【起業家たちのマイルール】日本初!「コーポレート・コンシェルジュ」。家庭の悩みは職場で解決する新しい企業インフラ
起業家たちを訪問取材するインタビュー企画。収入の変化、将来への不安、家族の理解…独立を決断する際、尽きない悩みをどう乗り越えたのか。それぞれの起業ヒストリーとビジネスを成功させる上で大切にしている“マイルール”をうかがいます。
Vol.4 コーポレート・コンシェルジュサービス「TPO」代表取締役
マニヤン麻里子氏
3歳から9歳までニューヨーク、21歳から24歳までパリで過ごす。一橋大学社会学部卒業、フランスHEC経営大学院修了。パリの雑誌系出版社にてグローバルマーケティングを担当。帰国後、仏ソシエテ・ジェネラル証券、米ゴールドマン・サックス証券会社などで金融商品開発や営業に従事。2016年、日本初のコーポレート・コンシェルジュサービス提供企業、株式会社「TPO」を創業。
業務は「従業員のプライベート相談に乗る」こと。日本初のサービスの正体
——TPOの提供するサービス内容を、詳しく教えていただけますか?
TPOが提供している「コーポレート・コンシェルジュ」は国内ではまだ珍しいサービスで、私たちが日本初です。具体的には、提携する企業内に専用のデスクを設置し、数名のコンシェルジュが常駐。企業で働く従業員の悩みをヒアリングし、プライベートをサポートします。
相談内容は家族に関することが多く、子どもの学校に関するものや産休の取りかた、出産の準備や保育園探し、介護の相談もあります。個人の習い事や旅行のプランニングなど、本当にさまざまですね。
いただいた内容はコンシェルジュが一度お預かりして、十数名のリサーチ・スペシャリストたちがそれぞれの専門分野を活かしてリサーチ。いくつかのプランをご提案するという流れになります。
大きな企業だと電通さんやNTTデータさん、サニーサイドアップさんなどに「コーポレート・コンシェルジュ」を導入いただいているほか、東京・丸の内ビルディング34階の「ザ・プレミアフロア丸の内」での運用も始まりました。フロアに入居する複数の企業さまにご利用いただけるサービスで、TPOとしても初の試みです。
「ライフ」と「ワーク」をどう融合させるかが問われる時代
——例えば必要な資料探しや会食場所の手配など、「仕事」に関する相談にも乗ってもらえるのですか?
基本的に、仕事に関する相談はお受けしていません。でも、仕事においてもこのサービスは間接的に役立つと思います。 仕事は限られた時間の中でいかに全力を注ぐかが大事ですが、仕事中にプライベートのことが気になると、スマホで調べ物もしてしまいますし、気が散って仕事に集中できません。
日本ではこれまで、家庭のことは専業主婦が担うというのが当たり前でした。しかし、時代は共働きになり、家庭のことだけを考えられる人がいなくなってしまったんです。家のことも充実させながら、気持ちよく仕事をする。これからは企業が、そのサポートを担う必要があります。
日本では「公私混同」がネガティブな言葉として使われてきましたが、共働きが当たり前となった今、「ライフ」と「ワーク」をどう融合させていくかが問われているのではないでしょうか。
——海外ではすでにこういうサービスがあるのですか?
この分野で一番進んでいるのはフランスだと思います。約20年前には、すでに「コーポレート・コンシェルジュ」が広まり始めていました。現在、上場企業のトップ40のうち6割以上がこのサービスを導入していて、オフィスビルのテナントに最初からついている場合も。ある意味、“インフラ化”しています。
当時のフランスでは大企業が倒産して会社の信頼性が揺らぐなか、スタートアップの立ち上げが目立ったりと、「起業家マインドが必要だ」という風が吹き始めた時代でした。働き方の多様性が求められる時代に入ったんですね。ちょうど今の日本がそういうタイミングなので、このサービスにニーズはあると思います。
起業のきっかけは「実体験」。仕事と子育ての両立に悩まされた日々
——マニヤンさんが起業したきっかけは何なのでしょう?
実体験ですね。かつては私自身も会社員として働いていたのですが、子育てが始まってからは「もっと仕事がしたいのに、できない」という状態に陥りました。子育て中の会社員をサポートしてくれるインフラやサービスがまったく見つからなかったんです。
フランスの会社や、米・仏・スイス企業の日本法人で働いた経験もありますが、子育てをしていた当時の上司たちはライフとワークを両立させていました。彼女たちの働き方を参考にしながら、日本ではどうやったらより働きやすくなるんだろうと考え、たどり着いたのが「コーポレート・コンシェルジュ」でした。
「心が強くないとダメ」。スタートアップ時の資金調達をどう乗り越えたのか
——起業も簡単ではないと思います。資金調達はどうされたんですか?
最初は自己資金を投じて、あとは個人投資家から2回にわたって投資を受けました。資金集めは確かに大変です。時間もかかる上に断られまくるので、心が強くないと。断られるたびにへこんでいたらきりがありません(笑)。企画書の中身も大事ですが、それ以上に自分の情熱に投資家が共感してくれるかどうかが大切。「コーポレート・コンシェルジュ」は今までにないサービスなので、ニーズがあることを理解してもらうのは特に大変でした。
「頼りまくる」こと。仕事をする上でのマイルールとアドバイス
——マニヤンさんにとって、仕事をする上での「マイルール」はありますか?
「頼りまくる」ってことですかね(笑)。とにかく、周りのスタッフに頼りまくる。もちろん自分でこだわりたいところはいっぱいあるので、そこは自分で引き受けます。でも、できるだけ積極的に権限を移譲、委任するようにしています。
私ひとりでは絶対にできないことがあるし、私が分かっていないこともたくさんある。そのことを理解しています。私に対する反対意見やアドバイスには柔軟でありたいとも思っていますし、常に新しい知識を取り入れたいとも考えています。
——最後に、これから起業を目指す人へアドバイスをいただけますか?
偉そうなことは言えませんが、信じられる人や一緒に頑張れる人を見つけることが大事だと思います。企業なら、個人では与えられない社会的なインパクトを与えることもできるし、一人では生み出せない価値を生み出すこともできます。だから、早いうちから人を巻き込んでほしい。他の起業家とつながるのもいいと思いますよ。
TPOの創業当初を支えたサーブコープの「バーチャルオフィス」とは?
TPOの起業当初、サーブコープのバーチャルオフィスサービスを利用していたマニヤンさん。まだ正式なオフィスがない時期に、営業や事業開発の拠点として活用されていました。
バーチャルオフィスは、オフィスや事務所を借りることなく、事業を行うにあたって必要な住所や電話番号などを利用できるサービス。サーブコープの場合は、丸の内や六本木、大阪・梅田などのビジネス一等地の住所を会社登記に利用できるほか、電話秘書代行や荷物転送、さらに、コワーキングスペースも毎日無料で利用することが可能です。
サーブコープのサービスを実際に利用している起業家や、企業のサテライトオフィスとして活用している利用者のインタビューはこちらからお読みいただけます。