公式HP サーブコープブログ知識・ノウハウLGBTの意味とは? 企業の採用担当者が知っておくべきこと|いまさら聞けない時事問題Vol.7

LGBTの意味とは? 企業の採用担当者が知っておくべきこと|いまさら聞けない時事問題Vol.7

    日本では敬遠されがちな時事問題ですが、社会の動向はビジネスにも影響します。忙しいビジネスパーソンのために、いまさら聞けない時事問題をわかりやすく解説するシリーズ。Vol.7は企業の採用に直結するLGBTの就職と課題について解説します。

    セクシュアルマイノリティを総称する言葉「LGBT」。日本では13人に1人がセクシュアルマイノリティという統計もあり、性的少数者のカップルをパートナーとして、事実婚状態であると認める「パートナーシップ制度」を導入する自治体も増えています。

    ビジネスにおいても、LGBTが働きやすい環境作りに取り組む「LGBTフレンドリー」な企業も年々増加の傾向に。しかし、まだまだ理解は十分に進んでいると言えず、就職活動においては面接で差別的言動を受けたり、不当な理由で不採用になったりするケースも少なくありません。

    本記事ではLGBTの基本知識を解説するとともに、企業の人事や採用担当者が備えておくべき心得を、LGBTのための求人情報サイト「JobRainbow」の星賢人代表にうかがいました。

    LGBTの意味とは?

    「LGBT」とは、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシャル(B)、トランスジェンダー(T)の頭文字をとった単語で、セクシュアルマイノリティの総称として広く使われています。

    レズビアンは女性同性愛者、ゲイは男性同性愛者、バイセクシャルは男女どちらも恋愛対象になる両性愛者のことで、「LGB」はどのような性別の人を好きなるかという、性的指向を表現しています。

    それに対し「T」のトランスジェンダーは性別越境者を意味し、身体と心の性とが一致せず、自分の身体の性に違和感を持っている人のこと。人には皆、身体的な性とは別に、自分の性をどのように認識しているのかという心の性(性自認)が存在するのです。

    LGBTに新たに加わった「Q」

    最近は、この4つにアルファベットの「Q」を加えた「LGBTQ」という言葉も登場しました。Qには、クエスチョニング(自分の性別がわからない、もしくは意図的に決めていない人)と、クィア(セクシュアルマイノリティを総称する単語)の2つの意味が含まれ、LGBT以外にも多くの性のあり方が存在すると考えられています。

    2018年に電通ダイバーシティ・ラボが実施したLGBT調査では、日本人口の8.9%がLGBTという結果が出ています。わかりやすく言い換えると、日本国民の13人に1人がLGBTだということになり、統計的には日本にいる左利きの人と同じくらいの割合に。これだけ多くのLGBTが存在すると明らかであるものの、いまだ日本社会では理解が十分ではありません。

    LGBT先進国と比較した日本の理解度は?

    世界的には日々LGBTへの理解は進んでいます。例えば海外の雇用に着目すると、LGBT先進国と言われるデンマークでは、LGBTの78%が職場での幸福度が高いと感じ、69%が職場でカミングアウト済であると答えています。

    日本では、2015年頃から急速にLGBTという言葉が浸透してきましたが、いまだ偏見などが根強いのも事実です。それはLGBTが働く職場にも、当てはまります。今年5月に厚生労働省が発表した職場におけるLGBTの実態調査では、LGBの36.5%、トランスジェンダーの54.5%が職場で困りごとを抱えていると回答。LGBT全体では9割近くが、LGBTフレンドリーな企業で働きたいと希望しています。

    13人に1人がLGBTというデータからもわかる通り、LGBTに対する理解は必須です。正しい知識を身につけておくことは、優秀な人材を確保する観点からも重要です。就職活動や採用された後の職場でLGBTがどのような課題に直面しているか、星賢人さんにお聞きしました。

    LGBTが就職活動で直面する3つの課題

    ―― LGBTが就職活動をする際に、課題や問題になることを教えてください。

    ① 面接で差別言動を受ける

    まず、LGBT全般が直面する課題として「採用面接で受ける差別的言動」があげられます。過去には面接時にレズビアンであることをカミングアウトした学生が、「そういう精神に問題ある方はちょっと…」と言われ、不採用になったケースもありました。LGBTの就職活動では、無理解による偏見に晒されるリスクが往々にしてあります。

    ② LGBT同士の情報共有が困難

    またLGBTの就活では、自分がLGBTだと公にしないことが多いため、当事者同士のコミュニティを作りづらく、孤独になりがちです。そのため、誰にも悩みを相談できず不安な気持ちになりやすい現状があります。

    ③ 就活時の服装や履歴書の性別に悩む

    トランスジェンダーの場合、履歴書の性別欄にある「男・女」どちらに丸をつけるべきかわからない問題があります。面接時に着るリクルートスーツも、男性用と女性用どちらを着るべきか、合うサイズはあるのかといった課題も避けられません。

    採用後の職場でLGBTが抱える3つの悩み

    ―― 採用された職場でLGBTが直面しやすい悩みや問題とは何でしょうか。

    ①  「アンコンシャスバイアス」なハラスメント

    LGBTが職場でもっとも直面するのが「アンコンシャスバイアス」=無意識の偏見です。差別する意識がなくても、ゲイの男性に「彼女がいるの?」と質問すること自体がハラスメントになり得ます。また、トランスジェンダーにとっては「〇〇ちゃん」「〇〇くん」と性別を特定するような呼称で呼ばれることを苦痛に感じる人もいます。

