中小企業がインターンシップを活用するメリットは? 実施方法や注意点を解説
海外で始まり日本では2000年頃から導入が開始されたインターンシップ制度。今や、学生たちにとっては就職への大きなステップの一つになっています。2018年の新卒者を対象にした調査では、77.9%が「インターンシップに参加したことがある」と回答。企業においてもその注目度は年々高まりを見せ、これまでインターンシップを実施したことない中小企業も次々と導入を進めています。
しかし、そこには当然メリットや注意点もあります。今回は、中小企業におけるインターンシップの実施方法や注意点を解説します。
そもそもインターンシップとは?
インターンシップとは、企業が学生に対して、就業体験の機会を提供する制度のこと。給与が発生する場合があるためアルバイトと混同されがちですが、「労働の対価を得ることを目的にしていない」という点で大きく異なります。実務経験を通して、学生が仕事内容や自分の適性を理解するのが主たる目的です。
インターンシップが学生の就職活動にとって有意義であることは明らかですが、実は企業にとっても大きなメリットがあります。
日本経済団体連合会(経団連)の定めた最新の就活ルールでは、新卒採用の広報解禁日は3月1日、選考解禁日は6月1日。ですが、企業からすれば少しでも早く優秀な人材確保に動き出したいのが本音でしょう。インターンシップは解禁日より前に学生と接する機会が持てるため、採用活動を有利に運ぶために導入する企業が増えているのが実態なのです。
では企業がインターンシップを活用するメリットを、詳しくみていきましょう。
中小企業がインターンシップを導入する4つのメリット
企業にとってのメリットは、大きく分けて4つ。① 優秀な学生と早い段階から出会える。② 自社企業を正しく理解してもらうきっかけになる。③入社後のミスマッチを防ぐことにもつながる。④産業界のニーズが大学教育に反映されることが期待できる、です。
① 優秀な人材と早期に出会う
少子化によって、企業は今後も若手人材の獲得がますます難しくなり、これからも優秀な人材の獲得競争が加速するでしょう。だからこそ、新卒採用の広報解禁日よりも早い段階で学生と接点を持つことができれば、企業にとって大きなアドバンテージに。
大企業のインターンシップに人気が集中すると思われがちですが、組織が大きい企業よりも人手が足りない中小企業で力を発揮したいと考える学生もいて、中小企業にもインターンシップは大きなチャンスです。
② 自社の認知度を高める広報活動になる
大企業ほど知名度が高くない中小企業の場合、インターンシップは学生たちに企業の魅力をアピールする好機。多くの学生に認知してもらえること自体が大きなメリットと言えるでしょう。中小企業のインターンシップは、広報活動のような役割も果たしているのです。
③ 入社後のミスマッチを防ぐ
新入社員が、入社からわずか数カ月で「やりたい仕事とは違った」と退職するケースは多々あります。新卒採用にかけた時間と経費が無駄になるのは企業にとって大きな痛手。そんな事態を防ぐには、自社の業務内容や社風について正しく理解したうえで入社してもらうのがベストです。インターンシップでは、学生が入社前に企業への理解を深められるので、ミスマッチの予防には有効です。
④ 産業界のニーズを大学教育に反映できる
インターンシップを通じて企業が大学と連携を図ることにより、産業分野の動向を踏まえたニーズを大学側に伝えることができ、それが教育に反映されることも期待できます。
インターンシップの実施方法Q&A
では実際に、どのようにしてインターンシップを導入すればいいのか、ポイントを解説します。
・どんな企業でもインターン生を募集できる?
インターンシップ制度はどの企業でも取り組むことができますが、実施に際しては最大限の準備が必要です。特に中小企業では、インターンシップを導入したいと思ってもマンパワーと時間が足りず、募集に至らないというケースも少なくありません。まずは学生の指導にあたる現場の声をよく聞き、どんな仕事をどんな役割で任せるのかを設計しましょう。インターンシップに適した受け入れ体制の整備を行うことが必要不可欠でしょう。
・実施する日数は?
インターンシップは、主に短期と長期に分けられます。
2019年卒の就職活動からインターンシップの日数規定が廃止され、企業は1日からでも実施できるようになりました。短期のインターンシップとは数日から数週間の期間に実施されるケースが多く、ほとんどの場合は大学の夏季休暇や冬季休暇のなどに合わせて開催されます。自社への理解を深めてもらう広報活動が一番の目的なので、職場や業務体験が中心。ワークショップやグループディスカッションなども行われるようです。
それに対し、数週間から数カ月、継続して実施されるのが長期インターンシップ。短期インターンシップと比べて若者の育成により重きが置かれ、社員と同じように企業の業務に関わり、課題発見や企画立案に参加することも。長いものだと半年間といった長期で実施するインターンシップもあるようです。
・募集する学生の数はどう決める?
