これだけは知っておきたい!第4次産業革命のキーワード「IoT」<前編>
現在は“第4次産業革命”の時代と言われ、「IoT(Internet of Things)」がそのカギを握ると言わています。IoTはモノのインターネットと訳され、私たちの暮らしやビジネスを大きく変えようとしています。今回は、そんなIoTの重要なポイントをまとめます。
■IoTによって実現すること
IoTとは、モノ(IT機器以外のモノ)にセンサーを組み込むことで直接インターネットにつながり、モノとモノ、あるいはモノとヒトが相互に通信できる仕組みのこと。ネットワークを経由して、モノを遠隔でモニタリングしたり、制御したりできます。また、使用状況など、モノのデータ収集が可能になります。
米国テスラモーターズの電気自動車「モデルS」は、2015年3月、ワイヤレスで通信を行ってソフトウェアのアップデートを完了させました。このアップデートにより、自動緊急ブレーキや安全な車線変更をアシストする機能が追加されました。これらはヒトを介することなく行われました。つまり、パソコンやスマートフォンのソフトのように、車も自律的にインターネットにつながって、自動的に機能をアップデートすることが可能になったのです。
■IoTがもたらす4つの衝撃
『週刊ダイヤモンド』2015年10月3日号は、IoTが巻き起こす“第4次産業革命”について「衝撃は大きく4つある」と分析しています。
(1)製造業のサービス業化
IoTでモノ(製品)の状態を把握したり、制御したりできれば、製品はサービスを提供するプラットフォームになります。
例えば、タイヤにセンサーを取り付け、空気圧や温度、走行距離などのデータをネットワーク経由で自動的に収集します。タイヤメーカーはタイヤの状態や異常を検知して、ドライバーに知らせることが可能になります。安全な走行や燃費の向上といった自動車運転にまつわるさまざまなサービスを、タイヤメーカーが提供できる可能性があります。
(2)サービス提供のボーダーレス化・リアルタイム化
あらゆるモノがインターネットにつながれば、物理的に距離が離れていても、ほぼリアルタイムでサービスを提供することが可能となります。
たとえば、部品の交換が必要になったなど、ユーザー情報をインターネット経由で即座に把握できるだけでなく、3Dプリンターがあれば、遠隔地に部品を送り届けなくても、現地で成形して部品を供給することもできるようになります。メーカーのメンテナンス体制に変革が必要となるだけでなく、物流のあり方も劇的に変わるでしょう。
(3)需要と供給のマッチング(最適化)
インターネットにつながることで、モノやヒトの稼働状況がリアルタイムで把握できるようになり、需要と供給のマッチングが容易になります。
タクシー配車サービスの米国Uber(ウーバー)や、空き部屋を貸し出す米国Airbnb(エアビーアンドビー)などが、IoTを活用したビジネスの典型的な事例であり、こうしたサービスの提供は今後ますます広がりを見せていくでしょう。
(4)大量生産からカスタマイズ生産へ
消費者と企業の工場が常時接続され、工場内・工場間の製造工程がネットワークにつながることで、消費者は自分の好みにカスタマイズした一品モノの製品を、より安価に、よりスピーディに手に入れることができるようになります。
つまり、生産数が少ないために販売価格が高価になっていた製品が、安価で手に入るようになるのです。
IoTでインターネットにつながるデバイスの数が、2015年時点で約50億個だったものが、5年後の2020年には5倍の約250億個に増えると予想されています。今後ますますIoTが普及していけば、数多くのビジネスがそのモデル変更を迫られるでしょう。
製品を運ぶ必要がなくなれば、運送業にも必ず影響が出ることからもわかるように、たとえ現在自分のいる業界が製造業やIT業界でないとしても、いくつかの業界の変化が自分の業界にどのような変化をもたらすか、その可能性を十分に考えておくべきでしょう。
後編では更に、IoTによってもたらされる製造業の大きな変革を、具体例とともに考えていきます。
※参照
『週刊ダイヤモンド』2015年10月3日号