【起業家100人に聞いた】血気盛んな起業家にロールモデルは不要!?
人気がある現役経営者の一人と言えば、京セラや第二電電(現KDDI)を創業し、日本航空の再建を果たした稲盛和夫氏でしょう。出版業界からは「名前で本が売れる現役経営者は稲盛さんだけ」と言われ、実際、2014年の1年間で5冊の本を出しています(共著を含む)。稲盛氏が提唱する「アメーバ経営」は中小企業経営者から広く支持を集めており、稲森氏がボランティアで関わる国内外に81ある「盛和塾」には、約9,200人の若手経営者が集まっているそうです。起業家は、誰かを積極的に支持し、ビジネスを見習おうとするものなのでしょうか?サーブコープが実施した「起業家100人アンケート」では、ビジネスのロールモデルについて調査しましたので、その結果をご紹介します。
あなたのビジネスのロールモデルは?
誰をロールモデルにしているのか聞いたところ「ロールモデルとする人物は特にいない」と回答した起業家が85.0%でした。なぜビジネスのロールモデルとする人は特にいないのか、その理由を見ていきましょう。
「誰かを目指すと、それ以上になれない気がする」(男性/46歳/サービス業)
「型にはまりすぎるのは良くない」(男性/41歳/医療・福祉・教育関連業)
「モデルはあくまでもモデル。マネをしたらそうなれるなんて考えてない」(男性/63歳/その他)
「人と同じ道を歩んでもうまくいくとは限らないし、その人が成功しても私が成功するとは思えない」(男性/58歳/製造業)
「自分で、顧客だったら何を望むかです」(男性/55歳/卸売・小売業)
理由を見る限り、「実際に起業に踏み切った人たちは非常に強い独立志向を持っている」と捉えることができます。時流や他者流に流されることなく、自分のやりたい事業の実現に邁進するのが“起業家”だということなのでしょう。一方で、「ロールモデルとしている人がいる」と回答した人は、全体の15.0%に過ぎませんが、その中の8割が「友人・知人」を、5割が「家族・親族」をロールモデルにしています。ごく身近にいる人をロールモデルとしているケースが多いということが特徴的でした。
起業家の傾向
日本政策金融公庫総合研究所が行っている「起業と起業意識に関する調査」をはじめ各種調査で、日本の場合、少なくとも両親のどちらかが事業を行っている(経営者である)家庭で育った人ほど、起業や経営に関心を持つ割合が高いということが明らかになっています。身近な人物をロールモデルとする傾向が強いことの背景には、そうしたことが関係しているのかもしれません。
「起業家100人アンケート」の結果で、ロールモデルとして具体的に「文化人」「ビジネス業界の有名人」の名が数名、挙げられていました。その数名の人物は、実業家、経営者ではなく、著作のある有名コンサルタントや作家でした。有名経営者や有名起業家の実績に学ぶというより、書籍を通じて経営戦略を学ぶ人が多いと言えるかもしれません。
自身の経験が一番重要?
事業の設立からの期間を聞いたところ、回答者の過半数は経営期間が「10年以上」、つまり2005年以前にすでに起業していることがわかりました。10年前である2005年当時の日本は、小泉政権の下、構造改革・規制緩和の流れの中で「起業」に注目が集まり始めた時期でした。経営期間で最も多かった回答「10年以上」の他は「8年以上~10年未満」「5年以上~8年未満」が続く結果となりました。
“会社を起こすこと”よりも“継続させること”が最も難しいと言われるように、時世によって起業したとしても大変厳しい現実があります。起業家は自分なりのやり方で必死に会社を経営させていくうちに、ロールモデルとなる人物を有名起業家など他者にではなく、自分自身の中に培っていくのかもしれません。
【調査概要】
調査タイトル:お仕事に関するアンケート
調査方法:インターネットリサーチ
調査期間:2015年4月16日~4月22日
調査対象:全国の起業経験のある男女(Qzoo会員)100名
【参考】
日本政策金融公庫総合研究所「起業と起業意識に関する調査」
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/topics_150121_1.pdf