サテライトオフィスとは? 企業の導入事例やメリット・デメリットを解説します
働き方改革の推進や人材獲得のための手段として「サテライトオフィス」に注目が集まっています。総務省「お試しサテライトオフィス」プロジェクトなど、国をあげて推進されているテレワークの導入形態の一種「サテライトオフィス」について、経営者や人事総務担当者の方向けの基礎知識をお届けします。
記事後半では、導入にあたってのメリットとデメリット、実際にサテライトオフィスを導入した企業の事例のほか、助成金や補助金制度まで解説します。サテライトオフィスの導入検討にぜひご参照ください。
サテライトオフィスとは
サテライトオフィスとは、企業や本社の主要オフィスから離れた場所に設置される、小規模なワーキングスペースのことです。拠点のオフィス周辺、または遠隔地に「衛星」のように設置することから、「サテライト(衛星)オフィス」と名付けられました。
サテライトオフィスは、一般的な支社や営業所とは異なる特徴を持っています。支社や営業所が主に事業拡大や顧客対応を目的として設置されるのに対し、サテライトオフィスは従業員の働きやすさを重視したり、本社から離れた特定の地域で事業を行ったり災害など緊急事態が発生した場合にも事業を継続するための拠点として設置されます。
サテライトオフィスの種類は? 代表的な3つのタイプ
サテライトオフィスとはどんなものかを具体的にイメージするために、代表的なパターンを3種類に分けて解説します。
1.
都市型
都市部に本社を持つ企業が、同じ都市圏内の別の場所に設置するタイプです。例えば、東京駅に本社がある場合、渋谷や新宿、台場など、同じ都市圏の別の場所にサテライトオフィスがあれば、通勤や営業にかかる移動時間の短縮が見込めます。社員が最寄りのオフィスを選択して勤務できるため、交通費や残業代などのコスト削減も期待できます。
2. 郊外型
都市部に本社を持つ企業が、都市周辺の住宅街(ベッドタウン)に設置するタイプです。郊外から通勤する社員の通勤の負担を軽くすることで、育児や介護と仕事の両立をスムーズにするほか、自由な時間を増やし、ワークライフバランスの実現を達成することを狙いとしています。
3. 地方型
都市部に本社を持つ企業が、地方に設置するタイプです。テレワークの普及に伴う働き方の多様化への対応と、地方創生への貢献を目的としています。社員に住環境のよい地方での勤務機会を提供すると同時に、地域の活性化にも寄与しているため、積極的に誘致を行う自治体も多く、国も支援しているのが特徴です。
なぜサテライトオフィスが注目されているのか?
サテライトオフィスが注目されている理由は主に二つあります。
一つ目は、政府主導の働き方改革推進や少子化に伴う労働力確保といった社会的背景です。2018年3月に総務省が「お試しサテライトオフィス 」の推進要綱を制定し、地域での新しい働き方や仕事を生み出す取り組みを推進しました。これは、多様な働き方の実現や地方創生といった社会課題への対応策として位置付けられました。
二つ目は、新型コロナウイルスの流行に伴う緊急の対応策としての側面です。感染拡大防止のため、企業は急速に在宅勤務を導入しましたが、社員間の通信環境や業務環境の差、セキュリティの問題、費用負担の不透明さなど、さまざまな課題が浮き彫りになりました。このような状況下で、社員の分散と通勤時間の短縮を実現しつつ、在宅勤務の課題を解決する方法としてサテライトオフィスが注目されるようになったと考えられます。
これらの背景により、サテライトオフィスは働き方改革の一環としてだけでなく、新たな業務課題に対する解決策としても企業の関心を集めています。
企業がサテライトオフィスを活用する6つのメリット
会社と社員双方にメリットがあるサテライトオフィスですが、デメリットとしてあげられる点もあります。
1.生産性が向上する
自然豊かな場所にサテライトオフィスを設置すれば社員のリフレッシュでき、また大都市ではない郊外に設置した場合は通勤の負担が軽減され、社員のストレス緩和につながります。ワークライフバランスが整うことで社員の生産性の向上も期待できるでしょう。業務に集中できる時間が増え、結果的に企業の収益性向上にもつながります。また、働きやすい環境を提供することで、優秀な人材の確保や、離職率抑制も期待できます。
2.育児や介護による離職を防止できる
育児や介護などのやむを得ない事情で時短や離職を選ぶ社員に対して、サテライトオフィスがあることで、長い通勤時間という問題を解決できるという提案は有効です。こうした働き方の多様化、プライベートも重視する姿勢は、離職の抑制につながります。