募集の際には、何人の学生を受け入れるかも厳密に決めておくべきです。優秀な人材を確保するには、一度に多くの学生を募集したいところですが、指導にあたる社員の確保が難しい場合、無理な人数を受け入れるのは得策ではありません。
広報活動が目的の業務体験やワークショップ、グループディスカッションといった形式をとる場合は多くの学生を募集することができますが、実務経験を伴う長期インターンシップにはきめ細やかな指導が求められるため、中小企業の場合は1〜2名ほどの少人数の募集を行うことが多いようです。
・いつから募集すればいい?
募集時期について特に決まりがあるわけでなく、企業によってさまざまです。休暇に合わせた開催が多い短期インターンシップの場合は6~7月に募集し、8月に実施。または年末から1月にかけて募集し、春休みにかかる2月に開催する場合が多いようです。長期インターンシップは通年にわたって募集が行われるので、この限りではありません。
・告知や集客に効果的な方法は?
参加人数や開催時期などの詳細が決まったら、いよいよ実際に募集をかける段階です。インターンシップの募集は主に、自社のホームページか求人サイト、大学のキャリアセンターなどを通じて行います。
一番シンプルなのが、自社のホームページに募集要項を掲載するという方法。大企業であれば学生のほうから積極的にアクセスしてもらえるでしょう。しかし、中小企業の場合そうはいきません。自社サイトで募集を行う際には、学生にアクセスしてもらうため、SNSで拡散するなどの工夫が必要です。
求人サイトは、学生が気軽に利用できるため、多くの募集が集まる可能性があります。ただし、こちらは掲載料や仲介費用などが発生するので、コスト面も考慮しなければなりません。
大学のキャリアセンターを経由した募集も有効です。自社の魅力やインターンシップのメリットをダイレクトに伝えることができるうえに、大学との関係性を築ければ、その後の採用活動でも有利に働くことでしょう。
また、民間の「コーディネート団体」に掛け合うこともできます。地域の担い手となる人材の育成と、人材の受け皿となる地域企業の活性化を目的に活動している団体で、全国各地に設置されています。「インターンシップ コーディネート団体」で検索し、地元地域に協力を得られる団体があるか探してみましょう。費用が必要な場合が多いですが、専任のスタッフから丁寧なサポートを得ることができます。
インターンシップの実施で注意すべき点
インターンシップを成功させ、実際の採用につなげるには、どんなことに注意すればいいのでしょうか?
・他社の企画内容と差別化を図る
いかに優秀な学生に参加してもらえるかが重要なポイントです。そのためには、インターンシップの内容を他企業と差別化し、魅力的なプログラムを用意することが求められます。具体的には、参加する学生の成長につながるか、挑戦の場となっているか、成功体験が得られる設計になっているかなどを念頭に置きながら、学生たちが「参加したい」と思う企画づくりを心がけましょう。
・事前説明を十分に行うこと
インターンシップは雇用関係ではありませんが、学生に教えるだけの慈善事業でもありません。ギブアンドテイクの関係であることを前提に、学生には初日にインターンシップの目的や自社の事業内容、仕事上のルールを明確にしておきましょう。事前に十分な説明を行うことは信頼関係の構築にもつながります。
・社員とコミュニケーションがとれる環境づくり
実務経験を伴うインターンシップでは、主に現場の社員が学生の指導にあたることになります。限られた期間とはいえ、同じ職場で働くことになるわけですから信頼関係の構築は不可欠。学生が質問や発言をしやすくなるよう、社員とコミュニケーションがとりやすい環境整備も大切です。
人数が限られる中小企業の場合、若手社員に指導担当を任せるのも一つの手です。そうすることで若い社員の人材育成にもつながります。
・セクハラ・パワハラ防止の措置をとる
当たり前ですが、インターンシップの期間中にセクハラやパワハラが発生しないよう、注意を払うことも必要です。インターンシップに参加した学生がハラスメントの被害に遭い、SNSなどでその事実が広まれば企業の信頼は失墜。そんな事態に陥らないよう、事前にハラスメントに関する社内教育を実施し、周知徹底しておくと安心です。
まとめ
今後もインターンシップを導入する中小企業は増えていくでしょう。もしかしたら、今後はリモートインターンシップなども増えてくるかもしれませんね。いずれにしても、今回紹介した実施方法や注意点を参考に、有意義なインターンシップを実施し、実りある採用活動に結びつけましょう。
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