公式HP サーブコープブログ働き方【起業家たちのマイルール】災害支援から介護へ。起業5年目でスタッフ100人規模「既存の当たり前を超えていく」

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【起業家たちのマイルール】災害支援から介護へ。起業5年目でスタッフ100人規模「既存の当たり前を超えていく」

    起業家たちを訪問取材するインタビュー企画。収入の変化、将来への不安、家族の理解…独立を決断する際、尽きない悩みをどう乗り越えたのか。それぞれの起業ヒストリーとビジネスを成功させるうえで大切にしている“マイルール”をうかがいます。

    Vol.6 株式会社「ぐるんとびー」代表取締役菅原健介氏
    中学、高校時代をデンマークで過ごし、大学卒業後はベンチャー企業で営業職として勤務後、理学療法士に転職。リハビリ病院在籍中に東日本大震災が発生、ボランティアで被災地入りし、コーディネーターとして活動。その後2015年に株式会社「ぐるんとびー」を起業し、日本で初めてURの団地の一室を利用した「小規模多機能型居宅介護」の事業所を運営。第6回 かながわ福祉サービス大賞 大賞受賞。

    団地の空き部屋を利用した「小規模多機能サービス」

    ―― 早速ですが、菅原さんが代表をつとめている株式会社「ぐるんとびー」について教えてください。

    2015年に神奈川県藤沢市でぐるんとびーを起業しました。現在、UR都市機構の団地を利用して小規模多機能型居宅介護や訪問看護ステーションを運営しています。
    小規模多機能型居宅介護とは、要介護者でも自宅での生活が継続できるよう支援する仕組みで、規模の小さな居住系サービス施設のことです。デイサービスをメインに、訪問介護やショートステイなども組み合わせ、在宅での生活支援や、機能訓練を行っています。
    施設の利用者は30人くらいで、訪問介護は約80人が利用しています。起業して4年たちますが、2020年にはカフェなどを併設した新しい施設を近隣にオープンする予定で、スタッフも100人規模に膨らむ予定です。

    2020年1月にオープンする新施設の看板をペイントする「ぐるんとびー」スタッフ

    ―― 団地を利用した介護施設は珍しいのではないですか?

    そうだと思います。ぐるんとびーはあえて団地に着目しました。団地は幅広い年齢層が暮らす集合体なので、コミュニティが生まれやすいんですよ。その中に介護施設があれば、みんなと一緒に生活を送っている感覚を持てる。そういう発想で団地内の小規模多機能を始めたんです。僕も家族と一緒にこの団地に引っ越してきました(笑)。

    ベンチャー企業の営業から介護職へ転身

    ―― もともとベンチャー企業の営業職に就いていたそうですが、どんな経緯で介護の道に進まれたのですか?

    大学卒業後、当時はまだ数の少なかったITベンチャー企業に就職しました。営業成績はMVPだったり、ビリだったりと両極でした。何千万円もの予算を持つ大企業を相手にした案件よりも、むしろ10万円の予算しかない、小さな会社や団体の熱い思いに燃えるタイプで(笑)。あぁ、自分は目の前にいる人が喜ぶ仕事をやりたいんだなぁということに気付き、2年後に退職しました。

    ―― 退職後はどうされたのですか?

    当時、お付き合いしていた女性の影響で理学療法士の学校に通い始めたんです。国家試験に合格して理学療法士の資格を取得後は、2009年から神奈川県内にあるリハビリ病院で介護の仕事に就きました。その2年後の2011年、東日本大震災が発生したんです。

     被災地でのボランティア活動がきっかけ

    菅原さんがボランティア活動で訪れた石巻市内の中学校(2011年当時)

    ―― 菅原さんは被災地支援に行かれたそうですね。

    母が被災地に看護師を派遣するボランティア団体を組織していたので、僕も手伝いに行き、現地で8ヶ月間ほどコーディネーターとして活動しました。

    僕らはとにかく目の前にいる人に手を差し伸べることを大切にしました。被災された人の話を聞いて回って、精神的に不安定な人がいれば漢方薬を渡したり、37度の熱が出れば、「明日の朝も熱が続くなら一緒に病院に行きましょうね」と伝えたり。精神的に落ち着かず寝られない人に、「温かいミルクを飲んで寝たらいいですよ」とアドバイスしたら、朝まで安心して寝られたというケースもありました。

    被災した人が必要としているのは医療行為だけじゃない、24時間365日、誰かに相談できるという安心感なんだということを実感しました。日本は地震や水害が多い国です。日頃から誰かに相談し合える社会にしておかないと、いざという時に支え合うことは難しいんですよ。その思いは「ぐるんとびー」の立ち上げにも影響しています。

    菅原さんが実践する「本人中心」のオリジナル介護論とは

    菅原さんと一緒にプールに入る利用者の女性

    ―― 被災地でのボランティア経験が起業につながったのですか?