3.地方創生につながる
求人応募する上で、勤務地が自分の希望にそうことを重視する方は少なくありません。サテライトオフィスが地方に分散して設けられていることで、各地域での優秀な人材を発掘できる機会が増えます。また、その地域の活性化にも貢献でき、CSR※の取り組みとしてもつながります。
4.支社や支店と比べて低コストで開設できる
サテライトオフィスは、支社や支店と比べて低コストで新規開設できます。パッケージ化されたレンタルオフィスと契約を結べば、オフィス家具の購入費やリース代は不要です。また、賃貸オフィスよりも最低限必要な契約スペースが小さいため、賃料も安価です。契約期間も事業者によっては1カ月からと、短期の実験的な利用も可能です。
5.交通費や残業代を削減できる
サテライトオフィスを設置すれば、社員の自宅から遠い本社までかかっていた通勤交通費が削減できるメリットも。さらに、営業職など外勤時の移動距離を短縮することで移動に費やしていた時間が減り、残業時間と残業代の削減も見込めます。
6.BCP(事業継続計画)の対策になる
サテライトオフィスは、地震や台風などの自然災害や新型コロナウイルスなどの感染症拡大といった緊急時に、会社機能を停止させないためのBCP(事業継続計画)対策にもなります。上記であげた効率化や経費削減といった目的以外に、災害時のバックアップオフィスを想定してサテライトオフィスを導入する企業も増えています。
サテライトオフィスの5つのデメリット
1.情報漏洩のリスクが高まる
サテライトオフィスでは、情報漏洩のリスクが高まります。物理的なリスクとして、オフィススペースを他社と共有することによる画面ののぞき見や会話の盗み聞きが該当するでしょう。また、共用Wi-Fiの利用によるセキュリティ上の脆弱性が懸念されます。これらのリスクに対して、のぞき見防止フィルタの使用やセキュリティソフトの導入、VPNの利用などの対策を講じることが大切です。
2.社員間のコミュニケーション不足がおきる
拠点を分散させることは、社員が直接顔をあわせない機会が増えることにつながり、コミュニケーション不足をおこす恐れがあります。Web会議の機会を増やすほか、チャットによる連絡の頻度を上げるなど、分散化によるデメリットを補うための工夫が必要です。
3.本社以外の拠点での研修参加に制限があり、拠点間で情報格差が生じる
サテライトオフィスの社員は、本社で行われる研修や情報共有の機会に参加しにくくなる可能性があります。そのため、拠点間で情報やスキルの格差が生じる恐れがある点に注意しなければなりません。そして、これらの問題に対処するためにも、オンライン研修の導入や研修内容の録画配信など、場所に縛られない学習機会の提供を心がけましょう。
4.社員の管理や評価が難しい
物理的な距離があることで、日常の仕事ぶりを直接観察することが難しくなります。そのため、成果物や数値的な結果のみに基づく評価に偏りやすくなる点に注意が必要です。評価基準を明確化し、定期的なオンライン面談を実施するなど、公平で透明性のある評価システムの構築を意識しましょう。また、社員のストレスや孤立感にも配慮し、適切なフォローアップを行うことも大切です。
5.ランニングコストがかかる
サテライトオフィスの維持には一定の経費が必要です。そのため、これらのコストと社員の働き方改善によって得られるメリットのバランスを慎重に検討することが求められます。一例として、レンタルオフィスを活用し、最低契約期間が短いプランを試験的に導入するのもよいでしょう。定期的に契約を見直すように心がけることで、柔軟性を保ちながら効果的なサテライトオフィス運用を実現しやすくなります。
サテライトオフィスの導入事例
サテライトオフィスのメリットを活かし、実際に導入をすすめた企業の事例を都市型、郊外型、地方型それぞれ3つのパターン別にピックアップしました。いずれも、自社の社員のニーズとのマッチ度がサテライトオフィスの成功の鍵となります。
都市型の事例
【事例1:株式会社日立ソリューションズ】
株式会社日立ソリューションズは、社員の通勤時間や営業活動における移動時間の短縮を目的として、都内70か所以上のサテライトオフィスを整備。さらに、全国250か所以上にサテライトオフィスを拡大し、2022年にはほぼ全従業員が日常的にリモートワークを実施できる制度を導入しました。
