った人々と音楽を楽しめることが音楽フェスの醍醐味といえます。
これから、夏フェスの本格シーズンが到来します。全国的に成功例が見られる音楽フェスの「音楽以外の側面」に着目して、音楽フェスについて考えてみましょう。
夏フェスを通じて地域の活性化
日本で行われるようになった音楽フェスは、海外のロック・フェスティバルに由来しています。1969年に厚生年金ホールにて第1回「日本ロック・フェスティバル」、日比谷野外音楽堂において行われた「日比谷ロック・フェスティバル」など、海外の隆盛に合わせて多くのロック・フェスティバルが日本でも行われてきました。
音楽フェスには多くの人が集まり、話題が生まれやすく広まりやすい場だと言えます。そんな場を最大限利用し、地域産業の活性化を目指そうという動きが近年強まっているのです。フェスの規模も毎年巨大化しており、生み出される大きな影響力は見逃せるものではありません。ここでは3つのフェスをピックアップしてご紹介します。
1.ライジングサン・ロック・フェスティバル
出典:https://rsr.wess.co.jp/2016/
RISING SUN ROCK FESTIVAL、通称RSR。1999年、日本で初めての本格オールナイト野外ロック・フェスティバルとして、北海道で開催されました。人々を集めて、さあ演奏を始めよう!……とはなりません。最初にやるべきは草刈りから。その後、電気を通し、水道を引き、ステージをつくり……と、手づくり感満載の時間が進んでいきます。手慣れた案内役や管理スタッフもおらず、すべて自分たちで考え、自分たちの手で作り上げたフェスなのです。
2015年8月の開催では、110組以上のアーティストが出演しフェスを盛り上げました。また、このフェスのレストランエリアのすごさはグルメの間でも超有名。60店舗ほどが設営され、北海道の「うまいメシ」が集中しています。北海道で実際に出店している店舗が腕をふるっているのだとか。なるほど、味の保障もばっちりですね。
2.長野 りんご音楽祭
2015年も松本市アルプス公園で行われた野外音楽フェス、「りんご音楽祭2015」(こちらは9月開催のため「秋フェス」になりますね)。2日間に及ぶフェスでの出演アーティストはなんと150組。特徴的なのは、全国区の有名アーティストだけでなく、地元をメインに活動するアーティスト、オーディションによって選ばれたアーティストたちが活躍できる場であること。「松本らしさ」を追い求めたい、地元を盛り上げたいという20代~30代の若い熱気があふれています。
3.京都大作戦
出典:https://www.sound-c.co.jp/kyotodai/16/
京都出身のロックバンド10-FEETが企画して行われる京都のフェス。京都の山城総合運動公園太陽が丘で開催されており、毎年約2万人を動員する京都の祭として定着しています。参加者の多くが「10-FEETのことが好き」という前提で集まるため、一体感が生まれ温かみのあるフェスになるとか。
周辺のホテルや飲食店をお客さんが利用するために地元の好況に影響を与えることはもちろん、イベント終了後のゴミの放置を防ぐ「ゴミゼロ運動」が実施されており、地元に対する愛情が見える点も魅力です。
成功の秘訣は、地域に深く根差し、地域を思いやっていること
フェスが地域のことを無視して「参加者だけで盛り上がりたい」という気持ちで開催されていたら。音楽好きだけが満足すればいいという、一部の利益を追うイベントであったなら。音楽フェスがこんなにも定着し、毎年繰り返されるということはなかったはずです。地域の活性化に大きく貢献し、地域もフェス開催のために力を注ぐ。そういった相互協力の関係があってこそ、大切な地域活性の役割を果たすことができていると考えられます。
フェスが注目されることにより、それまであまり取り上げられなかった隠れた名所が紹介されたり、一風変わったグルメが話題を巻き起こしたり。いわゆる直接的な「売り込み」ではなくとも、新しいビジネスが成り立つ数々のきっかけがあるのも確かなことです。近年、地方再生は非常に注目され、さまざまな活動が行われています。夏フェスはとくに成功している地方活性化の事例といえますが、フェスというスポット的な「点」のイベントから、地域と継続的に関わり「線」となっていくような取組みが今後はますます重要視されていくことでしょう。