オフィス移転見積もり|専門家に聞く内訳・相場、コストを抑えるコツ
新型コロナウイルス感染症を機に働き方改革が加速し、多くの企業でオフィスの在り方を見直す動きが続いています。リモートワークの導入やオフィスのダウンサイジング、コミュニケーションスペースの確保を目的とした拡張など、企業によってニーズはさまざまです。
しかし、オフィス移転には多額の費用がかかるため、慎重な計画と準備が欠かせません。想定外の出費を防ぎ、スムーズな移転を実現するためには、あらかじめ必要な費用や抑えるべきポイントを把握しておくことが大切です。
本記事では、オフィス移転にかかる費用の相場や内訳、費用を抑えるためのポイントについて、賃貸オフィス情報・仲介サービスを提供する「officee」の阪口桂一氏への取材を交えながら詳しく解説していきます。
オフィス移転費用の種類
オフィス移転を成功させるためには、必要な費用を事前に把握し、適切な予算を確保することが大切です。移転にかかる費用は大きく3つのカテゴリーに分類され、それぞれ以下のような費用項目が含まれます。
カテゴリー | 概要 | 主な費用項目 |
旧オフィスの退去費用 | 現オフィスの退去時に発生する費用。原状回復工事や不用品の処分など、退去に関わる一連の費用が含まれる。 | ・引っ越し費用 ・原状回復工事費用 ・不用品・廃棄物処理費用 |
新オフィスの入居費用 | 新オフィスへの入居時に必要となる費用。契約時の初期費用から、オフィス環境の整備に必要な工事費用まで含まれる。 | ・敷金(保証金) ・インフラ整備費用 ・内装工事費用 ・仲介手数料 ・火災保険料 |
その他の付随費用 | 移転に伴って発生する諸経費。住所変更手続きや、移転期間中の二重家賃なども考慮が必要。 | ・住所変更手続き費用 ・印刷物の変更費用 ・移転期間中の二重家賃 |
続いて、各費用の具体的な相場や、費用を抑えるためのポイントについて詳しく見ていきましょう。
旧オフィスの退去・引っ越しにかかる費用
退去時に発生する主な費用は、「引っ越し費用」と「原状回復費」です。原状回復費は、オフィスを契約時の状態に戻すための工事費用で、間仕切りや電話線の撤去などが含まれます。
項目 | 1坪あたり(目安)※記事公開時 |
引っ越し費用 | 2~3万円 ※引っ越し費用に関しては1坪あたりではなく、従業員1人あたり |
原状回復費 | 5~10万円 ※小・中規模オフィスの場合2~5万円程度 ※大規模オフィスの場合5~10万円程度 |
不用品・廃棄物処理 | 2トントラック:7~8万円程度 4トントラック:10~15万円程度 ※含まれる運搬費は移動距離による |
※阪口桂一氏のコメントを元に費用相場を作成
専門家のアドバイス|覚えておくべき注意点
<阪口さんコメント>
「オフィスの経年劣化も原状回復の対象となり、想定以上の修繕費用を請求されるケースがあります。なお、原状回復費には入居時に支払った敷金が充てられることが一般的です。原状回復費の範囲は契約によって異なりますので、契約時に確認しておくことをおすすめします。」
退去・引っ越しにかかる費用を抑えるコツ
繁忙期を避けて、引っ越し内容を確認
多くの企業が移転する3月末や4月は、引っ越し費用が通常より20〜30%程度高くなる可能性があります。可能な限り繁忙期を避けて計画を立てることで、コストを抑えられるでしょう。また、以下の点を事前に確認することで、追加費用の発生を防ぐことができます。
- エレベーターの有無や利用可能時間
- クレーン車の必要性
- 搬入経路の制限
- 駐車スペースの確保
なお、社員による引っ越しは一見コスト削減になると思われがちですが、ビルの共用部に傷をつけた場合の高額な賠償リスク、業務への影響、ケガの可能性などを考慮すると、専門業者への依頼をおすすめします。
原状回復工事は業者の見積もりを比較
原状回復工事の費用を抑えるためには、まずビルの指定業者に見積もりを依頼するところから始めましょう。その後、複数の業者から見積もりを取得して比較検討すれば、適正な価格での工事実施が可能になります。見積もり依頼時には工事内容の詳細を確認し、必要な範囲を明確に示すのが重要です。また、原状回復の範囲を貸主と事前に協議しておけば、想定外の工事や追加費用の発生を防ぐことができます。
リサイクル対象の不用品を買い取ってもらう