この取り組みにより、社員一人ひとりが能力を発揮し活き活きと働ける環境が整備され、リモートワークと出社を柔軟に組み合わせたハイブリッドな働き方が実現しました。さらに、各種休暇制度や短時間勤務制度の導入により仕事と家庭の両立を支援し、移動時間の削減と柔軟な働き方によって業務効率化の促進にも成功しています。
【事例2:株式会社リコー】
株式会社リコーは、社員の移動時間短縮と柔軟な働き方の実現を目的として、リモートワークの標準化とサテライトオフィスの活用を推進しました。この取り組みにより、職種や仕事内容に応じて社員が自律的に働く場所を選択し、リモートワークと出社を効果的に組み合わせたハイブリッドな働き方を実現しています。
さらに、サテライトオフィスの利用対象者の制限をなくし、全グループ社員が活用できるようにすることで、より柔軟な働き方を可能にしました。また、首都圏オフィス拠点の最適化を進め、効率的な拠点運用を実現しています。
郊外型の事例
【事例3:株式会社ISパートナーズ】
株式会社ISパートナーズは、社員の通勤負担軽減とワークライフバランス向上を目的として、子育て環境が充実した千葉県流山市に郊外型サテライトオフィスを開設しました。
この取り組みにより、若い共働き世帯を積極的に誘致し、職住近接の働き方を後押しているほか、東京本社と比較してサテライトオフィスのコストを5分の1に抑え、通勤交通費も65%削減するなど、大幅な経費節減効果も得られました。
【事例4:株式会社イージフ】
株式会社イージフは、社員の通勤負担軽減と業務効率向上を目的として、自宅近くのコワーキングスペース をサテライトオフィスとして利用することを認めました。この取り組みは、特に育児中の社員からの「家では集中できないが、オフィスへの通勤時間は無駄になる」といった声に応えたものです。
サテライトオフィスを認めたことで、社員は自宅近くの快適な環境で集中して仕事ができるようになり、業務効率が向上しました。また、長時間の通勤を避けることで、ワークライフバランスの改善にも寄与。さらに、コワーキングスペースの利用料補助制度を社内規定に加えることで、社員の柔軟な働き方をサポートしています。
地方型の事例
【事例5:株式会社アイエンター】
株式会社アイエンターは、テレワークの普及に伴う働き方の多様化への対応と地方創生への貢献を目的として、北海道北見市に地方型サテライトオフィスを設置しました。この取り組みにより、職住一体型の新しい働き方を実現しています。
サテライトオフィスの設置によって通勤時間がゼロになり、社員の時間の有効活用が可能になったほか、休憩時間の充実や家族との時間の増加など、ワークライフバランスも大幅に向上しました。また、地方の良好な住環境で働くことができるようになり、従業員だけでなく帯同した家族からも高い評価を得ています。
【事例6:株式会社エムエフ】
株式会社エムエフは、優秀な人材の確保と業務効率向上を目的として、静岡県三島市に地方型サテライトオフィスを設置しました。この取り組みにより、スタッフの通勤負担が大幅に軽減され、効率的かつ快適な働き方が可能になりました。
また、東京本社と三島オフィス間の移動が容易なため、必要に応じて対面でのコミュニケーションも取れる環境を整備。三島市の補助金制度を活用することで、初期費用やランニングコストの負担も軽減しています。
サテライトオフィスの導入手順
サテライトオフィスの導入を決定後、実際にサテライトオフィスの運用を開始するまでの手順を確認しましょう。
1. 目的を決定
サテライトオフィス選定で最も重要なことはその目的です。既存社員の満足度向上、新規採用人材の発掘、事業活動の効率化、新規事業開発のためのコミュニティづくりなど、目的は明確にしましょう。その目的によって、先述したサテライトオフィスの代表的な3つのタイプのうち、どのタイプが適しているのかが変わってきます。
2. 設置場所を検討
目的が決まったら、サテライトオフィスをどの都道府県のどの町に設置するかを検討します。目的が決まっている時点で設置場所が決まっている場合もありますが、場所はサテライトオフィスの運用を左右する重要なポイントです。
3. 導入コストを検討
レンタルオフィスや地方公共団体が提供するオフィスのほかにも、全て自前で用意する小規模な賃貸オフィスや占有スペースをもたないコワーキングスペースの人数分契約など、そのスタイルによって導入コストには幅があります。必要な機能や立地などの条件をそろえて導入コストを比較する必要があります 。
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4. セキュリティ対策を確認
