公式HP サーブコープブログ知識・ノウハウ都市型災害のリスク!防災アドバイザーに聞いた、職場での防災対策

都市型災害のリスク!防災アドバイザーに聞いた、職場での防災対策

    台風や豪雨、大地震・・・今年だけでも自然災害が相次ぎ、西日本や北海道で甚大な被害をもたらしました。首都直下地震や南海トラフ巨大地震は、いつ起きても不思議ではない状況だといわれています。都市部で働くビジネスパーソンが心がけておきたい防災対策とは?ジョージ研究所の防災アドバイザー、小野修平さんにお話をうかがいました。

    むやみに帰宅するのはNG?東京都が制定した「帰宅困難者対策条例」

    — 職場で大地震が発生した場合、どんなリスクが想定されますか。

    都市部で大地震が発生した場合、「帰宅困難者」の問題が大きくなります。都内で震度5弱~5強程度の揺れだった東日本大震災では、首都圏の鉄道の多くは24時間以内に復旧しました。しかし、首都直下地震は震度6弱~7クラスの揺れが想定されており、更なる交通網の混乱が想定されます。

    — 職場で数日を過ごすことも覚悟の上で、備えた方がいいということでしょうか。

    頻発する余震や火災、家屋やブロック塀の倒壊、窓ガラスの落下など、当分の間は危険に囲まれているといっていいでしょう。また、災害時に歩いて帰る人が集中すると、人口密度は1㎡に6人に。例えるなら、公衆電話ボックスに6人が入るような状況で歩かなければいけません。人の渋滞が発生すると、消防や警察などの救助隊、物資を運ぶ車両の到着が遅れてしまいます。

    今、東京都では「帰宅困難者対策条例」を制定し、むやみに帰宅しないというルールを周知しているところです。職場で数日を過ごすことになる可能性もあると考えておいてください。

    離れ離れになった家族が心配。事前に話し合っておくべきことは?

    — 職場で被災した場合、高い確率で家族と離れ離れになりますが、日頃からどんな対策を心得ておくべきでしょうか。

    • すぐに帰宅できない場合の対策を話し合う

    子どもを預けている場合、引き取りに行かなければならないでしょうし、介護が必要な家族がいれば、早く帰宅しなければならないと思います。バラバラになることを想定し、すぐに帰らないといけないのか少し余裕があるのか、各家庭で話し合うとともに、対応策を相談しましょう。

    • SNSなど電話以外の連絡手段を共有する

    バラバラな場所で被災した場合、連絡方法と待ち合わせ場所を話し合っておくことも大切です。明らかに大きな地震だった場合、電話が通じにくくなることがあります。メール、SNS、災害用伝言ダイヤル、災害用伝言版など、電話以外で連絡を取ることができる手段を確認し、使えるようにしておくことが大切です。


    — 連絡がつかなかった時のために、確認しておきたいことは?

    • 避難先を第3候補まで決めておく

    外出先で被災した場合、どのように行動するのかを家族同士で共有しておくといいでしょう。子どもや親など、大切な人がどのような行動を取っているのかを想像できれば、安心感にもつながります。
    また都市部には、すべての方を収容できるだけの避難所がありません。自宅で生活を続けられるよう「衣・食・住」の備えをしてください。自宅にとどまることが困難な場合もあるので、第3候補くらいまでは、避難先を決めておきましょう。

    お金をかけない、無理をしない。今すぐ揃えたい防災グッズ

    — 職場で準備しておくといい防災グッズを教えてください。

    携帯トイレ

    トイレの備えは必須です。1~3回分使える携帯トイレが販売されていますので、普段から持ち歩いている鞄に入れておくといいと思います。また、少し高額になりますが、簡易トイレを備えておくのもいいでしょう。
    トイレは被災した誰しもが、その日から直面する問題です。過去の災害では十分なトイレ環境が整備できず、トイレに行く回数を減らすために、食事や水分摂取を減らす人や、被災したストレスも相まって、あっという間に体調を崩し、亡くなってしまう方もいました。
    私はこれを、「トイレから始まる負の連鎖」と呼んでいます。水や食料なども重要ですが、まずはトイレ環境の整備をすることが、命を守る第一歩だと思います。

    新聞紙とポリ袋

    45Lのポリ袋と新聞紙を使って、トイレの代用もできます。便器にポリ袋を被せるなどして用を足し、そのままちぎった新聞紙などを入れれば処分できます。
    ポリ袋はさまざまな使い方ができます。普通にごみを入れてもいいですし、水を入れて運ぶこともできます。少し工夫をすれば合羽や防寒着に、何枚かつなげれば避難所でのパーテーションとして利用することもできます。

    予備バッテリーは常備、デスクにはスニーカーと水を

    スマートフォンや携帯電話は災害情報の入手や、連絡を取る上で必要不可欠です。停電をしていると充電ができないので、予備バッテリーなどを常に持ち歩くといいでしょう。職場に、発電機が備えられていると更に安心です。

    また、デスクの下に使い古したスニーカーを置いておくのがおすすめです。万が一、徒歩で帰らなければいけない場合、革靴やヒールだと大変です。また、500mlの水を何本か常備しておきましょう。

    職場での防災対策ポイントまとめ

    【事前に話し合っておくべきこと】

    • すぐに帰宅できない場合の対策を話し合う
    • SNSなど電話以外の連絡手段を共有する
    • 避難先を第3候補まで決めておく

    【揃えたい防災グッズ】

    • 携帯トイレ
    • 新聞紙とポリ袋
    • 予備バッテリーは常備、デスクにはスニーカーと水

    まずはイメージトレーニングを繰り返し、できることから始める

    —最後に、忙しく働くビジネスパーソンに向けて、アドバイスをお願いします。

    人間には、災害など都合の悪いことを考えないようにする「正常性バイアス」という心理作用があります。私たちの身を守るために必要な心理作用ではあるのですが、正常性バイアスがあるために、防災対策に積極的になれないともいわれています。

    「もし、今ここで大きな地震が起きたら?」という自問自答を繰り返し、イメージトレーニングを繰り返すクセをつけるといいでしょう。防災対策は無理をして、お金をかけてしまうと長続きしません。安価な方法で、できることから一つずつ、確実に積み重ねましょう。少しずつ防災対策を進めていけば、「これだけやっているから大丈夫」という自信にもなります。

    まずはイメージトレーニングを繰り返し、できることから始めることをおすすめします。


    ジョージ防災研究所代表・防災アドバイザー 小野修平さん
    2016年の熊本地震では、避難所運営支援及び、被災障害者支援を中心に、支援活動や調査活動を実施。今年7月の西日本豪雨の被災地支援として、愛媛県の南予地域における支援活動を展開中。避難所運営や地域防災、福祉施設・学校・保育園や、企業などの防災コンサルティング事業を行う。

    ジョージ研究所ホームページ https://www.j-bousailabo.jp/

     

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