脱サラ前に覚えておきたい「退職のルール」
会社勤めの人は、今後独立・起業をしようとする際には必ず必要になることがあります。それは、会社を辞めることです。副業としてビジネスを始めるならまだしも、真剣に起業や独立をしようというのであれば、今勤めている会社を辞める必要が出てきます。
そこで知っておきたいのが「会社の辞め方」。例えば、一般的には「会社を辞める際は、1ヶ月前に退職を申し出なければならない」と言われていますが、本当でしょうか?とても身近なのに、意外と知らないのが労働法規です。今回は「揉めない・損をしない会社の辞め方」について考えていきましょう。
■会社への申し出はいつまでに?
会社を辞める場合、「1ヶ月前」までに会社に退職を申し出なければならないというのは、法律では、正しくはありません。会社を辞めることについて、労働基準法には規定がありません。そこで、民法が適用されることになります。民法によると、期間の定めがない労働契約はいつでも解約の申し入れをすることができ、申し入れ後2週間経つと効力が発生するとされています。
ただし、就業規則に「1ヶ月前に退職を申し出なければならない」と書かれている場合には規定が優先されますので、自社の就業規則をきちんと確認しておきましょう。
また、退職をめぐる会社側とのトラブルを避けるためには、証拠を残しておくことが賢明です。何月何日をもって退職する旨を明記した「退職届」を権限のある上司に提出し、その受領の確認の書面を取っておくと良いでしょう。
■有給休暇について
次に、退職する際の有給休暇について確認しましょう。
有給休暇は、労働基準法に基づく労働者に認められた強い権利で、有給休暇を取ることを会社側が拒否することはできません。この点は、退職前の有給休暇の消化についても当てはまります。
例えば、退職前の有給休暇を消化期間中に、業務の引き継ぎのため出社を求められても、拒否することができます。しかし、この場合、会社側は退職前の社員に、休日出勤を命じることはできます。有給休暇は、出勤すべき日を休むのであって、通常の休日は対象ではないからです。
有給休暇を退職前に消化しきれない場合、余った有給休暇を会社に買い取ってもらえるかがよく問題になります。法律上に明確な規定があるわけではありませんが、有給休暇の“買い取り”は広く一般的に認められていることであり、消化しきれない分を買い取ってもらうよう会社に要求できると考えて良いでしょう。ただし、有給休暇の買い取りは「退職時」に行われるもので、「在職中」に行うことは法律上認められていないのでご注意ください。
■雇用保険の給付額の計算方法は?
最後に、雇用保険について確認しましょう。
雇用保険は、「在職中の給与に応じた一定額(「基本手当日額」と言います)×所定給付日数分」が支払われます。
このうち「基本手当日額」は、賃金日額に年齢などによってあらかじめ決められた率を乗じて計算されるので、賃金日額を増やすことによって基本手当日額を増やすことができるのです。
(「賃金日額」:離職の日の直前6ヶ月間に支払われた賃金総額を180で割った額)。
つまり、退職前の6ヶ月の賃金総額が、雇用保険の給付額を左右すると言えます。賃金総額にボーナスなどは含まれませんが、残業代や諸手当は含まれます。従って、退職前の6ヶ月間に残業代が増えれば雇用保険の給付額も増えます。反対に、退職前の6ヶ月間にあまり残業をせずに残業代が減ってしまうと雇用保険の給付額も減ってしまうので、注意しておきたいところです。
「どうせ辞めるから」といって気を抜いてしまうと、後から損をしたり、会社と揉めたりすることになるかもしれません。辞めてから気付くのでは遅いことも多いため、退職を決意したときには「会社の辞め方」を一度確認してみては。
※参照元
『退職・転職・失業生活 裏表 実践マニュアル』(2001年、日本実業出版社)