【2023年最新版】個人事業主の確定申告のやり方は?方法、流れを税理士がわかりやすく解説
個人事業主にとって、確定申告に対する最低限の知識は必要不可欠です。
万が一申告漏れや税額計算に誤りがあった場合には、かえって税負担が増加してしまうリスクもあるため、日頃の帳簿づけや確定申告手続きのやり方に関する正しい理解が求められます。
そこで今回は、個人事業主が確定申告を行う場合のやり方や注意点について、初めての方にもわかりやすく解説します。
確定申告とは?個人事業主は必須?
個人事業主の場合には、毎年のように確定申告を行うケースも多いですが、必ずしも申告義務があるとは限りません。
確定申告に関する知識が不十分な場合には、知らないうちに無申告の状態になってしまう可能性もあるため、申告義務や申告方法について理解しましょう。
確定申告とは?
確定申告とは、個人が毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得を集計し、それに基づいて計算した所得税を税務署へ申告・納税する手続きを指します。
なお個人事業主やフリーランスとして事業を営む個人以外にも、副業収入がある場合や医療費控除などの適用を受ける際には、会社員でも確定申告を行うことがあります。
中には確定申告を行うことで所得税の還付を受けられるケースもあります。申告義務がない場合でも、確定申告を行うべきか慎重に検討しましょう。
確定申告が必要な個人事業主
個人事業主の場合には、「課税所得※が発生するかどうか」によって確定申告義務を判断します。
- 課税所得=事業所得-所得控除
(課税所得がプラスの場合に確定申告義務あり)
なお個人事業主の確定申告義務については、別記事にて詳しく解説しているため、以下のリンクをご参照ください。
個人事業主の確定申告が不要・必要なケースとは?節税のポイントも解説!
※課税所得とは、「事業所得(事業収入-必要経費)」から「所得控除(配偶者控除や社会保険料控除など)」を差し引いた残額をいい、課税所得がゼロ以下の場合には確定申告は必要ありません。
白色申告と青色申告
事業所得を申告する場合には、白色申告と青色申告の2種類の申告方法があります。
青色申告を行うためには、複式簿記によって貸借対照表や損益計算書を作成するなど、一定水準の記帳が求められ、それらの要件を満たさない場合には白色申告へ分類されます。
青色申告では日々の手続きが煩雑になる一方で、以下のように税務上の特典が設けられているため、個人事業主は青色申告を行うことで節税効果を享受することが可能です。
- 青色申告特別控除
- 青色事業専従者給与の計上
- 純損失の繰越控除または繰戻し還付
- 少額減価償却資産の特例
- 貸倒引当金の計上
特に最大65万円の控除が可能となる「青色申告特別控除」は節税効果が大きく、青色申告の最大のメリットと言えるでしょう。
また万が一赤字が発生した場合でも、青色申告であれば翌年以後3年内に発生する黒字と相殺できるため、将来の税負担を軽減するという観点でも効果的です。
個人事業主の確定申告のやり方と流れ
一般的な確定申告手続きの流れは以下の通りです。
- 帳簿を整理する
- 必要書類を揃える
- 確定申告書の作成
- 確定申告書の提出
- 納税または還付
確定申告は適切な手順で行わないとかえって時間がかかってしまい、本業にも悪影響を及ぼす可能性があります。
確定申告の正しいやり方を理解し、効率的な手続きを心掛けましょう。
ステップ1:帳簿を整理する
確定申告では1年間の事業収入や必要経費を集計し、所得金額を計算する必要がありますが、そのためには日頃の帳簿づけが欠かせません。
事業所得では売上や仕入だけでなく、事業で支払う旅費交通費や消耗品費などの経費についても請求書や領収書を保存し、日々の取引として帳簿に記録する必要があります。
なお帳簿の記帳については、白色申告と青色申告で方法が異なるためご注意ください。
青色申告のうち、青色申告特別控除額として55万円または65万円の特別控除を適用する場合には「複式簿記」、10万円の特別控除を適用する場合には、現金出納帳や売掛帳などの「単式簿記」による記帳が求められます。
一方で白色申告の場合にはより簡便的な記帳方法も認められており、個人事業主は自らの経理スキルや青色申告の節税効果を踏まえ、適切な記帳方法を選択しましょう。
なお確定申告の基盤となる帳簿については、定期的に記帳を行うことで自らの所得状況をリアルタイムで把握でき、確定申告に向けて「納税額のシミュレーション」や「納税資金の準備」を行う上でも非常に重要です。
さらに2023年10月1日から始まるインボイス制度では、消費税の課税事業者は自らが支払う請求書や領収書のインボイス登録番号を確認して適切に記帳するなど、より細かな経理処理が必要となります。
したがって記帳作業を後回しにせず、普段から定期的に帳簿づけを行うように心掛けましょう。
なお、2023年10月1日から適格請求書発行事業者になるためには、2023年3月31日までに申請をする必要がありますので、適格請求書発行事業者になることを検討されている方はご注意ください。
ステップ2:必要書類を揃える
確定申告書の作成を開始するためには、まずは以下のように必要書類を準備しなければなりません。
必ず用意しなければならない書類
・確定申告書
・収支内訳書または青色申告決算書
必要に応じて用意する書類
