いま再注目されるワーケーションとは? メリットや事例、検索アプリも紹介
アメリカで2000年代に誕生したとされる働き方のひとつ「ワーケーション」。
新型コロナウィルス感染症の影響で新しい生活様式が求められるようになった今、再注目されています。新たな働き方として政府が改めて推進し、大手ホテルもワーケーションを前提にした宿泊プランを打ち出すなど、積極的な取り組みが見られます。ですが、リモートワークと何が違うの? メリットや導入方法は? など、よくわからないという人も多いのではないでしょうか。本記事では、ワーケーションの良さや具体的な事例を解説し、ワーケーション施設の検索アプリもご紹介します。
ワーケーションとは
・意味は旅をしながら働く!?
ワーケーションとは「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語のこと。それぞれの言葉の意味が示すように、リゾート地や観光地など、普段の職場とは異なる旅先で休暇を取得しながら働く仕組みと定義づけられています。
具体的に言えば、旅先でも業務時間中は仕事をするため出勤扱いとなりますが、朝や昼休み、終業後の夜の時間などには休暇と同様、アクティビティなどを楽しむことが可能。企業が新しい働き方として導入している場合や、フリーランスなどが自らワーケーションを取り入れているケースもあります。
・コロナ禍で再注目される理由
「働き方改革」の推進で取り組みが始まったワーケーションですが、コロナ禍でのテレワーク拡大にともない、再注目されています。今年7月に行われた「観光戦略実行推進会議」では、菅義偉官房長官(当時)がワーケーションを推進する方針を示しており、今後、さらに実施企業が増えると予想されます。
・リモートワークやテレワークとの違い
リモートワークやテレワーク、ワーケーションはどれもオフィス以外の場所で働くという点で共通しています。3者の大きな違いは、“働く場所”が限定されるか否か。
リモートワークやテレワークは、自宅やカフェなど上司や会社が認める特定の場所で勤務することが求められます。それに対しワーケーションは、旅先で滞在する場所が勤務地となりますので、特に働く場所には縛られません。
ワーケーションのメリット3つ
ではワーケーションを取り入れることで、従業員や企業にはどんなメリットがあるのでしょうか。3つのポイントにまとめました。
① 忙しくても長期休暇が取得しやすい
海外のようにバカンスの習慣がない日本では、長期休暇を取ること自体が容易ではありません。週次の会議や打ち合わせなど、外せない仕事が定期的にあることが休暇取得の妨げの一つになっています。
しかし、ワーケーションを取り入れることで、旅先でもリモートで会議に出席したり、空いた時間でメールをチェックしたりするなど、遠隔での業務が可能に。長期休暇を取ることへのハードルが下がるうえ、休暇中も業務と関わり続けることで、仕事が止まってしまうという不安も軽減。そのため、気持ちの面でも休みを取りやすくなり、有給休暇の取得率アップにもつながるでしょう。
② 家族との時間が増えてリフレッシュできる
ワーケーションでは、休暇によるリフレッシュ効果も期待できます。業務以外の時間を旅先でゆっくり過ごすことで、日頃の疲れが癒えてリラックスできるでしょう。また、日本では家族と過ごす時間もないほど日々忙殺されるビジネスパーソンも少なくありません。ワーケーションで休暇を家族とともに過ごすことで、コミュニケーションの機会を増やすことも可能です。
③ 業務効率やモチベーションがアップする!?
