会社・事務所移転に必要な手続き一覧!オフィス移転の流れ・ポイントも紹介
会社・事務所を移転するときは、個人の引っ越しとは異なる手続きが必要となります。オフィスの解約に始まり、インターネット・電話回線の移転、銀行口座やクレジットカードの登録情報変更はもちろん、取引先や法務局、税務署、都道県事務所などに対して、さまざまな届け出が必要です。
本記事では、会社・事務所を移転するときの必要な手続きを、早期に対応すべき項目から順番にまとめて紹介します。
会社・事務所の移転で必要な手続き
会社・事務所の移転に必要な手続きを7つのポイントにわけて解説します。
以下を確認し、漏れのないように手続きを進めましょう。
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移転先への検討
一般的な賃貸オフィスから別の賃貸オフィスに移転する場合、計画の立案から移転の完了までは半年から1年ほどの期間を要します。
立地、面積、天井高、共用施設、空調施設、電気容量、利用可能時間など、移転先に求める項目を確認し、賃貸オフィス物件に強みを持つ不動産会社を通じて物件の候補探しと内見を行います。候補となる物件は必ずしも空室状態ばかりではなく、現在入居中で数か月先に退去が決定している物件もあります。いずれにせよ、複数の候補物件に実際に足を運んで比較検討する必要があるため、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
オフィスの解約
会社・事務所の移転が決まったら、現在契約しているオフィスの解約手続きを進めます。入居時の契約書で解約方法と期限を確認し、管理会社やオーナー(賃貸人)に解約通知を出しましょう。解約通知を出すべきタイミングは、一般的に退去する6ヶ月前までです。6ヶ月以内に解約する場合は、解約料が発生する場合があるので要注意です。定期借家契約の場合は、入居時に契約した期間の満了をもって契約が終了となります。(契約書に特約があれば途中解約できる場合があります。)
オフィスの解約が決定したら、移転するまでに原状回復工事が必要となります。マンションやアパートといった住居物件とは異なり、オフィスの場合は100%負担による原状回復が基本です。壁や天井、床など、どの程度の原状回復が求められるのか、管理会社やオーナーに確認しておきましょう。
引っ越し業者の選定
通常業務を滞りなく遂行しながら、無理のないスケジュールで引っ越し作業を行うには余裕を持ったスケジュール管理が欠かせません。事務所の規模、移動距離、廃棄する什器や機材、希望する日程などによっては請け負える引っ越し業者自体の選択肢が少なくなるケースもあります。オフィス移転の業務の中で、条件によってコストが大きく変動する可能性が高いところです。遅くとも移転時期の4~5ヶ月前には候補となる引っ越し業者に見積依頼を手配しましょう。
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インターネット・電話回線の移転
会社・事務所を移転するときは、インターネット・電話回線の移転も必須です。移転後すぐにインターネットや電話が使えないと仕事がスムーズに始められません。早めに手続きを済ませておくことをおすすめします。
まずは、移転先オフィスの電話やインターネット回線の状況を確認しましょう。現在使用している電話やインターネット回線のサービスを引き続き利用する場合は移転手続きを行い、別のサービス会社に切り替える場合は解約手続きを行います。
新しいサービス会社に申し込む際、繁忙期では回線工事の手配に1~2ヶ月ほどかかるケースも少なくありません。引っ越しと同時にインターネットの環境整備を検討している場合は移転3ヶ月前程度を目安に情報収集をはじめましょう。
また、オフィスでOA機器や複合機をリースしている場合は、こちらの移転手続きも必要となります。オフィス環境に必要な設備はすべてチェックし、それぞれの移転手続きを進めましょう。
銀行口座やクレジットカードの登録情報の変更
銀行口座やクレジットカードの登録情報の変更も必要です。銀行口座の登録情報の変更は、窓口だけでなく、銀行のホームページでも手続きが可能です。法人の場合は、通帳や届出印のほか、移転後の登記事項証明書、社印などが必要となります。クレジットカードは、登録情報の変更手続きに一定の時間がかかる場合もあります。できるだけ早く連絡して、必要な書類を確認し、変更手続きを済ませておきましょう。
取引先への連絡
取引先への連絡も移転前にしておきましょう。会社・事務所を移転するときは、その旨を記した案内状を送るのがビジネスマナーとされています。連絡方法は、はがき等の書面だけでなく、メールでも問題ありません。
移転先の住所や移転日、電話番号など、移転に伴う変更情報を明記し、連絡漏れがないように注意します。移転先の地図やGoogleマップなどのURL、会社・事務所移転に伴う休業期間なども記載しておくと良いでしょう。
