合同会社設立の手順をわかりやすく解説!立ち上げの流れと必要書類は?
合同会社を設立する際の手続きは株式会社に比べて簡潔ではあるものの、正しい手順に沿って行わないと余分な手間やコストが発生してしまうこともあります。
場合によっては予定していた設立日に間に合わず、事業計画の変更を余儀なくされるケースもあるでしょう。
そこで本記事では、合同会社の設立手続きをスムーズに行えるよう、設立する際の正しい手順や必要書類について詳しく解説します。
合同会社の特徴
合同会社とは、2006年の会社法改正によって新たに設けられた会社形態です。
出資者(株主)と経営者(取締役)が異なる株式会社に対し、合同会社の場合は「出資者=経営者」の関係性が成り立ちます。
2006年以降、合同会社の新規設立件数は右肩上がりに増加し、直近の2021年では36,934社まで拡大しており、全国の新設法人の4分の1にまで達しています(株式会社東京商工リサーチ調査)。
当初は株式会社に比べて知名度や社会的な信用力が劣る傾向にありましたが、アップルジャパンやアマゾンジャパンなどの大手企業が合同会社を採用したことも影響し、次第に国内での認知度を拡大しつつあると言えるでしょう。
合同会社を設立するメリットとしては、株式会社に比べて設立費用やランニングコストを抑えられる点や、経営の自由度が高く、意思決定を迅速に行うことができる点などが挙げられます。
これらのメリットを踏まえ、合同会社は「低コストで会社を設立したい」「少人数で会社を運営したい」といったニーズを持つスタートアップ企業に選ばれるケースが多いです。
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合同会社設立の流れ【4ステップ】
合同会社を設立する場合には、以下の流れに沿って計画的に準備を進めることが一般的です。
- ステップ1:基本事項の決定
- ステップ2:定款の作成
- ステップ3:出資金の払込み
- ステップ4:登記申請
なかには一定の日数を要する工程もあるため、会社の設立予定日から逆算し、スケジュールに余裕を持って準備を行うように心掛けましょう。
ステップ1:基本事項の決定
合同会社を新たに設立する場合には、以下のような基本事項を決定しなければなりません。
商号(会社名)
商号は会社にとって顔とも言える重要なものであり、会社のイメージや経営理念などを投影した会社名を採用するケースが一般的です。
ただし既存の企業を連想させる会社名を付けた場合には、不正競争防止法によって損害賠償請求を受けるリスクもあるため、あらかじめ本店所在地を管轄する法務局にて類似商号のチェックを行いましょう。
下記のWEBサイトで調べることもできます。
「登記情報提供サービス」 (検索だけを行う場合は無料ですが、会社の登記情報まで調べる場合は有料です。)
専門家に調査してもらった方が安心、という方は司法書士に相談すると良いでしょう。
また合同会社の設立登記を行う際には、併せて法人の実印を登録する手続きを行います。
そのため会社名が決定した段階で法人用の実印や銀行印を作成し、登記申請や口座開設の際にスムーズな手続きを行えるよう、あらかじめ準備しておくことをおすすめします。
事業目的
事業目的とは、合同会社を立ち上げたあとに、その会社が行う事業内容を指します。
事業目的については、合同会社を設立する際に登記しなければならず、あとから変更を行う場合には追加でコストが発生するため、将来行う可能性のある事業も含めて設定しておくことをおすすめします。
本店所在地
いわゆる会社の住所を表し、設立時には本店所在地についても登記が必要です。
ただし、必ずしも実際の活動拠点である必要はなく、近年ではバーチャルオフィスやレンタルオフィスの住所によって登記を行うケースも増加しています。
本店所在地を変更する場合には登記の変更手続きが必要となり、追加のコストが発生するため、長期的な計画も視野に入れた上で検討しましょう。
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資本金の額
設立にあたって資本金は会社の事業資金となり、現行の会社法では1円でも会社を設立することが可能です。
ただし資本金の額は会社の信用度を図る基準となるため、極端に低い金額で設定してしまうと、金融機関や取引先から十分な信用が得られず、その後の事業活動に悪影響が生じる可能性もあります。
資本金に関しても登記の対象となり、変更には追加のコストを要するため、自分自身のビジネスにとって適切な金額を慎重に検討しましょう。
社員構成
合同会社の設立にあたっては、「代表社員を誰にするか」を決定し、登記しなければなりません。
合同会社では、代表権を持つ人物を代表社員と言い、株式会社における代表取締役と同様の役割となります。
なお代表社員については、1名以上であれば合同会社を設立することが可能です。
事業年度
株式会社や合同会社の場合、個人事業主とは異なり、自由に事業年度を設定できます。
国の会計年度と合わせて3月決算とする企業が多いですが、繁忙期と重複する場合など、別の月を決算月とする方が好ましいケースもあります。
