強い女性を題材とするテレビドラマが流行するときは、景気が悪い!? ヒットドラマから見える、社会の景況感とは?
昔から、景気や株価の動向について様々なジンクスが語られてきました。ジンクスは、理屈の通っているものもあれば、ただのこじつけとしか思えないようなものもあります。
10年程前、TBSテレビの生活情報バラエティ番組『がっちりマンデー!!』が「経済とジンクス」を取り上げ、「セクシーCMが増えると、景気は上がる」、「ピュア系アイドルが人気の時は、景気が良くない」などの経済にまつわるジンクスを紹介しました。
株価に関しては、ヨミの裏付けをほしがる心理から、世の中の様々な事象と景気を結びつけ、ジンクスを生んでいるのかもしれません。
■テレビドラマの視聴率と景気は関係している?!
「経済とジンクス」という分野があるとすれば、その分野の研究の第一人者は、『ジンクスで読む日本経済』(1998年、東洋経済新報社)の著者である宅森昭吉氏(三井住友アセットマネジメント理事・チーフエコノミスト)だと言えるでしょう。
宅森氏によると、「強い女性を題材とするテレビドラマが流行する時期は、景気が良くない」という傾向が多く見られるそうです。
2013年に大ヒットしたテレビドラマと言えば『半沢直樹』(平均視聴率28.74%)。その陰で、同じ時期に放送されていた『ショムニ2013』は、平均視聴率11.14%と低迷してしまいました。
これが何を示唆しているのか。
2013年と言えば、その前年の暮れに発足した第2次安倍政権が打ち出した「アベノミクス」によって、景気が上向いた年でした。その中で、現場の責任者クラスにいるバブル世代が「もう一度頑張れる」というメンタリティーを抱いたことが、『半沢直樹』のヒットの背景にあるのです。
一方の『ショムニ2013』は、1998年にヒットした『ショムニ』(平均視聴率21.8%)の続編であり、視聴率に期待を集めていました。しかし、強い女性を題材とするドラマは、配偶者の給料が上がらず一層の倹約に勤めたり、収入を増やそうと働き始める妻側の心理を反映したりすることによりヒットすることが多く、2013年のように景気が上向く中では女性の共感を得にくく、それが視聴率にも影響したと考えられます。
他にも、ITバブルが崩壊した2001年には『ちゅらさん』(平均視聴率22.2%)、リーマンショックの2008年には『篤姫』(平均視聴率24.5%)がヒットしており、宅森氏の見立てどおりの結果となりました。
■景気の落ち込みで、女性の活躍するドラマが人気に
2014年4~6月期は、『半沢直樹』の原作者である池井戸潤氏の作品が2本、テレビドラマ化されました。1本は男性が主人公の『ルーズヴェルト・ゲーム』、もう1本は女性が主人公の『花咲舞が黙ってない』です。
この時期、消費税増税が実施され、景気は大きく落ち込んでいました。ドラマの視聴率は、『ルーズヴェルト・ゲーム』が平均視聴率14.51%、『花咲舞が黙ってない』が平均視聴率16.02%で女性主人公のドラマに軍配が上がり、ジンクスどおりの結果となりました。
また、4月~9月期のNHK朝の連続テレビ小説『花子とアン』(平均視聴率22.6%)をきっかけに、大正・昭和時代の歌人、柳原白蓮が注目されました。柳原白蓮は、夫がいながら年下の男性と駆け落ちをした「白蓮事件」で知られています。その自由で力強い生き方が現代の女性の支持を集めたのでしょう。ここにも、ジンクスの片鱗がうかがえると言えます。
■景気の回復へ向かう2014年
GDP成長率を見ると、第3四半期の▲1.9%(実質、年率換算。以下、同)から第4四半期の1.5%へと上昇し、景気は上向き始めます。
2014年10~12月期のテレビドラマは、どうだったでしょう。女性弁護士を主人公にした『女はそれを許さない』が平均視聴率6.14%、女性同士の闘いを主人公が勝ち抜いていくストーリーの『ファーストクラス』が平均視聴率6.65%と低迷しました。人気を集めたのは、平均視聴率16.01%のこじらせ女子の恋愛ドラマである『きょうは会社休みます。』。
宅森氏の見解では、これは景気回復の現れと解釈することができます。
2015年、NHK大河ドラマ『花燃ゆ』の低視聴率が話題になっています。これも足元の景気が良いことを示しているのかもしれません。7月~9月期は、2014年に放送された『花咲舞が黙ってない』の続編を放送があります。ジンクスどおりであれば、女性が活躍する2015年のテレビドラマは、低視聴率になるはずです。
今後、テレビドラマの視聴率を見るときは、その時々の景気にも注目してはいかがでしょうか。
※参照元
TBSテレビ『がっちりマンデー!!』
https://www.tbs.co.jp/gacchiri/archives/20061001/1.html