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インバウンド増加、2020年東京オリンピックに向けた課題――ピクトグラムの可能性とは?

訪日外国人旅行者数の近年の急増加を受け、「インバウンド(訪日旅行を指す)」という言葉をよく耳にするようになりました。2020年の東京オリンピック開催も後押しとなり、今後もインバウンドの増加が期待されます。

一方で、訪日旅行者を受け入れる際の課題も指摘されています。今回は、インバウンド増加や2020年東京オリンピックに向けた日本の課題、その解決の糸口となるピクトグラムの可能性について解説します。

インバウンド増加や、東京オリンピック開催を控えた日本の課題とは

出典:Google トレンド https://trends.google.co.jp/trends/explore?date=all&q=%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%90%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%89

インバウンド(Inbound)とは、「入ってくる、到着する」という意味の形容詞。観光業界などでは、国外からやってくる顧客のことを指します。

2013年、訪日外国人旅行者数が初めて1,000万人を突破した頃から、インバウンドという言葉がメディアでより使われるようになったともいわれています。2011年以降、インバウンドは増加の一途を辿っていますが、2020年の東京オリンピックを控え、今後も増加が期待されています。

しかし、2016年に国土交通省観光庁が訪日外国人旅行者を対象に行ったアンケートでは、日本の旅行で最も困ったこととして1位と3位に「施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない」28.9%、「多言語表示の少なさ・わかりにくさ(観光案内版・地図等)」13.3%と回答されました。たしかに、観光地を一歩出れば日本語表記しか見かけない場合も多く、難なく接客できる語学堪能な人材が少ないのが現状といえます。

訪日外国人旅行者と「ピクトグラムで意思疎通を図る」可能性とは?

観光案内版や地図の多言語化、施設スタッフの語学力向上はすぐに対応できるものではありません。こういった課題解決の糸口として、ピクトグラムを活用したデザインが挙げられます。

ピクトグラムとは視覚記号のことで、車いすやエレベーター、道路交通のマークなどは誰でも頭にうかぶのではないでしょうか。これらのピクトグラムは海外でも似たようなマークで認識されていることが多く、言葉が通じなくても意味を伝えるのに有効と考えらます。

ピクトグラムで意思疎通を図るメリットとデメリット

訪日外国人旅行者との意思疎通でピクトグラムを活用するメリットは、大きく2点挙げられます。

ひとつめは、マイナーな言語を使用する方にも対応が可能という点です。訪日外国人旅行者といっても、使用する言語は多岐にわたります。多くの人に「使いやすい」と感じてもらうには、英語だけでなく中国語やイタリア語、韓国語など様々な言語に対応する必要があります。しかし、ピクトグラムによる意思疎通であれば、文化の差があってもおおよそのイメージを伝えることができます。

ふたつめは、マークひとつで内容を伝えられるため、デザイン性を維持できるということです。文字を羅列した説明文は、デザインを損なってしまう場合があります。ですが、ピクトグラムであればわずかなスペースで意思疎通が可能です。観光地図や看板など限られたスペースに注意書きをしたい場合でもピクトグラムは活躍することでしょう。

一方で、ピクトグラムのデメリットはイメージでしか意思疎通が図れないことです。喫煙所や交番など大まかな場所を示すにはいいですが、注意事項など危険がおよぶものはやはり文字で記載する必要があるといえます。用途に合わせてピクトグラムを柔軟に活用することで、訪日外国人旅行者の利便性は向上することでしょう。

ピクトグラムには、ビジネス拡大の可能性も

2018年1月には、日本が提案した温水洗浄便座のピクトグラムが国際規格に登録されました。

出典:経済産業省ウェブサイト (https://www.meti.go.jp/press/2017/02/20180226002/20180226002.html)

経済産業省によれば、それまでは各メーカーが独自の記号を使っていたが、訪日外国人旅行者の増加にともなって、彼らから「温水洗浄便座の操作ボタンにどのような意味があるのかわかりにくい」といった声も多く上がるようになったことが背景であると説明しています。

そこで、温水洗浄便座を国際市場に展開させていくためにも、操作ボタンのピクトグラムを国際標準化しようと決断されたのです。

最終的に、一般社団法人日本レストルーム工業会が国内で統一した温水洗浄便座の操作ボタンのピクトグラムを国際標準化機構(ISO)に図案を提案。各国の専門家による審議を経て、2018年1月に国際規格として登録されました。

一般社団法人日本レストルーム工業会は、ピクトグラムの統一化は各トイレメーカーの海外進出の後押しになるのではないかと発表しています。また、トイレのピクトグラムのように、世界共通のマークが増えれば増えるほど、伝えるイメージの誤差はなくなっていくでしょう。

ちなみに、国土交通省観光庁が2016年に行ったアンケートでは、「困ったことはなかった」という回答が30.1%でした。つまり、残る70%は何かしらの改善の余地を感じているということです。こういったインバウンド需要やピクトグラムの可能性を考えても、今後の日本の発展において、ビジネスの余地はまだまだ残っているといえるでしょう。

 

 

 

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