理想的なテレワーク環境整備ガイド。在宅勤務を快適にするコツやアイテムを紹介
「テレワークが導入されて在宅勤務の選択肢が増えたことは良かったけれど、正直我が家はテレワークに適した環境ではないと思う……」とお悩みの方が少なくありません。業務効率を上げ、仕事満足度を高める理想的なテレワーク環境を整備するために知っておきたいポイントやおすすめアイテムを紹介します。
テレワークの環境整備が重要な理由
オフィスから離れた場所で働く「テレワーク」について、最も多くの方がイメージするのが従業員の自宅を利用してするテレワーク、いわゆる「在宅勤務」ではないでしょうか。
通勤時間が不要になる、子育てや介護と両立しながら仕事に取り組める、外部からかかってくる電話応対などに作業を中断させられることなく業務に集中できるなど、テレワークを導入することで従業員に多くのメリットがあります。
一方、テレワークをする「場所」の環境整備をおろそかにしてしまうと、それらのメリットを活かすことができず、むしろテレワークを導入したことでさまざまな「悩み」が生じてしまうことも珍しくありません。
- 業務を円滑に進めることができる
- 生産性を高められる
- 従業員同士のコミュニケーションが適度に行われる
テレワークをこのような結果に導くためには、導入時の環境整備が非常に重要です。
テレワークで感じる悩み
テレワークの環境整備が不十分のままテレワークを推進してしまった場合、テレワークを実践する従業員にどのような悩みが生じるのかを解説します。
仕事のオンオフが切り替えにくい
自宅でテレワークを中心として業務にあたる場合、仕事のオンオフの切り替えのきっかけが掴みにくいことがあります。業務中にも関わらずだらだらと過ごしてしまうパターンや、切りの良いところまでやろうと時間外業務を続けてしまうパターンもあるでしょう。
家族が話しかけてくる・集中できない
小さなお子さんがいて話しかけてくる、ペットを飼っている、テレワーク中の他の家族の話し声がするなど、業務の手を止めざるを得ない状況が続くと業務に支障が出るかもしれません。
息抜きしにくい
オフィスの中であればトイレに行く、自動販売機にお茶を購入しに行くなど、自席を離れて歩いたり同僚と会話をしたりといった「少しの息抜き」を自然に行える環境がありますが、自室の場合は意識的に切り替える必要があります。
長時間のデスクワークによる肩こりや腰痛
デスクワークが中心となるテレワーク。通勤時に自然に歩くこともなくなるため、運動不足になり肩こりや腰痛など体に痛みが発生する人も少なくありません。
コミュニケーションが取りにくい・孤独を感じる
オフィスであれば周囲の様子を見て話しかける、昼食などに誘い合うなどコミュニケーションを取るきっかけがありますが、テレワークの場合は意識しないとそのきっかけがありません。
セキュリティへの不安
顧客の個人情報を取り扱うなど、機密性の高い業務にあたる場合、自宅の通信環境や書類の廃棄、家族への情報漏洩など、さまざまなセキュリティ上の不安が生じます。
テレワークに最適な環境・必要なものとは?
テレワークで対処すべき悩みに対応して、どのような環境を構築すべきか紹介します。
仕事に集中できる環境
ダイニングテーブルの一角など、他の家族との共有スペースでは仕事に集中することが難しいでしょう。音や視線を遮ることができる個室を用意するのがベストですが、難しい場合、ベッドルームなど一人になれる空間にデスクを用意する、書棚などで仕切りを作って視界を遮るなどの工夫が必要です。また、快適な室温も集中力をアップするポイントになります。
長時間の作業でも疲れにくいワークスペース
場合によっては数時間座ったまま作業をすることもあるテレワーク。床の上に横座りしたり、高さの合っていない椅子を使ったりすると、体に負担がかかります。また、作業に適度な明るさを保てていないと、眼精疲労につながります。
仕事に必要な設備や機器がそろっている
「時々プリンターが必要になるけれど、コンビニでネットプリントをしている。先日うっかりプリントした書類を一部忘れてきてしまって冷や汗をかいた」このようなリスクを回避するためにも、仕事に必要となる最低限の設備や機器は会社に用意してもらうのが良いでしょう。
安定したネットワーク環境
テレワークで最も重要な作業環境は高速で安定したネットワークです。家にインターネット環境があることはある程度一般的になってはいますが、回線速度や安定度は契約回線によってさまざまです。「一人暮らしをしていて家で動画を見ることもないので、ポケットWi-Fiを置いているだけ」というケースもあるでしょう。業務に必要な要件をクリアしているか確認する必要があります。
十分なセキュリティ対策