なお事業年度を変更する場合には、税務署などに変更届を提出しなければならないため、設立にあたっては闇雲に決算月を決めるのではなく、自社にとって最適な事業年度を選択しましょう。
設立年月日
会社の設立日については、事業者が任意の日付を設定でき、具体的には「法務局で登記申請を行った日」となります。
なお郵送で提出する場合には「申請が受理された日」となるため、希望する日付がある場合には、逆算して申請手続きの準備を行いましょう。
ステップ2:定款の作成
定款とは、会社が事業活動を行う上でのルールブックであり、合同会社の設立にあたっては必ず作成しなければなりませんが、合同会社の定款については、株式会社の場合に必要となる株主構成及び株式の譲渡制限などに関する記載や、公証役場での定款認証も不要であるため、比較的容易に作成が可能です。
定款の記載事項については、「絶対的記載事項」と「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3種類に分類されます。
絶対的記載事項とは、定款への記載が義務付けられている項目であり、「商号」や「事業目的」「社員の氏名及び住所」「本店所在地」などの情報を記載しなければなりません。
相対的記載事項は、定款に記載することで効力が生じる項目を言い、「持分の譲渡の要件」や「業務執行社員の選任方法」などが該当します。
任意的記載事項とは、定款に記載しなくても他で規定すれば効力が生じる項目であり、具体的には「事業年度」や「業務執行社員の報酬」などが当てはまります。
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ステップ3:出資金の払込み
定款の作成が完了したあと、設立登記を行う前に合同会社の出資者は出資金の払込みを行わなければなりません。
ただし設立登記が完了するまでは法人名義の銀行口座は開設できないため、出資金については出資者の個人口座へ払込みを行います。
なお設立登記にあたっては払込みの事実を証明する書類が必要となるため、振込先の通帳の表紙や振り込み内容が記載されたページのコピーを保管しておきましょう。
ステップ4:登記申請
定款の作成や出資金の払込みが完了したら、合同会社の設立登記に必要な書類を準備し、本店所在地を管轄する法務局で登記申請を行います。
登記申請を行う場合の必要書類については以下で詳しく解説しますが、申請の際には登録免許税として最低でも6万円の収入印紙の貼付が必要となります。
申請書類に不備がないかひと通りチェックを受けたあとで収入印紙を貼るようにしましょう。収入印紙は法務局内でも販売されています。
なお登記申請を行うと、法務局より登記の完了予定日が伝えられ、その間に修正依頼などの連絡がなければ、そのまま登記手続きが完了します。
登記申請から登記が完了するまでの所要期間は、申請書類の不備などがなければ、一般的に1~2週間程度が目安となります。
合同会社の設立登記に必要な書類
合同会社の登記申請を行う場合には、以下の必要書類を用意し、本店所在地を管轄する法務局へ提出しなければなりません。
- 合同会社設立登記申請書
- 登記用紙と同一の用紙
- 定款
- 払込みがあったことを証する書面(通帳のコピー)
- 代表社員の印鑑証明書
- 印鑑届書
- 代表社員就任承諾書(該当者のみ)
- 代表社員、本店所在地及び資本金決定書(該当者のみ)
なお設立登記については、郵送によって申請書類を提出することも可能です。
その場合には普通郵便でも問題ありませんが、会社の設立に関する重要な書類であることから、念のため書留で送付することをおすすめします。
・合同会社設立登記申請書
合同会社設立の登記申請を行う場合には、「商号」や「本店」「登記の事由」「登記すべき事項」「課税標準金額(出資金)」「登録免許税」などを記載した申請書を作成しなければなりません。
申請書のフォーマットや記載例については、法務省ホームページにて公開されているため、作成の際にはぜひご参考ください。
・登記用紙と同一の用紙
「登記すべき事項」をすべて記載した用紙のこと。提出後は法務局の登記簿ファイルで保管され、謄本などにも利用される大切な書類です。
記載内容については、「商号」や「本店」「目的」などの基本事項が中心となり、法務省ホームページではひな形をダウンロードすることができます。
なお用紙の提出については、法務局の専用OCR用紙やCD-Rなどによって行います。
・定款
作成した定款について、紙または電子定款のいずれかの媒体によって添付する必要があります。電子定款の場合には、PDFデータを保存したCD-Rによって提出しなければならないためご注意ください。
なお、電子定款で作成する場合には、紙媒体で提出する場合に比べて収入印紙代の4万円が節約できるため、近年では電子定款を選択する事業者が増加しています。
ただし、電子定款では電子署名などを行う場合に専門のソフトや機器が必要となるため、それらの購入費用や専門家への委託費用を考慮し、最適な作成方法を選びましょう。
・払込みがあったことを証する書面(通帳のコピー)
定款に記載された資本金額が適切に支払われていることを証明する書類です。