・生命保険料や地震保険料などの控除証明書
・医療費控除の明細書や領収書
・寄附金受領証明書 など
なお確定申告書や収支内訳書、青色申告決算書については、税務署や確定申告会場だけでなく、国税庁ホームページからダウンロードすることも可能です。
また確定申告ソフトや国税庁ウェブサイトの「確定申告書等作成コーナー」を利用することで、パソコンなどでも作成できます。
一方で所得控除や税額控除の計算に必要な受領書や証明書は、生命保険会社や医療機関、自治体などから入手する必要があります。
万が一紛失した場合には再発行に日数を要するケースもあるため、申告期限を踏まえた上で、スケジュールに余裕を持って準備してください。
さらに2023年10月からインボイス制度が開始するため、2023年分からは「消費税課税事業者」を選択する個人事業主が増加すると予測されます。
消費税課税事業者の場合には消費税申告も必要となるため、所得税の確定申告用紙に加え、消費税申告書もあわせて用意しましょう。
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ステップ3:確定申告書の作成
帳簿が完成し、必要書類を揃えたら、実際に確定申告書を作成します。
確定申告書の作成については、主に以下の4つの方法があります。
- 手書きで作成
- 市販の確定申告用ソフトを使って作成
- 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成
- 税理士に依頼する
自分自身で作成する場合には、上記の1~3のいずれかを選択しますが、手書きや「確定申告書等作成コーナー」を利用する場合には、計算ミスなどがないようにご注意ください。
確定申告用ソフトでは、自動転記などによってミスを防ぐことができる一方、ソフトの購入費や利用料負担が生じます。
また一般的に会計ソフトとしての機能も有しているため、申告書の作成だけでなく、日頃の帳簿づけも含めて専用のソフトを導入するかどうか検討すると良いでしょう。
自分自身で申告書の作成を行わない場合には、税理士へ一連の手続きを依頼することも可能です。
税理士に対しては確定申告書の作成や提出だけでなく、日頃の会計業務に関するサポートも依頼できるため、自らの資金繰りや業務量と照らし合わせ、委託する業務の範囲を検討しましょう。
ステップ4:確定申告書の提出
確定申告に必要な書類の作成が完了したら、申告書類を所轄の税務署へ提出します。
確定申告書の提出期限については、原則として毎年2月16日から3月15日(消費税は3月31日)となるため、必ず期限内に提出できるよう、計画的に準備を進めましょう。
確定申告書類に関しては、以下のいずれかの方法によって提出してください。
- 税務署窓口へ持参
- 税務署へ郵送
- e-Taxで提出
税務署へ持参する場合には、マイナンバーカードなど本人確認書類を提示し、郵送の場合にはその写しを添付しなければなりません。
それに対してe-Taxを利用する場合には、マイナンバーカードをICカードリーダーで読み取って電子申告を行うなどの方法となるため、提出のための事前準備が必要となります。
なお青色申告を行う場合、最大65万円の青色申告特別控除額の適用を受ける場合には、「e-Taxでの申告」あるいは「電子帳簿保存」のいずれかの要件を満たさなければなりません。
したがって電子帳簿保存の要件を満たす場合を除き、窓口へ持参する場合や郵送で提出する場合には、65万円ではなく55万円の特別控除となってしまう点をご注意ください。
ステップ5:納税または還付
確定申告書類の提出が完了したら、最後に納税手続きを行います。
納期限については所得税の場合は3月15日、消費税は3月31日となるため、あらかじめ納税額を予測し、納税資金を準備しておきましょう。
納税手続きについては、以下のいずれかの方法から選択してください。
- 「振替納税制度」を利用
- インターネットバンキングなどで納付
- クレジットカードで納付
- QRコードにより、コンビニで納付
- 金融機関や税務署窓口で納付
「振替納税制度」とは、確定申告による納税額を本人の銀行口座から自動引落しする制度であり、一度手続きを行えば翌年以降も引き続き引落しとなるため、確定申告の納税手続きが不要となります。
なお引落日は毎年国税庁が公表しており、一般的には本来の納期限から約1ヶ月後となるため、預金残高が不足していないかどうかご確認ください。
一方で確定申告によって税金の還付が発生する場合には、申告から1ヶ月前後で申告書に記載した口座へ振り込まれます。
また先述した申告期限にかかわらず、還付申告の場合には、対象年の翌年1月1日以降5年間であればいつでも申告が可能です。
個人事業主が確定申告する際の注意点
日頃の会計業務や申告書作成に不慣れな場合には、確定申告手続きに遅延が生じたり、申告内容に誤りが発生したりするケースも多いです。
申告内容に誤りがあった場合、申告した納税者自身に責任が及ぶこととなるため、確定申告に対する正しい知識を身につけましょう。
経費計上可能かどうかの基本的な考え方
売上などの収入から差し引くことができる必要経費として、仕入などの売上原価や販売費、管理費が挙げられます。
必要経費として算入できるものは、収入を得るために直接必要であることが要件とされているため、単に「仕事で使用するかどうか」という観点ではなく、「売上を獲得するために必要不可欠な費用かどうか」という基準で判断してください。
