バーチャルオフィスは法人登記に向いている? 銀行口座の開設や納税についても解説
起業をする時に悩ましいことの一つが、「どの住所で法人登記をするか」という点でしょう。賃貸オフィスの住所を使う、自宅の住所を利用するなど複数の選択肢がありますが、本記事ではバーチャルオフィスで法人登記する場合のメリットや注意点、銀行の法人口座を開設する際のポイントについて解説します。
バーチャルオフィスとは
バーチャルオフィスとは、物理的なオフィスを持たずに、事業に必要な住所だけをレンタルするサービスで、「住所貸し」とも呼ばれます。一般的な賃貸オフィスを契約すると膨大な初期費用やランニングコストが必要ですが、バーチャルオフィスなら基本的には住所を借りる費用だけで済むため、起業する人に特に人気を集めています。
法人登記する住所にはどんなパターンがある?
ではまず、賃貸オフィスと自宅の住所で法人登記する場合のメリットやデメリットを考えてみましょう。
賃貸オフィスを借りる
賃貸オフィスを利用して起業するメリットは、仕事専用のスペースを持つことができる点です。また、賃貸オフィスの住所で法人登記するのは何の問題もありません。ただし、賃料が高い点はデメリットでしょう。
入居時に、保証金や敷金、礼金(預かり金・デポジット)が必要になるため、初期費用が高額に。例えば、東京・丸の内エリアでオフィスを借りようとすると、坪単価が月額4万円を超えることも珍しくないため、20坪の小型オフィスの場合でも月々の賃料だけで60万円規模になってしまいます。
自宅をオフィスにする
自宅の一部を事務所にするのはどうでしょうか? 自宅であれば、新たにオフィスの賃料を支払う必要がないためコスト面では魅力的ですが、自宅の住所で法人登記すると、プライバシー保護の点で問題があります。
登記簿に記載された住所は法務局に行って開示請求したり、手数料を払って申請したりすれば、誰でも取得が可能。インターネットでも閲覧することができます。つまり、第三者に自宅の情報が開示されてしまうので注意が必要です。
賃貸オフィスを借りたり、自宅をオフィスにしたりする場合に発生するこうした課題を、バーチャルオフィスなら解決できます。次の項目ではバーチャルオフィスを利用するメリットを詳しくみていきましょう。
バーチャルオフィスの住所で登記するメリット
① プライバシーを保護できる
② 移転登記が不要
③ 初期費用を抑えられる
プライバシーを保護できる
バーチャルオフィスの住所を会社の本店や支店として登記すれば、誰でも閲覧できる登記簿に個人情報を記載する必要がないため、プライバシーの問題を気にする必要がありません。また、ネット通販など、業態によってはウェブサイト上に店舗や事業者の本店住所を開示することが法律で義務づけられている場合もあります。バーチャルオフィスの住所があれば、この点も安心です。
移転登記が不要
実働するオフィスが別にある場合でも、本店の住所をあえてバーチャルオフィスの住所で登記する方法もあります。法人は、本店所在地を登記しなければならないので、本店を移転した場合は「本店所在地の移転登記」が必要になります。本店をバーチャルオフィスにしておけば、物理的なオフィスの移転があってもいちいち移転登記をする必要がなく、登記費用の負担や手続きの手間を減らすことができます。
初期費用を抑えられる
ここまで登記する際のメリットをお伝えしましたが、バーチャルオフィスで事業を始める最大のポイントは、初期費用を抑えられる点でしょう。前述したように、ビジネスの中心地である東京・丸の内でオフィスを賃貸すると、月60万円ほどの賃料が必要になるだけでなく、保証金や敷金、礼金を含めると初期費用は膨大に。バーチャルオフィスなら都心一等地の住所でも月額3万円を下回る費用で利用することが可能です。
バーチャルオフィスで法人登記する場合の注意点
バーチャルオフィスで登記するメリットはいろいろありますが、利用する場合の注意点もあるのでご紹介します。
バーチャルオフィスで法人登記できない業種がある?