証明書の作成に加え、通帳の表紙や振り込みが記帳されたページのコピーを添付してください。
・代表社員の印鑑証明書
合同会社の代表社員個人の印鑑証明書を添付します。
代表社員が複数名いる場合には、全員分の印鑑証明書が必要です。
なお印鑑証明書については、発行後3ヶ月以内のものでなければ認められないため、登記申請を行うタイミングを考慮して計画的に取得しましょう。
・印鑑届書
会社の実印を登録するための書類です。
会社の実印登録については、市区町村ではなく法務局で行うため、設立登記と併せて手続きを行います。
なお印鑑届書のフォーマットについても、法務省ホームページよりダウンロードすることが可能です。
・代表社員就任承諾書(該当者のみ)
合同会社の代表となる社員が就任を承諾したことを証明するための書類です。
就任承諾書には、印鑑証明書のとおりに住所や氏名を記載し、代表社員個人の実印を押印しなければなりません。
なお、就任承諾書については、定款内で代表社員を定めており、定款の作成者として本人が記名押印を行っている場合には作成不要です。
・代表社員、本店所在地及び資本金決定書(該当者のみ)
設立時の代表社員や本店所在地、資本金額の決定を証するための書類です。
ただし定款内でこれらの事項に関する正確な記載がある場合には、決定書の作成は不要です。
決定書を作成する場合には、「本店所在地」や「代表社員」「資本金額」を明記し、社員全員の記名及び実印による押印が必要となります。
合同会社設立後に必要な手続き
合同会社の設立登記が完了したら、以下のように税務や社会保険、労働保険に関する手続きを行う必要があります。
税務に関する手続き
法人を設立した場合には、税務署や都道府県、市区町村に対して「設立届出書」を提出し、新たに会社を立ち上げたことを知らせる必要があります。
設立届出書は設立登記の日から2ヶ月以内に提出する必要があり、定款の写しや履歴事項全部証明書を添付し、本店所在地を管轄する税務署や県税事務所、市町村役場に提出してください。
また税務署に対しては、設立届出書と併せて「青色申告の承認申請書」や「給与支払事務所等の開設届出書」などの書類を提出するケースが多いです。
特に青色申告の承認申請書については、原則として設立日から3ヶ月以内に提出しなければ設立初年度から青色申告が適用されないため、提出期限に注意して作成しましょう。
社会保険に関する手続き
法人には健康保険や厚生年金への加入義務があり、年金事務所に対して以下の書類を提出しなければなりません。
- 健康保険・厚生年金保険 新規適用届
- 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
- 健康保険被扶養者(異動)届
なお提出期限に関しては、いずれも設立日から5日以内となるためご注意ください。
労働保険に関する手続き
従業員を雇用する場合には、労災保険や雇用保険の加入手続きも必要です。
具体的には、労働基準監督署に対しては「保険関係成立届」、ハローワークには「雇用保険適用事業所設置届」を提出しなければなりません。
これらの書類については、雇用した日の翌日から10日以内に提出する必要があるため、加入の要件を確認した上で計画的に作成しましょう。
手続きを確認してから合同会社設立を進めよう
合同会社の設立には、必要な手続きや書類が多くあり、予定通りに進まないことも多いです。
設立登記に必要な書類をもう一度記載しますので、提出前のチェックリストとしてご活用ください。
合同会社は株式会社に比べて設立費用が抑えられ、経営の自由度が高く、意思決定を迅速に行えるなどのメリットがある一方で、会社形態の知名度が低い、資金調達の方法が限られる、上場ができない、といったデメリットもあります。
合同会社で設立して、事業が拡大した時や、資金調達が必要になる時に株式会社に変更することも可能ですから、まずは合同会社で設立しておくというのもひとつの方法です。
事前に手続きや必要書類を確認し、スムーズに設立登記を進めましょう。
合同会社設立をサーブコープがサポートします
サーブコープは国内に28拠点でレンタルオフィス、バーチャルオフィス、コワーキングスペースを展開し、会社設立をサポートするワークスペースを提供しています。
登記可能なビジネス一等地住所や固定電話番号をご利用いただけるほか、定款の作成や手続きもプロフェッショナルな秘書がお手伝いします。サーブコープのワークスペースに興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
文・服部 大
服部大税理士事務所/合同会社ゆとりびと 代表社員。税理士、中小企業診断士。2020年2月、30歳の時に名古屋市内にて税理士事務所を開業。平均年齢が60歳を超える税理士業界の若手税理士として、税務顧問だけでなく、スポット税務相談やクラウド会計導入支援など、経営者を幅広く支援できるように奮闘中。執筆や監修業務も力を入れており、「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。
参照:
株式会社東京商工リサーチ|2021年「全国新設法人動向」調査
法務省|合同会社の設立手続について
法務省|登記事項の作成例一覧