レンタルオフィスやコワーキングスペースを利用する場合、その運営会社によってセキュリティレベルは大きく異なります。インターネット回線のセキュリティレベルだけでなく、外部の来訪者スペースと契約者の執務スペースの動線の区分、夜間の出入口や共有スペースの監視カメラ、受付スタッフのセキュリティ研修の有無などは確認しておきましょう。
5. 管理や評価などのルール策定
サテライトオフィス導入時には、ハード面の整備だけでなく、運用面の準備やルール作りも欠かせません。特に重要なのは、勤怠管理と人事評価方法の2点です。勤怠管理は専用の利用管理ツールなどを活用して比較的簡単にルール作りができますが、人事評価方法はサテライトオフィスに上司が常駐しない場合、これまでと違った評価基準を設定しなければなりません。
サテライトオフィスの導入に活用できる助成金や補助金制度
サテライトオフィスの導入時には、国の相談窓口や助成金・補助金制度を活用しましょう。サテライトオフィスの導入に利用できる制度には以下のようなものがあります。働き方改革や地方創生に関する支援は国が今後も注力する施策です。
テレワーク・ワンストップ・サポート事業
概要:厚生労働省・総務省が共同で提供する、テレワーク導入企業向けの相談窓口
要件:テレワークを導入しようとする企業等
サポート・補助内容:
• 専門家「テレワークマネージャー」による無料相談(最大3回まで)
• 労務管理、ICT活用、就業規則の整備などに関するアドバイス
• サテライトオフィスを活用したテレワーク事例の紹介
参考:厚生労働省・総務省|テレワーク・ワンストップ・サポート事業のご案内
地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
概要:地方でのサテライトオフィス開設を支援する助成金
要件:
• 国が指定する「地域活性化を要する地域」に事業所を設置・整備
• その地域の求職者を雇用すること
サポート・補助内容:
• 設置・整備費用と労働者の増加人数に応じて助成
• 最大3回まで支給(1年ごと)
参考:厚生労働省 | 地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
人材確保等支援助成金(テレワークコース)
概要:テレワーク導入に必要な機器や環境整備の費用を補助する助成金
要件:テレワークを新規で導入する中小企業事業主
サポート補助内容:
• 対象経費の30%(上限100万円)を助成
• 評価期間後の離職率が計画前以下の場合、追加の目標達成助成あり
• 機器購入費、リモートアクセスサービス、web会議システム等のランニングコストも対象
サテライトオフィスは国内30拠点あるサーブコープで
サーブコープは国内30拠点(本記事公開時)、世界150拠点以上でレンタルオフィスを展開。どの拠点も駅から近いため、「都市型」のサテライトオフィスに最適です。例えば、いつでも好きな時に立ち寄れるオフィスが都内に複数あれば、外出の多い営業担当者には利便性が高く、時間のロスを解消できます。自然災害の交通機関麻痺やワークライフバランス向上のためにオフィスの分散化を検討している企業にも好評です。
雑務から通訳・翻訳まで依頼できるバイリンガル秘書やレセプショニストなど、サーブコープはサポートが充実。セキュリティも万全で24時間365日体制のITサポートをご利用いただけます。Wi-Fiも高速かつ安全。そのほか、エグゼクティブグレードのオフィス家具も自慢で、最高級のコーヒーや紅茶なども好きなだけ楽しんでいただけます。
また契約は1カ月からでOK。状況に応じて、柔軟にサテライトオフィスの規模を変更でき、国内にあるほかの拠点に事業を移転・拡大する場合も手間や時間がかかりません。サーブコープのレンタルオフィスがあるのは、東京・横浜・大阪・名古屋・福岡の5都市30拠点。
全てビジネス一等地にあるため、利便性は抜群です。サテライトオフィスの設置をご検討中の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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※「CSR」は、「corporate social responsibility」の頭文字をとったもので、「企業の社会的責任」と訳されます。企業は利益を追求するだけでなく、さまざまなステークホルダー(利害関係者)に対して責任を負うべき、という考え方です。環境への配慮やボランティア活動、地域貢献など、社会課題に取り組むさまざまな活動がCSR活動に含まれます。