自宅で業務用のPCを使用する場合、持ち出すことによるリスクが高まります。また、自宅での管理方法や外部からのクラウド使用の可否、データ保存デバイスのアクセス制限など、オフィスでは「曖昧」になっていたデータ管理についての責任感が大きく問われるため、本人認証の仕組みやウィルス対策ソフトの導入・更新だけでなく、会社の在宅勤務のルールを十分に確認して業務を行いましょう。
理想的なテレワーク環境を作る5つのポイント
理想的なテレワーク環境を作るために、具体的にどのようなことをチェックする必要があるか、そのヒントとなるのが厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」 です。
安全で衛生的な労働環境を保つために、厚生労働省が事務所の衛生基準を定めた「事務所衛生基準規則」に準拠し、テレワーク中の事故や怪我につながる環境を防ぐためのポイントがわかりやすくまとまっています。
事務所衛生基準規則がテレワークを行う従業員の自宅にそのまま適用されるわけではありませんが、安全な作業環境の目安として参考にしてください。
ポイント1.作業する部屋の環境整備
リモートワークをする環境として望ましいのは独立した作業部屋の確保です。作業部屋に必要な5つの整備ポイントについて確認していきましょう。
部屋の広さ
作業空間の確保の目安として「作業中に手足を伸ばせる」「体操やストレッチ、移動に支障のない空間がある」ことを確認します。例えばロフトなど立ち上がれない場所、物置のような閉所空間、本や書類が積まれていて囲まれているなどは不適切です。
整理整頓
つまずく可能性があるコードなどの配線類、床に置かれた書類や本、地震の際倒れかかってきそうな棚などは、作業中に転倒する、ぶつけて怪我をするリスクが高くなります。整理整頓も業務の範囲です。
部屋の明るさ
書類を読むのに十分な明るさであること、直射日光や照明が直接目に入らないようになっていることが大切です。明かり取りの窓に光の量を調整できるカーテンをつける、部屋の明かりだけで十分ではない場合はデスクライトをつけるなど、時間帯や天気によって対応できるように準備します。なお、机の上の照度は300ルクス以上が目安です。
空気の入れ替え
空気の入れ替えが行われない空間で作業を続けていると、一酸化炭素・二酸化炭素の濃度が上がり、頭痛やめまい、吐き気などを起こす場合があります。特に、ガスや石油を使った暖房器具を使用する際は注意が必要です。定期的に空気の入れ替えをしましょう。
室温・湿度
「事務所衛生基準規則」では、オフィスの室温・湿度に具体的な目安を設けています。
室温:17度以上28度以下
湿度:40%以上70%以下
室内に室温湿度計を設置し、チェックしてみましょう。
ポイント2.自宅に仕事部屋がない場合のスペース確保
独立した作業部屋を用意できない場合には、まず上記で紹介した環境の条件をクリアできることを優先して場所を確保しましょう。「独立した空間」であることよりも、上記の環境整備のポイントの方が、優先度は高いと考えてください。家族との共有スペースを使用する場合、カメラの向きや音声通話時のイヤホンマイクの使用などで対応します。
ポイント3.身体に負担の少ないデスク・椅子選び、調整のコツ
デスクと椅子はPC作業に適したものを用意しましょう。オフィス用家具の中から選定するのもおすすめです。
- デスクと椅子の高さが自分の体格に合っている(調節できる)
- デスクの上にパソコンや書類を拡げられる十分な広さがある
- 安定した姿勢で座れて立ち上がりやすい椅子
最低限、上記3点をクリアしましょう。自宅にあるデスクや椅子の高さが身体に合っていない場合は、昇降式デスク、クッション、フットレストなどのアイテムを活用すると良いでしょう。
また、各種配線をスッキリと収納するパソコンデスク、腰のサポート力が強化されたランバーサポートチェアなど便利な家具の選択肢も増えています。
ポイント4.仕事に必要なPC環境・機器
リモートワークの必須アイテムであるPC環境と関連機器について必要なアイテムの選び方について解説します。
パソコン
厚生労働省のガイドラインでは、以下の2点をパソコン選びのポイントとして推奨しています。
- 輝度、コントラストが調整できる
- キーボードとディスプレイは分離して位置を調整できる
持ち運びを前提としない場合、デスクトップパソコンが望ましいということになります。
キーボード・マウス
キーボードやマウスも本人が操作しやすいものを選びましょう。手の大きさやよく使う操作ボタンが使いやすいものなど、多種多様な選択肢があります。
webカメラ
web会議システムの利用などに必要なwebカメラは、PC内臓でも外付けでも大きな問題はありません。なお、 テレワーク時のカメラ起動中は住居内の様子が映ってしまう恐れがあるため、プライバシーを守りたい方は注意が必要です。。
マイク・イヤホン・ヘッドセット
web会議での商談や社内会議の音声が同居家族に聞こえないよう、イヤホンやヘッドセットで対策するのが有効です。常時装着していると耳に影響が生じる場合があります。必要な時だけ使用しましょう。