ワーケーション中は早く業務を終わらせたいと思う人が大半です。だからこそ仕事中はかえって集中力が増し、作業効率が上がる可能性もあります。また、リゾート地など、リラックスできる環境に身を置くことは、仕事に関する新しいアイデアを生むきっかけにもなるでしょう。
仕事をする環境が変わることで、オンとオフの切り替えがしやすくなるというメリットがあります。さらにワークライフバランスが保たれることで、心身ともに健康になり、仕事へのモチベーションアップにもつながるのではないでしょうか。
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ワーケーションに取り組む7つの自治体と企業
自治体
コロナ禍で一気にその名が浸透したワーケーションですが、2019年にはすでに全国の自治体が集まり「ワーケーション自治体協議会(WAJ)」を発足、知名度向上や、地域の魅力を発信する活動を行ってきました。ワーケーションに力を入れる自治体や企業が各々どのような取り組みをしているか、事例を見ながら紹介します。
① 和歌山県
和歌山県は、全国の自治体に先駆け、2017年からワーケーションに取り組んできました。ワーケーション・フォーラムや体験会を開催するほか、現在ではコンシェルジュを設置し、受け入れ側と企業との橋渡しも行っています。また、特にネットワーク環境の整備に注力しており、観光スポットや飲食店など旅先で訪れる場所の多くに無料Wi-Fiを設置して、ワーケーションの誘致を推進しています。
② 長野県
長野県もワーケーションに積極的に取り組む自治体のひとつ。長野県は東京からのアクセスが良く、温泉やスキー、登山などのアクティビティが楽しめるなど、ワーケーションに適した条件がそろいます。その利点を生かし、県内の代表的なリゾート地である軽井沢町・茅野市・白馬村などにワーケーションを誘致する“リゾートテレワーク”を推進しています。また、商店街の空き店舗をコワーキングスペースとして活用しているのも長野県の特徴です。
③ 北海道
北海道は、一般社団法人テレワーク協会と連携してワーケーションの誘致に取り組んでいます。道内17市町との共同事業で行われるのが特徴で、「北海道型ワーケーション」と呼ばれます。主に首都圏の会社員やその家族を対象とし、観光やアクティビティを主とする「休暇・観光型」と、仕事を重視する「仕事・業務型」の2タイプのプログラムを用意。また、道内に点在するサテライトオフィスを短期間で周遊しながら滞在するという、北海道ならではのワーケーションを提供しています。
④ 沖縄
年間を通して温暖な気候の沖縄県は、仕事をしながらのんびり過ごすことができるワーケーションに適した土地といえるでしょう。沖縄県は、そんな魅力を体感してほしいと、観光を重視したワーケーションを推進。また、沖縄県にはコワーキングスペースや短期賃貸マンション、連泊プランのあるリゾートホテルなど、ワーケーションをしやすい環境が整っているのも魅力です。
企業
⑤ 三菱地所
三菱地所は、2019年5月に和歌山県南紀白浜のワーケーションオフィスを開業し、他社に先駆けてワーケーションに取り組んできました。また、今年7月には軽井沢に2拠点目を開業し、同時に開設した「三菱地所のWORK×ation(ワーケーション)ポータルサイト」も注目されています。
このサイトでは、2つの施設の情報をはじめ、ワーケーションを推進する各自治体の情報も掲載。施設の予約をすることも可能です。さらにJTBと連携を図ることで、都心では体験が難しいチームビルディングを目的とするアクティビティやCSR活動をパッケージ化したプランを組むことも可能となりました。
⑥ JTB
JTBは、企業と自治体とのマッチングを行うことで、ワーケーションの推進を図っています。具体的にはワーケーションの実施企業が抱える課題やニーズを自治体と共有し、その上で法人・個人向けのワーケーションプランの開発や販売も。例えば、神奈川県観音崎でスノーピークのキャンプギアを使ったアウトドアワーケーションや、沖縄県のカヌチャベイホテル&ヴィラズでの長期滞在型のリゾートワーケーションなどを手掛けています。
⑦ 日本航空(JAL)
JALは2017年にいち早く自社でワーケーションを導入した企業としても知られています。また、今秋からは岩手県と兵庫県、石川県、愛媛県、宮崎県の5県で、JALの社員がワーケーションを実施し、新しい働き方や休み方の効果を検証する予定。