    ② アイデンティティをカミングアウトできない

    カミングアウトを受け入れてくれる職場か否かというのは、当事者には大きな課題です。2人の男性社員が仲良くする場面を見た上司が、「君たちホモか?」とからかうようなコミュニケーションがある場合、この職場ではカミングアウトはできないと感じるでしょう。自分のアイデンティティを隠して働き続けることは、精神的にとても辛いものです。

    トイレや更衣室が使えず体調不良に

    トランスジェンダーにとって、男女どちらの更衣室やトイレを利用するかというのも大きな課題です。事前にカミングアウトしている場合は、働く環境に配慮してもらうこともできますが、そうでない場合、性自認に伴ったお手洗いが使えないことなどで、トイレにいくのを我慢してしまい、膀胱炎など排泄障害になるトランスジェンダーは少なくありません。

    企業の採用担当者が知っておくべき6カ条

    こうした課題を踏まえ、企業の採用担当者はどんな準備や心構えをするべきでしょうか。星代表にお聞きました。

    ―― 13人に1人という割合を見ても、これからの企業はLGBTに対する正しい理解を身につける必要性を感じます。採用にあたる担当者は特にどんな点に留意するべきでしょうか。

    ① セクシュアリティは仕事とは無関係である

    まず、セクシュアリティは仕事の能力に関係がないという認識を持つことが大切です。そのために採用書類の性別欄を廃止するのもいい手段でしょう。もしも面接時にカミングアウトがあったとしても、LGBTであることを採否の基準にするべきではありません。偏見を持つことによって、本来採用すべき優秀な人材を逃がす危険性があり、会社にとっても大きな損失となり得ます。

    ② LGBTに対する正しい知識をインプットする

    LGBTはマイノリティであるため、1人の発言が全体の意見のように聞こえがちです。1人のLGBTから聞いた知識を持って、すべてのLGBTを理解できていると思い込む人事担当者も多いそうです。間違った知識を持ったまま採用活動をすると、面接時にアンコンシャスバイアスを伴う差別発言をしてしまう危険性も高まります。個人の意見ではなく、LGBTについてエビデンスのある知識を学び、インプットすることが大切です。

    ③ LGBTかもしれないという視点を常に持つ

    LGBTがカミングアウトしやすい環境作りをすることはとても大切です。LGBTにとっては、採用時の面接官とのやりとりや、入社後の面談や何気ない会話が、カミングアウトできるか否かの判断基準となります。

    面接官から「彼女(彼氏)いるの?」と聞かれたり、普段から異性の会話で盛り上がったりする上司がいる場合は、そもそもカミングアウトしたいとは考えないでしょう。だからこそ、採用担当者や人事担当者は目の前にいる相手が「LGBTかもしれない」という視点を常に持つことが大切です。

    ④ アウティングは絶対にNG

    自分の性についてカミングアウトを受けたとき、人事担当者がもっとも気をつけなければならないのが「アウティング」です。アウティングとは本人の了解を得ずに、性的指向や性自認を公にしてしまうこと。LGBTを理解できていない人に公になることは、本人にとって偏見や差別的発言を受けるリスクになります。また、本人が伝えたくないと思っている人にまで広まってしまう可能性もあります。カミングアウトを受けた場合は、必ず本人に「誰にどこまで話していいか」を確認するようにしましょう。

    ⑤  “言い換え”表現から意識を変えてみる

    職場でのアンコンシャスバイアスなハラスメントは、無意識であるがゆえに、すぐに改善するのは難しいでしょう。そこでおすすめしたいのが、“言い換え”表現です。例えば「彼女(彼氏)いるの?」を「パートナーいるの?」と言い換えたり、呼び名を「◯◯くん」「◯◯ちゃん」から「◯◯さん」にしたりするだけでも、配慮は可能です。このように、性別に縛られない表現を積極的に使っていけば、職場の意識改革にもつながっていくはずです。

    ⑥ LGBTフレンドリー企業を目指す

    LGBTにとっては、会社が「LGBTに取り組もう」という意識を持っていることがわかるだけでも心強く感じられます。人事担当者から、「LGBTフレンドリーになるには具体的に何をすればいいのかわからない」という質問をよく受けますが、ほんの些細なことから取り組むことができます。

    例えば、更衣室にカーテンで仕切りをつけると、トランスジェンダーだけでなく、他人に身体を見られたくない人や、仕事中に定期的な搾乳が必要なワーキングママなどにとっても使いやすくなります。このように、どんな立場の人でも働きやすい職場作りを意識することが大切です。

    まとめ

    いかがでしたか。LGBTフレンドリーな企業とは、マイノリティだけでなく、マジョリティにとっても心地よく働ける会社と言えます。LGBTが直面する課題は、受け入れる企業が少し意識を変えるだけで改善できるので、前向きに取り組みを始めてみてはいかがでしょう。優秀な人材が正しく採用され、活躍すべき人材が堂々と能力を発揮できれば、会社全体の生産性も上がっていくはずです。

    取材協力・星賢人

    株式会社 JobRainbow代表。自身もLGBT(ゲイ)の当事者として、月間47万人がアクセスするNo.1 LGBTダイバーシティ採用広報サイト「ジョブレインボー」を立ち上げる。東京大学大学院情報学環教育部修了。Forbes 30 UNDER 30 in ASIA / JAPAN 選出。孫正義育英財団1期生。板橋区男女平等参画審議会委員。『LGBTの就活・転職の不安が解消する本(2020/3,翔泳社)』を出版。

    文・安藤茉耶

    ライター、編集者。時事問題をはじめ、ライフスタイルやファッションなど幅広いテーマを扱う。

    参照:

    JobRainbow

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