     「みんなでつながれる社会」をどう作ろうかと考えていたときに、映画「ケアニン」のモデルにもなった福祉サービス施設を見学する機会があったんです。そこでは、広い敷地内に「小規模多機能システム」が設けられていて、認知症のおじいちゃんが子どもにまき割りや習字を教えていた。幅広い年齢層の地域住民が一堂に会する姿を見て、「小規模多機能は地域の拠点になるな」と確信したんです。

    ―― それで地域拠点としての「小規模多機能」を始めたのですね。

     2015年、僕が36歳の時に起業し、団地の一室で「小規模多機能ホーム『ぐるんとびー駒寄』」をスタートしました。僕が目指したのは2つ。ぐるんとびーを「みんなでつながれる社会」の地域拠点にすることと同時に、利用する皆さんの “やりたいこと”や自尊心を尊重することです。

    ある日、利用者のおじいちゃんが「プールに行きたい」と言い出しましたが、病院や家族は「危ないから」と止めました。日本の介護業界では珍しくありませんが、安全性を優先するあまり、歩くことさえ制限したり、果てには身体を拘束したりするケースまであります。

    「ぐるんとびー」では、危ないから止めるのではなく、どうすれば危険を減らせるかを考えます。ついに僕の説得に病院も家族も根負けし、プールに行けることになりました。そしたらプールにおじいちゃんの仲間たちが遊びに来ていたんですよ。「また飲みに行くぞ!」なんて声をかけられて、おじいちゃんは見たことのないような笑顔を浮かべていましたね。帰りには「俺はもういつ死んでもいい」なんて言ったりして(笑)。

    人は最後まで生きたいように生きる権利があります。それをやって失敗するかもしれないけど、失敗する権利だって僕はあると思っています。自尊心を大切にする本人中心の介護を忘れてはいけないし、「ぐるんとびー」では最後まで楽しく生きる手伝いをしたいと思っています。

     起業のために借り入れた2000万円、一時は24万円まで激減

     ―― 起業した当時、資金調達はどうされたんですか。

     起業時は日本政策金融公庫から無保証無担保で1000万円、地域の信用金庫から1000万円を借りました。2000万円の元手があれば半年間で黒字化できる試算でした。当時、妻は内緒にしてくれていましたが、一時は残高が24万円になったこともあったそうです(笑)。その後、なんとか黒字化できましたが。

     デンマークの影響!?「既存の当たり前を超える」がマイルール

    ――菅原さんが働く上で大切にしているマイルールを教えてください。

    実は中学・高校と僕はデンマークで暮らしています。社名の「ぐるんとびー」は“デンマークの父”と言われている哲学者、ニコライ・フレデリク・セヴェリン・グルントヴィの名前から取っています。

    今では世界幸福度ランキングで常に上位にあるデンマークですが、もともとは戦争で領土合戦を繰り返してきた国でした。ある時、敗戦をきっかけにデンマークは、「今あるものの中で幸せを見つけたほうがいいんじゃないか」という方向に国全体のかじを切ったんです。

    中でもグルントヴィの思想はデンマークの国民意識に大きな影響を与えました。彼は共生を軸にした教育理念を提唱し、先人たちの教えだけをよしとせず、今を生きる人々が対話を重ねることで、自分たちに適した「今の時代に最適な仕組み」を作っていこうと訴えました。

    僕はグルントヴィの考え方に共感します。介護の現場でも今の時代にあった最適な仕組みを見いだすため、利用者の皆さんだけではなく、ぐるんとびーのスタッフとも日々対話を重ねています。ミーティングが遅くまで続くこともよくありますよ。マイルールがあるとすれば、「対話を重ね、既存の当たり前を超えていく」ということですかね。

    菅原さんとぐるんとびーのスタッフ

    今後の目標は「ほどよく幸せに暮らせる地域づくり」

     事業としてぐるんとびーを発展させながら、介護の枠を超えた地域社会についても何かできることはないかと考えています。

    このエリアは藤沢市の中でも特に高齢化が進んでいるうえ、貧富の差も大きい地域です。例えば認知症のおじいちゃんを薬局に案内すれば、子どもはご褒美にコロコロコミックを買ってもらえる、そうした“持ちつ持たれつ”で成り立つ仕組みを広げられたらいいですね。どうすればみんながほどよく幸せに暮らせる社会ができるのか、心を動かしながらみんなで一緒に考えていきたいと思っています。

    ぐるんとびーの室内で遊ぶ子どもと利用者のおじいちゃん

    サーブコープは起業のお手伝いをします

    起業当時、菅原さん自身はオフィスを構えずカフェなどで事業計画を練っていたそう。今ではシェアオフィスが増え、起業に活用する人が増えています。1978年にオーストラリアで誕生したサーブコープも、皆さまの起業をお手伝いします。日本国内には25カ所の一等地にレンタルオフィスを構え、ITインフラ、秘書サービス、コワーキングスペースが利用可能。契約は最短一カ月からなので、コストも抑え、低リスクです。

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