あわせて、自社ホームページや公式SNS、名刺などの法人住所、電話番号も更新しておく必要があります。
各機関への届け出
引越しの手続きでヌケ・漏れが生じやすいのが各機関への届け出です。特に、日常業務にはあまり影響のない機関への申請手続きに注意が必要です。
会社・事務所移転で必要な各機関への届け出
会社や事務所の移転の際に必要な行政機関への届け出について、申請書類と期限をわかりやすく一覧にまとめて紹介します。
届け出 | 届け出る書類 | 期限 |
法務局 ※管轄外に移転の場合は2カ所 | 本店移転登記申請書 支店移転登記申請書 | 本店の場合:移転日から2週間以内 支店の場合:移転日から2週間以内 |
税務署 (国税) | 異動届出書 給与支払事務所等の移転届出書 | 移転後速やかに 移転した日から1ヶ月以内 |
都道府県税事務所 (地方税) | 異動届出書 法人異動事項申告書 | 移転後速やかに |
年金事務所 | 健康保険・厚生年金保険適用事業所名称/所在地変更届 | 移転後5日以内 |
労働基準監督署 | 労働保険名称、所在地等変更届 | 変更のあった日の翌日から起算して10日以内 |
公共職業安定所 | 雇用保険事業主事業所各種変更届 | 変更のあった日の翌日から起算して10日以内 |
警察署 | 保管場所証明書(車庫証明書) 保管場所標章交付申請書 | 規定なし |
郵便局 | 転居届 | 規定なし |
それぞれの機関で異なる注意事項や、一部の届け出で必要な費用については以下の項目ごとに記載しています。
法務局での手続き
法人の住所が変わるときは、法務局での手続きが必要となります。移転するのが本店か支店かによって、提出書類に違いがあるので注意しましょう。
提出書類 | 期限 | |
本店が移転する場合 | 本店移転登記申請書 | 移転してから2週間以内 |
支店が移転する場合 | 支店移転登記申請書 | 移転してから2週間以内 |
法務局の管轄が変わる場合は、移転前と移転後、どちらの法務局にも申請書を提出しなくてはいけません。また、管轄内の移転では登録免許税が3万円、管轄外に移転する場合は移転前と移転後、それぞれに申請するため計6万円が必要となります。
なお、代表取締役本人がマイナンバーカードを利用して、オンライン申請での本店移転登記ができるようになっています。
税務署での手続き
法務局での登記変更の手続きは申請後1~2周間程度で完了します。完了後、新しい住所での謄本を取得したら、税務署に必要書類を提出します。税務署に提出する書類は、以下の2種類があります。
提出書類 | 期限 |
異動届出書 | 移転後、速やかに |
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 移転した日から1ヶ月以内 |
会社・事務所の移転によって納税先が変わる場合は、移転前の税務署に必要書類を提出しなくてはいけません。税務署の窓口に提出するほか、郵送やe-Taxでも手続きは可能です。
都道府県税事務所での手続き
法人には地方税である法人住民税や法人事業税もかかっています。本店が異動するときは、都道府県税事務所での手続きが必要です。同一の都道府県に移転する場合は、移転後の都道府県税事務所、他の都道府県に移転する場合は、移転前・移転後、両方の都道府県税事務所で手続きをしなくてはいけません。
提出書類 | 期限 |
異動届出書 法人異動事項申告表など | 移転後、速やかに |
都道府県税事務所の手続きには、登記事項証明書や定款などの添付が必要です。各都道府県によって手続きの方法が異なるため、提出先の都道府県税事務所に確認してみましょう。
年金事務所での手続き
社会保険についての手続きも必要です。手続きは年金事務所で行えます。提出書類の期限は「移転後5日以内」と早いため注意してください。登記簿謄本のコピーの添付が必要です。
提出書類 | 期限 |
健康保険・厚生年金保険適用事業所名称/所在地変更(訂正)届 | 移転から5日以内※ |
提出先は、事務センター(移転前の事務所を管轄する年金事務所)になります。提出方法は、電子申請、郵送、窓口持参から選ぶことができます。
労働基準監督署での手続き
事業所の所在地や社名を変更したときは、労働基準監督署に「労働保険名称、所在地等変更届」を提出します。提出期限は、変更のあった日の翌日から起算して10日以内。提出先は、移転後のオフィスを管轄する労働基準監督署です。
提出書類 | 期限 |
労働保険名称、所在地等変更届 | 変更のあった日の翌日から起算して10日以内※ |
公共職業安定所での手続き
公共職業安定所(ハローワーク)での手続きも必要となります。移転後の所在地を管轄する労働基準監督署に「労働保険名称、所在地等変更届」を提出後、移転後の所在地を管轄する公共職業安定所に「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出します。