一般的な業種の場合、バーチャルオフィスを会社の住所として登記できますが、バーチャルオフィスでは開業できない業種もあるので注意してください。例えば税理士などの士業や人材派遣業、建設業や不動産業などは、許認可や登録の住所に実体のあるオフィスが必要なため、「住所貸し」のみのバーチャルオフィスでは開業することができません。
ただ士業事務所の場合は、会議室などが利用できるバーチャルオフィスなら開業できるケースもあるので、事前確認が必要です。
社会保険に加入する場合は、書類保管サービスを活用
起業すると、たとえ社員が1人であっても健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の社会保険加入が義務づけられています。社会保険に加入する場合、事務所に帳簿や賃金台帳を備えておく義務がある点に注意してください。物理的なスペースのないバーチャルオフィスを利用する場合、この点が問題になる可能性があります。その場合は利用するバーチャルオフィスが、書類保管サービスを提供しているか確認しておきましょう。
犯罪収益移転防止法により求められる本人確認
「犯罪収益移転防止法」をご存知でしょうか。これはマネーロンダリングなど、犯罪による収益が組織的な犯罪を増やすことを防ぐために改正された法律です。以前は金融機関にのみ求められていた本人確認や記録の作成と保存義務が、法改正を受けて、バーチャルオフィス事業者にも義務づけられるようになりました。
そのため、バーチャルオフィスを契約する際は本人確認が行われ、事業の内容などがバーチャルオフィスの利用規約に反する場合、利用を拒否される可能性があります。もちろん、通常の利用目的であれば何の問題はありません。
バーチャルオフィスで銀行の法人口座は開ける? 開けない?
法人として営業活動を行うのに「銀行口座」の開設は不可欠ですが、「オフィスの実態がないバーチャルオフィスで開設できるの?」と心配される人もいるかもしれません。この項ではバーチャルオフィスで銀行口座を開設するポイントについて解説します。
審査が厳しくなる理由を知っておきましょう
バーチャルオフィスの住所地で銀行口座を作っている法人は多く、バーチャルオフィスの口座開設を禁じる法律や条例などもありません。ただし、実際のオフィスが存在しないバーチャルオフィスの場合、「会社の実体がない」点は懸念の対象になります。事実、架空の法人名義口座がマネーロンダリングや振り込め詐欺などの犯罪に利用されるケースが起こっているからです。
こうしたリスクを避けるため、「バーチャルオフィスでの口座開設は認めない」ことを基本姿勢にしている金融機関はあります。そうした点を念頭に置き、審査が通りやすくなる工夫を検討してみましょう。
バーチャルオフィスで銀行口座を開設するための工夫
バーチャルオフィスの住所で法人口座の開設を希望する場合は、信頼性を高めるための工夫が必要です。次のような対応を検討してみましょう。
・事業実績を積む
銀行側でバーチャルオフィスによる口座開設を警戒されるのは、前述した通り、「実体のない会社ではないか?」と思われるからです。そこで、しっかりと事業実績を積んでからであれば、口座を開設できる可能性も高くなります。実態のある事業経営を行い、財務や税務などに関する資料をきっちり添付すれば、たとえオフィスの住所地がバーチャルオフィスであっても口座開設に応じてくれる金融機関の数は多くなるでしょう。
・いくつもの金融機関に申し込む
複数の金融機関に申し込みを行う方法もあります。金融機関には、以下のような種類があります。
- メガバンク
- 地方銀行
- ネット銀行
- 信用金庫
- ゆうちょ銀行
一般に「メガバンクよりネット銀行の方が簡単では?」と思われるかもしれませんが、バーチャルオフィスの場合はそうとも限りません。「ネット銀行は全部落とされたけれど、ゆうちょ銀行なら開設できた」というケースもあります。
審査基準は金融機関ごとに異なります。審査が通らなくてもめげずに、多くの金融機関で口座開設にチャレンジしてみましょう。また、個人としての取引実績がある金融機関なら、新規取引よりも審査に通りやすい可能性があります。優先的に相談してみるといいでしょう。
バーチャルオフィスで法人登記した場合の納税はどうなる?