不用品の処分には産業廃棄物処理業の許可を持つ業者への依頼が必要です。ただし、以下のような備品はリユース業者に買い取ってもらえる可能性があります。
- オフィス家具(デスク、チェア、キャビネットなど)
- 電化製品(複合機、シュレッダーなど)
- 通信機器(ビジネスフォン、LANケーブルなど)
買い取り査定には時間がかかる場合もあるため、早めに依頼することをおすすめします。
新オフィスの入居にかかる費用
新オフィスへの入居時には、主に「敷金」「インフラ整備費用」「内装費用」が必要です。敷金は賃料の保証金として預け入れるもので、退去時に返還されますが、原状回復費用が差し引かれる場合があります。インフラ整備費用には、什器の購入や通信工事費などが含まれ、内装費用はオフィスの間仕切りや床材の張替えなどの工事費用が該当します。
項目 | 1坪あたり(目安) |
敷金や保証金 | 坪単価×10~12カ月 ※個人オーナーが所有するビルの場合、礼金が発生する可能性あり |
インフラ整備費用(什器購入・通信工事費など) | 5万円 |
内装費用 | 10万円~20万円 |
※阪口桂一氏のコメントを元に費用相場を作成
専門家のアドバイス|覚えておくべき注意点
<阪口さんコメント>
「オフィス移転でかかる最大のコストは新オフィスへの入居費用です。オフィスの広さやビルの立地、インフラや内装をどこまで整備するかによって金額は大きく変動します。また、敷金のほかに仲介手数料や保証会社への加入料、火災保険料なども必要になりますので、余裕を持った予算設定をおすすめします。」
入居にかかる費用を抑えるコツ
新オフィスへの入居時にはさまざまな費用が発生しますが、事前の確認や交渉、賢い選択によってコストを抑えることが可能です。ここでは、入居費用を抑えるための具体的なポイントを紹介します。
賃貸借契約の項目や割引条件などを確認する
契約が決まったら発生する以下の費用について、事前に確認と交渉を行いましょう。
- 前家賃:一般的には入居月と翌月2ヶ月分
- 敷金(保証金):6ヶ月~12ヶ月分
- 礼金:1ヶ月~3ヶ月程度
- 仲介手数料:賃料の1ヶ月分
- 火災保険料:2万円~5万円(契約年数や面積による)
なお、条件次第で減額や早期割引が可能な場合や、仲介業者がキャンペーンを実施している場合もあります。
家具、備品や什器は再利用・リース契約する
新規で家具や備品をすべて購入すると、大きな初期投資が必要になります。コスト削減のためには、以下の方法を検討しましょう。
- 現在使用している家具や備品の再利用
- オフィス家具のリース契約の活用
- 中古オフィス家具の購入検討
- 必要最小限の備品から始め、段階的に追加購入
居抜き物件やレンタルオフィスを活用する
初期費用を大幅に抑えたい場合は、居抜き物件やレンタルオフィスの活用が有効な選択肢となります。それぞれの特徴は以下の通りです。
物件タイプ | 主なメリット | 費用削減のポイント |
居抜き物件 | ・前テナントの内装や設備をそのまま活用可能 ・すぐに営業開始が可能 ・内装工事期間の短縮 | ・内装工事費用の削減 ・原状回復費用が不要な場合も ・インフラ整備費用の削減 |
レンタルオフィス | ・即日入居が可能 ・家具や通信設備が整備済み ・一等地での開業が容易 | ・敷金や保証金が不要または少額 ・インフラ整備費用が不要 ・短期契約で事業規模に応じた柔軟な対応が可能 |
居抜き物件は、前テナントの設備や内装をそのまま利用できるため、大幅な工事費用の削減が可能です。一方、レンタルオフィスは敷金や保証金が少額で済み、すべての設備が整っているため、初期投資を最小限に抑えることができます。特にスタートアップ企業や、将来の事業規模が流動的な企業にとって向いているでしょう。
現オフィスの賃料
移転期間中は、新旧オフィスの賃料が重複して発生する可能性があります。特に内装工事や引っ越し作業のために、1〜2ヶ月程度の重複期間が生じることも珍しくありません。そのため、移転スケジュールを綿密に立て、この期間をできるだけ短くするよう努めましょう。
住所変更に伴う手続き・印刷物の変更
住所変更に伴い、以下のような手続き費用や印刷物の変更費用が必要です。
- 法人登記の変更手続き費用
- 各種許認可の変更手続き費用
- 名刺、封筒、会社案内などの印刷物の更新費用
- ホームページの住所情報更新費用