ポイント5.あると便利なテレワークグッズ
最低限必要な機器以外にも、快適にテレワークができるアイテムがあります。業務内容や頻度に合わせて導入・選択できるよう会社で支援することで採用時のPRにもつながります。
今回の記事では、特に人気のある3つのグッズを紹介します。その他にもテレワークが快適になる多くの便利グッズを紹介するこちらの記事 もぜひ参考にしてください。
昇降式デスク
「座り仕事」の大敵である腰痛を防止するための解決方法の一つに、昇降式デスクがあります。立ったまま作業をすることで運動不足の解消と腰への負荷を軽くするというもので、必要に応じて自分に合った高さに調整できます。眠気防止にも活躍するアイテムです。
ディスプレイ(サブモニター)
PC作業の効率化の役に立つのが大きなディスプレイです。サブモニターとつなげればノートPCのディスプレイの小ささをカバーできます。
骨盤サポートクッション
サポート機能の高い椅子は高額で、なかなか気軽に導入することは難しいかもしれません。そんな時は骨盤サポートクッションがおすすめです。正しい姿勢をサポートして、疲れにくく腰が痛みにくい姿勢を保つ効果があります。
テレワークに最適なネット環境
自宅でのテレワークではどのようなネット回線と契約するか、悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか。よく利用される光回線、モバイルWi-Fi、テザリングそれぞれのメリット・デメリットについて簡単に解説します。
●光回線
メリット:通信速度が速く回線が安定していて、データ通信制限もかからない
デメリット:利用料金が比較的高い(月額4,000~6,000円)、初期に工事が必要
●モバイルWi-Fi
メリット:どこでも利用できて工事不要、利用料金が比較的安い(月額1,000~4,000円)
デメリット:光回線と比較すると通信速度が遅い、通信量上限がある
●テザリング
メリット:どこでも利用できて申込みも不要、スマホ料金に請求を一元化できる
デメリット:セキュリティリスクが最も高く速度が遅い、スマホのバッテリー消費が早い
業務でのインターネットの使い方がメール送受信程度であれば、モバイルWi-Fiやテザリングでも十分ですが、web会議やファイル送受信をする場合は光回線を利用することをおすすめします。
テレワークのセキュリティ対策
テレワーク時のセキュリティ対策は、なによりも実際にその業務を行い、環境を整えることになる従業員一人ひとりの意識づけが最も重要です。
まずは以下のような基本的な項目を徹底しましょう。
- 導入前にテレワークに関する会社のガイドラインやルールを確認する
- OSやソフトウェアを最新の状態にアップデートする
- ID・パスワードの管理を再確認する
テレワークにおすすめのソフトやアプリ
テレワークでの業務に欠かせないのが、web会議ツールやチャットツールのようなコミュニケーションツールです。
業界や取引先によって、どのコミュニケーションツールが便利なのかは異なります。また、利用する社員数や頻度によって、コストも大きく異なります。
まずはweb会議ツールとチャットツール、それぞれどのツールを使うか社内で話し合ってみましょう。また、安全に社内でデータを共有するクラウドツールも必須です。
コワーキングスペースの活用
ここまで、最も多くのテレワークスポットである「自宅」の環境を充実させる方法について解説してきました。
しかし、自宅が狭くてそもそもワークスペースが確保できない、自宅だと業務に集中できない、デザインなど外部からの刺激が必要な業務であるなど、自宅でのテレワークが向いていないケースも少なくありません。
そのような方におすすめなのが、コワーキングスペースの活用です。
コワーキングスペースとは、他の企業やワーカーとスペースと快適なオフィス空間を共有しそれぞれの業務にあたる、いわば「個人単位で契約できるオフィススペース」です。デスクや椅子はもちろん、ネット環境やコピーなどオフィス設備、web会議ブースや休憩スペースまで用意されているため、スムーズに業務にあたることができます。
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(まとめ)仕事の生産性が上がるテレワーク環境を整えましょう
自宅でテレワークを行うことは、通勤のストレスからの解放や、集中して業務に取り組めるなどメリットがあります。しかし、生産性を上げるためには仕事をする環境の整備が必要です。部屋やデスクの準備だけではなく、テレワークでは必ず必要になるネット環境も業務に対応できるものを用意しなくてはなりません。自宅でのテレワークが難しい場合はコワーキングスペースを利用するなど、業務に支障が出ない環境を自ら工夫することで、効率的にテレワークができるでしょう。