バーチャルオフィスの住所で登記したら、税金はどこに納めるのが正しいのでしょうか。住民税や確定申告について解説します。
住民税の納税地はどこ?
法人住民税については、本店や支店などの事業所ごとに、事業所のある自治体に支払います。バーチャルオフィスを利用しながら、別の場所に常駐して業務を行う場合、複数の市区町村で法人住民税の手続きが必要となる可能性もありますので、取り扱いについては最寄りの市区町村の役所などに相談してください。個人事業の場合は、事業主の居住地の役所で住民税を支払います。
確定申告書の提出先は?
バーチャルオフィスの住所を本店として法人登記をした場合、基本的にはその住所を納税地として届け出ますが、主に稼働している他の事業所があれば、その住所を納税地とすることも可能です。バーチャルオフィスの住所を納税地として届け出た場合は、その住所を所轄する税務署が法人税の確定申告・納付などの手続きの窓口となります。
バーチャルオフィスの利用料は確定申告できる?
バーチャルオフィスの利用料は、個人事業の場合は「必要経費」、法人の場合は「損金」として税金を計算する際に差し引くことができます。節税効果を期待できるので、利用料を支払った際の領収書や口座引き落としの明細などは保管しておきましょう。
サーブコープのバーチャルオフィスについて
一等地の住所で会社のイメージアップができる
サーブコープが運営するバーチャルオフィスは、国内27拠点・世界160以上ある一等地の住所から選ぶことができます。名刺やホームページに記載する住所は会社のイメージにも影響します。1人で起業したばかりでも、一等地の住所があれば、それだけで社会的信用につながります。
コワーキングラウンジも利用可能
サーブコープのバーチャルオフィスには、全拠点のコワーキングラウンジを1日1時間まで無料で利用できるサービスが付いてきます。国内に25カ所あるため、顧客との面会場所にあわせてお好きな拠点を利用するといった使い方も可能。また、高速で安全な無料Wi-Fiをご利用いただけます。
サーブコープ独自の「Onefone」サービス
サーブコープが独自に開発したアプリ「Onefone」も大変便利です。Onefoneをダウンロードするだけで、外出先であってもスマートフォンから固定電話番号を使って発着信が可能。格安な通話料でご利用いただけます。
バイリンガル秘書サービス
サーブコープの強みであるバイリンガル秘書サービスもご利用いただけます。サーブコープの秘書は全員ハイレベルなトレーニングを受けているため、電話対応やお客さま対応を安心してお任せください。また、コピーや資料作成といった一般的な事務作業のサポートはもちろん、翻訳・通訳のお手伝いなど幅広い業務をお手伝いします。
荷物受け取り・転送、来客対応まで
バーチャルオフィスの住所宛てに郵便物が届いたり、来客があったりする場合でもサーブコープなら対応も万全です。郵便物については、安全に管理し、指定された住所に転送します。またスタッフが常駐しているため、突然の来客があったとしても問題ありません。
今回ご紹介したように、バーチャルオフィスにはビジネスを円滑にスタートするためのさまざまなサービスが備わっています。中でもサーブコープの場合は国内27拠点あるビジネス一等地の住所を利用でき、バイリンガル秘書サービスや「Onefone」など、独自のオプションサービスが充実。ぜひ、ビジネスの発展に合わせてお役立てください。
監修・福谷陽子
元弁護士のライター。専門的な法律知識を活かしながらビジネス法務や不動産関係、個人の法律問題などについて執筆・監修。多数のサイトに記事を提供し、幅広く活躍している。