そんなワーケーションに前向きな姿勢を示すJALは、今年7月にワーケーションの普及を促進するような旅行サイトも立ち上げています。サイトでは、ワーケーションなどに適した宿泊施設と航空券をセットにした旅行商品を掲載。長引くコロナ禍において、3密を避けつつ安全・安心な環境で滞在できる旅のプランを提案しています。
ワーケーションができる施設の検索アプリ
すでに大手のホテルでは、ワーケーションを前提とした連泊プランを打ち出しています。例えば星野リゾートが運営する各ホテルでは連泊すると割引が受けられるほか、ホテル内にテレワークボックスも登場。東京のホテルニューオータニには長期滞在者向けの30泊連泊プランなども用意されています。
ワーケーションは国内旅行の起爆剤になるとも期待されていますが、それを後押しするのがワーケーションを提供する施設が検索できるアプリ。3サービスを紹介します。
・Workations(ワーケーションズ)
いざワーケーションをしたいと思っても、宿泊施設探しに悩む人も少なくないでしょう。そこでおすすめしたいのが、ワーケーションに特化した検索サービス「Workations(ワーケーションズ)」です。このサイトの特徴は、ワーケーションができる施設のみを登録していること。現在は、約40の宿泊施設が登録され、「連泊割」や「コワーキングスペース完備」など、条件をつけて検索できるのも魅力です。
公式URL|Workations
・Ellcano (エルカノ)
また、ワーケーションのような長期滞在の場合、どうしても宿泊料が高額になってしまいます。もしも、費用面で二の足を踏んでいるなら、宿泊予約リクエストアプリ「Ellcano(エルカノ)」を試してはいかがでしょうか。
宿泊施設にとって長期滞在者は獲得したい顧客です。通常より少し宿泊料を安くしてでも泊まってほしいと考える宿泊施設も多いでしょう。そのニーズに目をつけたのがこのアプリ。宿泊者から予算などを宿泊施設に直接リクエストすることができるため、希望に近い条件での長期滞在が叶います。こちらは3泊以上の連泊で利用可能となり、同時に複数の宿泊施設にリクエストを送ることもできます。
公式URL|Ellcano
・Corritrip.jp(コリトリップドットジェイピー)
「Corritrip.jp(コリトリップドットジェイピー)」は、高速バスとワーケーションを組み合わせた独自のサービスを提供するサイトです。高速バスは、目的地にダイレクトで到着でき、自分で運転する必要もないので移動時間も有効活用できます。ワーケーションに適した移動手段といえるでしょう。
サイト内では、高速バスを利用したワーケーションに適したリゾート地を紹介。テレワークスポットやおすすめ観光地、宿泊施設など、高速バスでのワーケーションに役立つ情報を提供してくれます。
公式URL|Corritrip.jp
ワーケーションにチャレンジ中! Webディレクターの体験談
普段は東京でフリーランスのWebディレクターとして働く女性が、オーストラリアで2ヶ月のワーケーションをしていると聞き、感想を伺いました。
休暇中のオーストラリアではどのような業務を行なっていますか?
主にクライアントからのメールチェックや返信業務を行います。渡航前に業務調整を済ませているので、基本的にはプロジェクトの進行状況をチェックするだけで済むようになっています。オーストラリアの回線を使って通信しているので、回線トラブルもありません。また、帰国後の新規案件の相談には、スカイプミーティングで対応します。
ワーケーションのメリット・デメリットを教えてください。
やはりメリットは、旅を楽しみながら好きな場所で働いて収入を得られるとことです。デメリットはどんなトラブルが起こるのかわからないので、完全には旅に集中できないことです。また、関係者に迷惑がかからないよう、スケジュール管理もしっかりする必要があります。
今後もワーケーションを続けたいですか?
ぜひ続けたいと思っています。私は旅の経験から学ぶことが好きなタイプなので、その経験を次の仕事に生かすことで、良いサイクルが生まれてくると思っています。
テレワーク実施企業向けの補助金を活用
いかがでしたか。「働き方改革」で進められてきた働き方の多様化が、新型コロナウィルスの感染拡大を受けてさらに推進されています。政府も積極的にテレワークの導入を推奨。取り組みにともない、テレワーク実施企業への補助金制度も充実してきています。
例えば、新規にテレワークを導入する企業を支援する「働き方改革推進支援助成金」や、中小企業のテレワーク環境整備に必要な経費を助成する「テレワーク定着促進助成金」などが挙げられます。ワーケーションやテレワーク導入の際には、このような制度の利用も検討してはいかがでしょうか。