提出書類 | 期限 |
雇用保険事業主事業所各種変更届 | 変更のあった日の翌日から起算して10日以内※ |
公共職業安定所に「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出する際には、「労働保険名称所在地等変更届」の控えと確認書類を添えることが必要となります。なお、求人票の所在地は届け出後改めて求人担当部署に控えを提示し、変更手続きを行わなければ自動で修正されませんので注意が必要です。
※登記完了の関係で実際には期限に間に合わないことがほとんどです。期限に間に合わない場合は、登記完了後に速やかに手続きしましょう。
警察署での手続き
会社・事務所の移転に伴い、社用車などの自動車(登録自動車)・軽自動車の保管場所(車庫)を変更するときは、警察署での手続きも必要となります。(一部手続きの必要がない適用除外地域あり)期限は特に決まっていませんが、速やかに提出しましょう。
保管場所証明(車庫証明)の申請手数料は東京都の場合2,100円、標章交付手数料は500円です。都道府県によってそれぞれ数十円~数百円の違いがあります。
提出書類 | 期限 |
保管場所届出書(車庫証明書) 保管場所標章交付申請書 | 規定なし |
郵便局での手続き
会社・事務所を移転するときは、郵便局に転居届を提出しましょう。転居届を提出することで、移転前の住所宛に届いた郵便物などを移転後の新住所に無料で転送してもらうことができます。郵便局の窓口での手続きのほか、ポスト投函、インターネットによる提出も可能です。
提出書類 | 期限 |
転居届 | 規定なし |
転送期間は、届け出日から1年間(転送開始希望日からではありません)。転送期間経過後は、差出人に郵便物等が返還されてしまいます。郵便局に転居届を提出してから登録されるまでには3~7営業日を要します。移転前後の郵便物を確実に受け取るためにも、余裕をもって転居前に提出したほうが良いでしょう。
会社・事務所移転のスケジュール
これまで紹介した各種手続きを含め、やるべきことを時系列で紹介します。
▶【1年前~半年前】
・移転先選定の方針を決定
・不動産会社へ物件情報収集を依頼
・候補ビルを選定
・候補ビルを内覧、条件交渉
▶【半年前~3ヶ月前】
・移転先を決定、賃貸借契約を締結
・現在のオフィスへ解約予告を書面で通知
・現在のオフィスの原状回復工事の必要事項を確認
・新オフィスレイアウトの検討、決定
・内装および什器業者の選定と決定
・引越し業者の選定と決定
・廃棄業者の選定と決定
・通信回線の移設もしくは新設工事手配
▶【3ヶ月前~移転前】
・移転日の確定
・移転先ビルの各種工事開始
・挨拶状の用意
・取引先への挨拶、告知
・行政機関への届出に必要な書類の準備
▶【移転日】
・移転作業
・HPやSNSの情報更新
▶【移転後~1ヶ月】
・前ビルの原状回復工事
・前ビルの引き渡しおよび保証金など精算
・行政機関へ必要書類の提出
ポイントを整理して漏れなく手続きを進めましょう
近年、リモートワークが普及し、オフィスの縮小・移転などを検討する企業も増えています。会社・事務所移転には、さまざまな手続きが必要です。チェックポイントを確認して、漏れのないよう手続きを進めましょう。
移転先には賃貸オフィスだけでなく、レンタルオフィスやバーチャルオフィスという選択肢もあります。レンタルオフィスやバーチャルオフィスはうまく活用することでオフィスの開設コストや月々のランニングコストの削減、サポートサービスによる人件費の削減などにつながります。
通常、少なくとも半年、一般的には1年は必要なオフィスの移転をできるだけ短縮したいとお考えなら、選択肢のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。
移転先の選択肢におすすめ!サーブコープのオフィスサービス
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昨年10月にオープンした「東宝日比谷プロムナードビル」はビル自体が新築ハイグレードビルであり、国内サーブコープ拠点では初めてとなるプライベートバルコニー付きのオフィスをご用意。オフィスに開放感をもたせることで、一層クリエイティブなワークプレイスとなっています。
参照:
法務局|株式会社の本店移転の登記をしたい方(オンライン申請)
国税庁|[手続名]異動事項に関する届出
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監修:安達莉々
中野セントラル司法書士事務所 の代表司法書士。司法書士として、2014年から多くの起業家をサポートしてきました。特に20~30代の起業家、個人事業主、および外国人の起業家のクライアントが多く、その夢の第一歩をサポートするのが強みです。税理士や行政書士とも緊密に連携し、総合的なアドバイスを提供しております。