特に印刷物は、在庫状況を確認し、移転のタイミングに合わせて発注することで、無駄な費用を抑えられます。
オフィス移転の見積もり時のポイント
オフィス移転を成功させるためには、正確な見積もりの取得と適切な業者選定が重要です。見積もり依頼の際は、以下のポイントに注意して進めましょう。
正確に見積もりを出してもらうための情報提供
正確な見積もりを得るためには、できるだけ詳細な情報を業者に提供することが大切です。現オフィスと新オフィスの面積や所在地などの基本情報はもちろん、エレベーターの有無や搬入経路の制限といった特殊条件も必ず伝えましょう。また、新オフィスまでの移動距離や、トラックの駐車スペースの確保状況なども、費用に影響する重要項目です。これらの情報を事前に整理して提供することで、より正確な見積もりを取得できるでしょう。
複数業者の見積もりを比較
見積もりを比較する際は、基本料金だけでなく、さまざまな観点から総合的に判断することが大切です。作業時間の延長や休日作業による追加費用の発生有無、万が一の場合に備えた保険や保証の充実度、各社が実施しているキャンペーンや割引条件なども含めて検討しましょう。単純な価格比較だけでなく、サービスの質も含めた総合的な判断が、スムーズな移転につながるはずです。
見積もりの内訳は細かく記載してもらう
見積書は、費用の内訳が明確にわかるよう、できるだけ詳細に記載してもらうのがおすすめです。作業内容や必要な機材、人員配置、作業時間など、具体的な内容を明記してもらうことで、追加費用の発生を防ぎ、予算管理がしやすくなります。また、複数の業者から見積もりを取る際も、同じ条件で比較検討しやすいでしょう。
オフィス移転の計画に必要な3つのポイント
膨大な時間や労力、費用のかかるオフィス移転は会社にとって一大事業です。阪口氏によると、移転を検討するにあたって留意すべき点は3つあるといいます。
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1. コスト
2. オフィス移転スケジュール
3. 人員計画
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<阪口さんコメント>
「弊社がお手伝いしている企業は50〜100坪規模のオフィス移転が多いですが、計画は12ヶ月前からスタートする企業様が多いです。何百坪という規模になると、時間軸を長く取り、1年以上余裕をもってスタートさせるほうがよいと思います。また、企業の長期的な人員計画を見越して、一人あたりのオフィス面積やレイアウトを考える必要があります。オフィス移転を検討する際は、どんな課題を改善したいのかを明確にすることが大切です」
コスト
コストにはランニングコストとイニシャルコストの2種類あります。移転前にしっかり確認しましょう。
①ランニングコスト
月々支払う賃料・共益費・管理費・水道光熱費など。
②イニシャルコスト
契約を結ぶ際に発生する初期費用。敷金(保証金)・礼金・火災保険料・仲介手数料・インフラ整備費用・内装費用など。
オフィス移転スケジュール
現オフィスの課題・移転目的の明確化から、新オフィスの条件設定、オフィス探しや引っ越しまで、オフィス移転に要する作業は膨大。会社の規模によるものの、最低6カ月~1年前からスケジュールを立てるのが理想。
人員計画
オフィススペースが足りない、余剰スペースが生まれたなど、移転の目的に合った新オフィスでのレイアウトや一人あたりのオフィス面積を決定。また、企業の成長に合わせた採用や異動を見込んだ長期的な人員計画を踏まえ、オフィスの条件を設定する。
これまでオフィス移転の現況とオフィス移転に必要な費用について解説してきましたが、オフィス移転は企業にとって一大事業。移転専門のプロジェクトチームを立ち上げるのが良さそうです。
また、移転の際は、オフィス仲介会社に相談するのもスムーズですね。
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取材協力47株式会社|公式サイト
取締役副社長|阪口 桂一氏
47株式会社|賃貸オフィス情報サイト「officee」の運営および仲介サービスを提供。
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