また家賃や水道光熱費、車両関連費(ガソリン代など)、通信費(携帯電話代など)については、仕事とプライベートの両方で使用するケースが多いです。
そのような場合には、支払った費用の全額を必要経費とするのではなく、使用実態に基づいて合理的な基準で按分し、業務利用分のみ経費計上しましょう。
確定申告をしないと延滞税がかかる
課税所得が発生し、納めるべき税額があるにもかかわらず、確定申告期限を超過した場合には、延滞税や無申告加算税などのペナルティが科される可能性があります。
また先述した青色申告特別控除額については、65万円の控除を受けるためには期限内の申告が要件となるため、期限後申告の場合には控除額が10万円に減少し、さらに税負担が増加するためご注意ください。
会社員の場合は基準が異なる
近年では副業を行う会社員が増え、それに伴って新たに確定申告が必要となる個人も増加しています。
会社員などの給与所得者が副業収入について確定申告する場合には、以下の所得区分の判断にご注意ください。
「事業所得」とは、営利性や反復継続性などの観点から、社会通念上事業と称するべき規模であることが条件とされており、それ以外は「雑所得」に該当します。
「雑所得」では青色申告が認められず、青色申告による様々な特典が受けられないため、事業と称するに至らない規模でも「事業所得」として申告し、強引に青色申告を適用するケースが相次いでいます。
これらの所得区分に関しては、「開業届の提出」や「帳簿の作成・保存」の有無による杓子定規な考え方ではなく、あくまで個々の業務実態に基づく判断となるため、所得区分の判定については慎重に行いましょう。
税理士への依頼や会計ソフトの使用について?
個人事業主の場合、日頃の経理処理や確定申告手続きについて、「税理士への依頼」や「会計ソフトの利用」が必要かどうか判断に迷うケースも多いです。
一般的に自分自身で会計処理や申告手続きが可能な場合、税理士への依頼は必須ではありません。
ただし税理士へ依頼することで、会計業務や申告手続きを委託できるだけでなく、節税対策や事業継続のためのアドバイスを受けることも可能です。
したがって自分自身の会計や税務スキル、専門的なサポートに対するニーズを考慮し、費用対効果を踏まえた上で、税理士へ依頼すべきかどうか判断しましょう。
また会計ソフトについては、青色申告を行う場合には基本的には必要不可欠です。
特に青色申告特別控除額として65万円の控除を受けるためには、複式簿記による記帳が必要であり、これを手作業で行うことは容易ではありません。
そのため青色申告を行う場合には、会計ソフトを導入することで日頃の記帳作業を効率化し、確定申告手続きまでスムーズに行う方法が一般的です。
個人事業主が納める必要のある税金
個人事業主として事業を営む場合には、以下のような税金を負担しなければなりません。
- 所得税(復興特別所得税)
- 住民税
- 消費税
- 個人事業税
確定申告によって計算した所得税を納税するだけでなく、自治体に対しては住民税の納付も必要となります。また事業内容によっては、前年の課税所得に対し、税率3~5%の個人事業税が課されるためご注意ください。
また税金ではありませんが、多くの個人事業主が負担する国民健康保険料についても、基本的には前年所得に基づいて計算されます。
したがって所得が増加した場合には、それに伴って様々な負担が増えることが予測されるため、あらかじめ支出額のシミュレーションを行いましょう。
なお消費税については、原則として2年前の売上が1,000万円を超える場合に「課税事業者」となり、消費税の納税義務が発生します。
ただしインボイス制度開始後は、「免税事業者」を継続することで売上の減少につながるリスクもあるため、売上が1,000万円以下の個人事業主でも、自ら「課税事業者」を選択するケースが増加すると考えられます。
「課税事業者」を選択する場合には、所得税や住民税に加え、消費税の納税も必要となるため、メリットやデメリットを踏まえた上で、インボイス制度への対応策を検討しましょう。
(まとめ)個人事業主は確定申告のやり方を把握しておこう
個人事業主として事業経営を行うためには、所得計算や確定申告手続きに関する正しい理解が欠かせません。
これらについて誤った認識をしてしまうと、場合によっては申告漏れや税額計算の誤りが発生し、税負担が増加してしまうケースもあります。
また2023年10月から始まるインボイス制度によって、経理処理や申告書作成がさらに煩雑になることが懸念されます。
したがって今のうちから会計や税務に対する知識を深め、正確な申告手続きが行えるように準備を進めましょう。
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文・服部 大
服部大税理士事務所/合同会社ゆとりびと 代表社員。税理士、中小企業診断士。2020年2月、30歳の時に名古屋市内にて税理士事務所を開業。平均年齢が60歳を超える税理士業界の若手税理士として、税務顧問だけでなく、スポット税務相談やクラウド会計導入支援など、経営者を幅広く支援できるように奮闘中。執筆や監修業務も力を入れており、「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。